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秋音と本の虫 中編

「ふぁ〜あ、、、、。ねむい、、、」

半分閉じかかった目を擦りながらも、キキラが必死に眠気に耐えている。

「ほら、だから言ったでしょう?もう帰りま、、、。」

がさがさ、どんっ。

メイカがそう言い終わらない内に、物音がした。

「な、なんか音がしいひんかった?」

机の下でキョロキョロする秋音。

キキラも物音で目が覚めたらしく、ビクッと震え、目を瞬かせている。

「し、しましたね、、、。もう、これじゃあ帰るに帰れないじゃないですかぁ、、、」

メイカにも聞こえたようで、やる気はあるが残念そうな何とも言えない顔をしている。

ぱらぱらぱらぱら、、、、、ざくっ。

今度は、紙を捲るような音と何かを刺すような音がした。

この音を皮切りに、至る所で紙を捲る音やら小動物のように小さく軽い足音、何かが落ちる音、ざくりと刺す音、ぱたぱたと何かがはためく音などが一斉に聞こえてきた。

沢山の気配も、正確な位置は分からないが動いている。

「やっぱり、だれかいりゅ、、、、!」

キキラが期待と不安が入り交じった視線で辺りを見回す。

「、、、うん、おるな。それもぎょうさん、、、。」

秋音も手に魔力を溜め、警戒態勢をとる。

「ええ。それに、何か刺してます。、、、本を傷つけていたりして、、、?」

皆下手人を目視しようとするのだが、一向に見つからない。

「そうやったとしても、位置分からへんさかい魔法も発動出来ひん、、、。どないする?」

困ったように秋音が言った。

遂に、痺れを切らしたキキラが立ち上がろうとしたが、メイカが止めた。

「二人はここで待っていて下さい。私が煽って、姿が見えるようにしますから、そうしたら風魔法で捕縛して下さい。話を聞くのはその後です。、、、いいですね?」

それを聞いて、仕方が無いから、と納得した二人は頷いた。

「では、行って来ます!援護よろしくお願いしますね!」

「あいっ!」

「はいよ!」

メイカが机の下から飛び出すと同時に、姿を隠していた光魔法を解き、堂々と声を上げた。

「本棚に白紙の手帳を混ぜているのは貴方達か?そうであるのならば、直ちに止めて頂きたい。迷惑を被っている者がいる。止めないと言うのならば、私が相手だ!」

芝居がかった口上を述べ、腰の両側に佩いている双剣を抜く。

そして、魔力を放出して戦うと意思表明するメイカ。

だが、一向に相手は姿を見せない。

それどころか、先程までそこら中で鳴っていた音や気配の揺れが消え、大体の位置も全く分からなくなってしまった。

「、、、おーい、出てきなさい。い、一方的に嫐っちゃうぞー、、、」

勇ましさなど跡形もない、決まらない姿で呼び掛けるメイカだが、何も変わらない。

「出てきてってばー、、、。その、白い手帳を本棚に仕舞うの、止めてほしいなーってだけなんですけど、、、。」

段々尻すぼみになっていく声でもう一度呼び掛けるが、全く反応が無い。

思わず吹き出しそうになった二人が慌てて口を塞いだが、メイカがギュインッとこちらを見た。

どうやらバレていたらしい。

「、、、ちょっと、助けてくださいよー。誰も何も言ってくれないんですけどー、、、」

小声で秋音達に助けを求めるが、秋音は手だけが見えるようにし、✕を作った。

「えぇ〜、、、、。どうしよ」

メイカがそれを見て固まってしまった。

「はぁ、、、。しかたにゃいなぁ!とうっ!」

見かねたキキラが机から飛び出していった。

「ほんだなにてちょうをしまうのは、やめて!らぱーたさんたちがこまっちゃうでちょ!」

「、、、、、」

キキラが言ったものの、返事は何もない。無言が返ってきた。

「むむむ、、、。こうなったら、うぉーたーぼーりゅでびしょびしょにしてやる、、、!」

遂にキキラが実力行使に出ようとしたのを見て、秋音も慌てて出てきた。

「ちょちょちょっ、それは流石に駄目や!、、、あ、出てもうた」

全員参上してしまった。

だが、それでも下手人らしき者達は動かない。

というか、最早この場に居るのかすら分からない。

それ程気配を消すのが上手い。

「、、こ、ち、、、くが、の、えあ、、、た、、、。」

不意に小さな声が聞こえた気がした。

「え、今何か言いましたよね?」

「せ、せやな」

メイカと秋音がひそひそと確認し合ったが、やはり言っていたようだ。

「え、、、な、」

「、、。あ、、たち、、、よ、でき、、、、だ、、う、、ょ。」

また何かを言った。

すると、小さな気配が一斉に動き始めたのを感じた。

「あ、あのー、申し訳無いのですが、もう一度言って貰えませんか、、、?」

怖ず怖ずとメイカが言う。だが、それに答える声は聞こえない。

「すみませーん、、、」

「よぉし、いくよぉ、、、。それっ」

小さい子供の様な、あどけなくて軽い声が聞こえた。

その途端、三人の体は何かに引っ張られる様な、吸い寄せられる様な感覚に襲われた。

「ふぇっ!?う、わぁー!!」

「なっ、何何何何ぃー!」

「すっ、吸い込まれるぅぅうぅ!」

そして、三人はひゅんっと何処かへ消えた。

悲鳴がこだまする塔には、もう三人の姿も下手人の姿も、何も無かった。


三人は横並びになって、物凄い勢いで穴の中を滑り落ちていく。

仄暗いその穴には突起などが無く、すべすべしている為、どんなに頑張っても止まる事は出来なかった。

更に、秋音はいつの間にか九尾の姿に戻っている。

「わぁー!ながーい!しゅべるー!」

こんな時でもキキラはキキラ。

