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秋音、特訓する 後編

え、まだ十話?

もう二十話くらいの気持ちでした(なんで)

翌日。二人は懲りずにまた魔術の特訓と言って外へ出た。

「昨日は大変やったなぁ。まさか、魔術を練習したら家水浸しになるなんて。」

「ねぇー!なんでああなっちゃったにょかなぁ?あたちがしっかりいしきしてなかったかりゃ?」

「そうかもねぇ。意識がそれると家がびしょびしょになるんか。次は気ぃ付けななぁ」

風が吹けば桶屋が儲かる的な話しをしている二人。そんな二人の背後に、音も無くメイカが立っていた。

「二人共」

「「うわぁぁっ!?」

二人が同時にビクッと跳び跳ねた。

「えっ、何に驚いてるんですか?」

「ふだ、ん”ん”っ、何でもないよぅ」

「おねえちゃ、い、もごっ!もがもがっ!」

秋音がキキラの口を塞ぎながら、笑顔を貼り付けて言うが、頬がひくついている。

秋音は知っている。メイカは意外とすぐ怒るが、もっと本気で怒ると本当に恐ろしいことを。

普段から怒っているから怖かったとか、いきなり怒ると思ったとか、口が裂けても言えないのだ。

「で、どうしたんだい?」

話を逸らそうと、秋音が質問する。

「あぁ、そうでした。二人がまたやらかさないように、今日からしっかり見張ることにしたんです!」

「へぇ、そうかい。、、、ん?わっちら、そないに信用あらへんかい?」

「はい!前科がありますので!」

凄くきっぱりと言われ、ちょっとショックな秋音。

だが、

「頑張った人には、手作りお菓子差し上げますので!」

の一言で、すぐに忘れてルンルンになった。

「おかし!?やたー、やたー!」

キキラも万歳して喜んでいる。

「はいはい、ですから頑張って下さい」

「「うん!」」

凄くやる気になった二人。最近どんどん似てきているな、と感じるメイカであった。

「じゃーあ、みずのつづきしゅる?」

「そうしよか」

「頑張って下さい!」

取り敢えず、魔術書に載っている水の魔法を全て試すことにした。

水の刃に高圧水鉄砲、霞、洗濯などなど。

応用編には、除湿や毒霧、霰、氷などが載っていた。

毒を使うのは流石に危険だが、色が付いていないと分からない、ということで、朝食の青菜を煮た後のお湯を霧にすることにした。

結果は見事成功で、周辺が薄っすら緑で温くなった。

「凄いです、二人共水魔法は一通り出来てますね!」

メイカが感心して拍手している。

「ここまで出来るのなら、あとはもっと研鑽を重ねて威力と発動速度を上げれば完璧です!まぁ、魔力量が多いみたいなので、既にBランクの魔法使い位ですが。流石キキラとアキネ様です!」

うんうんと頷いているメイカ。

「ん?めいか、魔物だけやなくて、魔法使いにもランクやらあるのかい?」

魔術書には載っていなかったことなので、秋音が聞き返した。

「はい、ありますよ。下から順にF,E,D,C,B,A,Sランクの七つで、大体の魔法使いがCランクですね。駆け出しの魔法使いの大半がF〜D、A,Bランクは街に合計十人位で、Sランクは国に四人いるかいないかです」

「ふぅん。あ、基準てあるのかい?」

「ありますよ!単独で難なく倒せる魔物のランクに伴って、冒険者のランクが上がります。いずれも試験に参加する必要がありますけどね。それと、冒険者は強さだけでは出来ない職業ですので、普段からの勤務態度や信用も影響します。騎士のランクもこんなですよ!」

