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ルシアンの沈黙
私の「契約婚約」という言葉に、部屋は再び静まり返った。
ルシアン公爵は、私が差し出した手を見つめたまま、動かない。
彼の後ろに控える側近が、息を呑む音が聞こえた。
「……エリアーナ嬢」
ルシアンが、低い声で言った。
「お前は、自分が何を言っているのか、わかっているのか」
「わかっております」
「俺と婚約するということは、皇太子アランを、帝国そのものを、完全に敵に回すということだ。リステン侯爵家も、お前自身も、二度と後戻りはできん」
「後戻りなど、望んでおりません。わたくしが戻りたい場所は、もうどこにもないのですから」
私は、処刑台の「始まりの景色」を思い浮かべながら、きっぱりと答えた。