何処に続いているかも分からない穴で、然も楽しそうに笑っている。

「ちょっと、楽しまないで下さい!じゃなくて、二人共無事ですか!?無事ですかそうですか!私もです!」

メイカは焦りと冷静を同時に体現するという器用な事をしている。

《、、、え、ちょ、ちょい待、え、は!?この先分かれ道!?バラバラになってまうっ!》

突然秋音が叫んだかと思いきや、ちょっと、いやかなり不味い事を言った。

「え!?本当だ!?とっ、取り敢えず固まりましょう!キキラ!」

「あーいっ!」

急いでキキラを抱き締めるメイカ。だが、キキラを挟んで隣に居る秋音にはどうしても届かない。

「きっ、キキラ!アキネ様をっ!」

「うんっ!あーねー!!」

キキラが何とか掴もうと手を伸ばすが、既所で届かない。

そうこうする内に、分かれ道まで来てしまった。

そして、そのまま秋音は二人とは違う方の道へと滑っていってしまった。

《ききらぁ!めいかぁぁぁー!!!》

「アキネ様ー!!!」

「あ、あーねぇー!!!」

叫び声がどんどんと遠くなっていく。

秋音はどうしようもない不安感に襲われた。

《ど、どないしよ、、、。》

オロオロとしながらも、戻ろうと足を壁に付ける。だが、無情にも穴はつるすべだった。

何も出来ずにそのまま何処かへと滑り落ち続けてしまう。

ならばと、風魔法で体を上へと運ぼうとするが、何故か魔法が発動しない。

他にも、ウォーターボールに突っ込んで勢いを相殺し、そのまま上まで登ろうとしたり。

変化で大きくなり、両手両足で踏ん張って壁登りをしようとしてみたり。

だが、どれをやろうとしても、何も起こらない。

変化も魔術も、使えなくなってしまった。

そして、変化も魔術も使えない秋音は、ただの子狐だ。

どうしようもなくなった秋音は、必死に足掻いた。

だが、それ位で何とかなる程甘くは無い。

秋音の小さな身体はどんどん滑っていってしまう。

すると、ずっと向こうに光が見えた。

《やっ、やった!出口や!もしかしたら、二人がおるかも、、、!》

そんな淡い期待を抱いて、秋音は出口に着くのを待った。

そして、遂に出口が目の前に来た。

だが、その先が見えない。

向こうから差し込む光が眩し過ぎる為、何も見えないのだ。

一抹の不安を抱きつつ、秋音は出口へと滑っていった。


「、、、ど、どうしよう、、、。」

秋音だけが取り残され、何処かへ滑って行ってしまった。

その事に、メイカは強い焦燥感を覚え、思わずキキラを思いっきり抱き締めてしまった。

「お、おねえちゃ、いたい、、、。」

「ぅ、あっ、ご、ごめん!大丈夫ですか?」

キキラが呻く声ではっとして、メイカは急いで力を緩めた。

「うん。、、、でも、あーねが、、、」

痛みは平気の様だが、真っ青な顔をしている。キキラも考える事は同じらしい。

それもその筈、二人は先程秋音の元へ行けないかと色々な魔術を試したが、どれも発動する事なく霧散してしまったからだ。

秋音は変化を使える事は知っているが、魔法と同じ様に使えなくなっている可能性も捨てられない。

ただでさえ、あんな小さな子供が一人で知らない場所へ行くのは危険だ。

それでも今までキキラと二人で街へ行く事を良しとしていたのは、メイカ自身が森と街を隅々まで調査し、安全だと判断した事、二人の魔術のレベルが大人から見てもそこそこ高い為、相当な事が無ければ大丈夫だという事、そして何かあれば問答無用で直ぐ様メイカがその場へと転移させられる『御守』を持たせていた事の三つがあったからだ。

だが、その内の二つが駄目、更に御守も使えるかどうか定かではないときた。

もしもこの状態で何かあった場合、秋音が生き残れる確率はほぼ無に等しいと言える。

「だいじょぶ、おねちゃん?、、、あ、あーねは、きっとだいじょぶ、だから、、、。」

どんどんと顔色が白く、青くなっていくメイカに、キキラが声を掛ける。

だが、その声はメイカには届かなかった。

うん、絶体絶命でございますねー。

ここでボスキャラ登場したら軽く死ねちゃいますよ、やばーい。

え、軽すぎるだろって?

いやいや、よく考えてみて下さいよ。

三歳なのに大人の魔法使いの半数以上(Bランク)の強さを持つチート幼女の秋音とキキラに、森と街を隅々まで調査して、対象者に何かあればその場に転移出来る御守を自作する事を可能とする実力を持ったぶっ飛び女のメイカですよ?

更に言うと、Bランク魔法使い=平均より多少強い魔物をタイマンで倒せる、になります。

更に更に、メイカさんはこう言っております。

「もしSランクの魔物に囲まれたら、二人を守り切れるかは五分五分ですよ!」と。

Sって伝説級の魔物程では無いけど通常の魔物の中では最強のランクの事ですからね???

大丈夫でしょー。たぶん。


それから、活動報告に載せたんですけど、私が描いたこの作品に関連する絵を載せまーすってやつ。

あれを今からしまーす。

てことで、じゃーん。

https://46073.mitemin.net/i933456/

URLでーす。

この子はそのうち出て来る奴でーす。

絵が拙いのには目を瞑ってもろて。

ちなみに、概要は、性別:男、種族:一応人、年齢:秋音と出会う時は七歳

ってな感じかな。

あ、茸は作中では生えてないよ!ただのノリだよ!


見てくださった方、ありがとうございます。

次回、「秋音と生態系 後編」です。

本文短いのに後書き長くてすんません。

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