秋音はふむふむと、キキラはほえーと聞いている。

「そうなんや、知らへんかったわぁ。おおきに!」

「ありがと、おねーちゃ!」

「ふふっ、全然ですよ」

二人にお礼を言われ、メイカは嬉しさが混じったはにかんだ笑顔を見せた。

「よぉし!次は火魔法や!」

「おー!がんばろー!」

「頑張って下さーい!」

拳を突き上げて、おーっと気合を入れる二人。メイカの応援も熱が入っている。


その後も二人は続々と魔法を試していった。

火魔法と派生の光魔法。風魔法と派生の伝達魔法。そして、土魔法と派生の岩石魔法。

二人は難なくそれぞれの基本をこなす事が出来た。

メイカはというと、二人が様々な魔術を練習する中、美しい所作で紅茶を淹れ、ご褒美用のお菓子を頬張って満喫していた事に気付かれ、「後でまた作る」と約束させられた。

ちなみにお菓子はジャム入タルトで、秋音は見た事の無い美味しいお菓子に驚きつつも美味しく食べていた。


「ふぅっ、ようやく出来た、、、。」

メイカの目の前には、焼き上げられた大量のタルト。

秋音の掌大のタルトが三十個程ずらっと並ぶ姿は、もはや圧巻である。

「わぁー、たるといっぱーい!おいちそー!」

「ほんまや、いっぱいやねぇ。これだけあったら、許したる」

じろっとメイカを見る秋音。勝手に食べたことはまだ根に持っていたらしい。

「あ、あはは、、、。それよりも、ほら、二人共食べて下さいよ!頑張って作ったんですから、ほら!」

「んぐっ!?」

何とか話を変えようと、メイカがキキラの口にタルトを突っ込んだ。

もっしゃもっしゃと食べるキキラの表情が、段々明るくなっていく。

元々明るい表情をしているので、もうすぐ光りそうだ。

「ごくっ、おいちい!!」

ぱぁっと笑ってキキラが言った。

「ほんまかい?わっちも、、、、あーん、んぐ、んぐ、、、ほんまや、美味しい!」

それを見た秋音も口に運び、にこっと笑った。

「ほっ、、、よかったです」

わざとらしく胸を撫で下ろしつつも、美味しいと褒められて満更でも無さそうなメイカ。

自分でも一つ食べ、満足そうに頷いている。

「あっ、そういえば二人共大丈夫ですか?凄く沢山食べてますけど、、、」

しばらくタルトを堪能していると、メイカが思い出したようにいきなり言った。

「ん?何がかい?あっ、もしかして太るって、、、?」

秋音が怪訝そうな目でメイカを見つめている。キキラは気にせずばくばく食べている。

「違いますよぉ。というか、キキラはともかくアキネ様は痩せすぎです。もっと食べて下さい!」

「えっ、そ、そうかい?昔と大して変わらへん、いや昔より太った気ぃすんで?」

秋音が幼い頃も、大きくなってからも、あの家でまともな食べ物が出てくる事は滅多に無かったためか、常に肋が浮き出た体をしていた。

腐っても残り物でもない物を食べられるのは、奉公人か顔馴染みの舞妓達がくれた時か、家族揃って外食しなければいけない時のどちらかだった。

それに比べると、今の血色も肉付きも良い体は太っているとしか言えない。

「えぇ!?いやいやいや、このほっぺたを見て下さい!こぉ〜んなにむにむにでしょう!?なのにアキネ様はシュッとされて、、、!これが三歳児の普通です!」

「むぅうぅぅう〜、、、やめてー!おかしたべれないー!」

タルトでぷっくり膨らんだキキラの頬をむにむにしながら、メイカは声高に言った。

「あっ、ごめん、可愛くてつい」

「むぅ、、、ふん!」

「ご、ごめんってばー!」

そっぽを向いて頬を膨らませてしまった。そして、その膨らんだ頬にタルトをこれでもかと詰め込んでいる。

「あーあ、やってもうたなぁ。、、、まぁ、わっちはむにむにとちがうかな」

確かに、言われてみればむにむにほっぺは持ち合わせていないな、と思い、自分の頬を撫でる。

「そうでしょう!?それなのに太ってるとか可笑しいです!もっと食べて下さい!」

「う、うん。ふふ、おおきにな」

「ふふ、じゃないです、、、むぅ、、、」

必死すぎて笑ってしまった。メイカまで頬を膨らましている。

「あっ、そうじゃなかった。えっと、先程魔法を連続で使いましたでしょう?」

ようやく話が元に戻ったようだ。

「あぁ、そうやな」

「魔法を発動するには魔力が必要で、魔力が無くなって枯渇状態になると大変なんです。最悪命に関わります。そして魔力量が減るとお腹が凄く空くんです」

恐ろしい事を二つも言うメイカ。空腹な上に命が、、、。本当に恐ろしい。

「え、、、、大変やん」

「はい。私もなったことがあるんですが、大変でした」

しみじみと言うメイカ。だが、そういうことはもっと早く言って欲しい。

「まぁ、二人は私以上の魔力量ぽかったので大丈夫だと思いますけどねー」

「あ、そうなん?なら平気かいな」

ほっとしてまたタルトに手を伸ばす秋音。

「そう思います。あ、でも急に魔力を使い過ぎると体が驚いて倒れたりします。きっと昨日の巨大ウォーターボールが良い準備運動になったんですね」

タルトを食べながら、それも早く言って欲しかったと思った。

「まぁ、元気そうなので大丈夫ですね!」

「う、うん?まぁええか」

ぐっと親指を立てるメイカ。雑過ぎる気もするが、まぁいいかと思うことにした。

「、、、あれ、何か言い忘れているような気が、、、。何でしたっけ?」

あれ?と首を傾げるメイカ。可愛らしい仕草だが、今までの話の内容的に忘れてはいけない事な気がする。

「わっちに聞かんといてくれ。で、思い出せそうかい?」

「無理ですね〜」

「無理なんか」

即答された。だが、何となく気になってきてしまった。

「ほら、何とか思い出せへんかい?うーん、魔法のことやらかいな?」

「うーん、、、。そんな気が、、、。」

メイカがうーん、うーんと唸っているが、思い出せないようだ。

「そうか、、、。ほな、仕方あらへんなぁ。」

秋音が諦めた時、ばくばくとタルトを貪っていたキキラが顔を上げた。

「おねえちゃ、きょうよんだいまほーとかせーれーのいとちごとかいってたよねぇ?しょれじゃないのぉ?」

口にタルトの食べカスを付けながら、キキラが色々言った。どれも秋音には聞き馴染みが無く、すぐには理解出来なかった。

「魔法の種類?精霊のいとちご、、、愛し子?、、、、あぁっ!思い出しましたぁっ!」

いきなりばっと立ち上がって叫ぶメイカに、二人はひゃっと首を竦める。

「って、思い出したって?なんやったんや?」

思わず身を乗り出して聞く秋音。メイカはどこか緊張した面持ちで話し始めた。

「えーっとですね。魔物や獣、人や魔族、エルフなど全種族に、たまぁに、精霊の愛し子という存在が生まれる事があるんですよ。」

「ほうほう」

「しょれでー?」

二人とも興味をそそられたらしく、食い入るように聞いている。

「その精霊の愛し子は、見た目や体は何ら変わらなくて普通なんですが、違う所も勿論あってですね。というのも、、、。」

「引っ張らんと早う教えてや」

焦れた秋音が机をコンコンと叩く。

「はいはい。それはですねー、魔術の面でとても秀でている事が多いのですよ。例えば、四大魔法とその派生を全て使えるとか、高威力、発動速度が異様に速い、正確すぎるコントロール、魔力の消費量の少なさ。後は水魔法なら不純物の量がゼロ、土魔法なら構築した物の強度が物凄く高い、、、などです。」

「へぇー、すごい奴がおるもんだなぁ」

「ねー、しゅごい」

二人は素直に感心している。だが、メイカは「え?」という顔で二人を見つめている。

「ん?わっちの顔になんか付いてるかい?」

秋音が聞くと、メイカは信じられない、とでも言うように見つめてくる。

「いやいやいや、心当たり無いんですか?まんま今日の二人でしたよ?分かりませんか?」

「「え?」」

二人同時に聞き返す。

だが、考えてみれば、確かにそうかもしれない。

巨大で不純物の無い水の球に、真っ青に燃え盛る炎。土魔法で作り出した土壁は、有り得ない程硬かったっけ。

「あー、、、うん。言われてみたらそうやな。、、、もしかしてやばい?」

「え?いや、レアではありますが問題は無いですし、誰彼構わず言わなきゃ平気ですよ」

大変な事なのかと身構えたが、意外と普通そうで拍子抜けした秋音であった。

ラノベでよくある聖女はこの作品にもいます。

で、その聖女が使うのは、光魔法では無く神聖魔法で、全くの別物です。

ややこしくて申し訳ありません。

光魔法は、光を発したり、目眩ましをしたりする事は勿論、自分に反射して他の人の目に届く光(つまり相手から見た自分の姿)を捻じ曲げて変える事なども出来るものです。

光魔法が火魔法の派生と書いたのにも間違いはありません。


それから、一話で一日丁寧に書くのはこの回でお終いで、あと十五話位で新章突入です。

これからは時間がどんどん過ぎていく中で、ちょっと変わったこととかがあった日を書く感じになります。

なんせ、今の章泡沫ですので。

泡沫ってついてるのに二十五話って多くね?とも思ったんですが、楽しい時間はあっと言う間に過ぎるから、秋音達も多分泡沫レベルの体感の短さだと思うので、許してくださいね!ね!

あと、これから異世界ワールド全開でいこうと思ってます。


見てくださった方、ありがとうございます。

次回、「秋音、森へ行く」です。

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