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0 白い世界から

お久しぶりです。

概要欄にもあったように、大幅に修正しました。

見たことがある方もほんの少しだけいらっしゃると思いますが、頭の中から記憶を追い出して見てください。

…様。起き…くださいまし、…様。


優しい声がする。


…もう朝ですよ。


暖かくて、安心する。


…ほら、御飯を食べましょう、ね?


懐かしい、今はもういない人の声だ。


「…姐や?」

はっとして起き上がり、辺りを見回すが、やはりあの人はいない。

美しい黒髪と顔の少女ーーー秋音は目を伏せ、下を向いた。

だが、そのすぐ後に、今度は困惑したような表情の顔を上げ、ポツリと呟いた。

「…ここ、どこ?」

秋音のいる場所は、上も下もない、白い空間だった。



「秋音様、大旦那様がお呼びどす」

「分かったわ、今行く」

女中に呼ばれて立ち上がった秋音は、地味な色味の袴の汚れを軽く払いながら立ち上がった。

紺野秋音。齢十七。京都の大店の娘。

家族構成は、京都の呉服屋の大旦那である父栄一郎、同じく呉服屋を隣町で営んでいる家の一人娘の義母百恵、長男の桜也、次男の芹之佑、次女の蓮華、三女の菫、そして長女の秋音という七人家族。

元は小さかったが、三代前に成り上がった呉服屋「紺空」は、この町で一番大きな呉服屋で、武家の皆様の御用達。

なかなかいいご身分の娘なのだが、結婚適齢期だというのにほとんど縁談が来ない。

というのも、秋音は俗に言う「変人」なのである。

病気でも無いのに医者の元に通ったり。

手に大事そうに汚れた草花を抱いて、全身に泥や葉っぱをつけて帰って来たり。

夜中には、部屋からゴリゴリと何かを擦り潰す音がする。

顔は端正で美しいが、碌に笑わず、愛想も悪い。

初めの頃はそれでも美しさと家目当ての縁談もそこそこ合ったのだが、話しかけてもあまり喋らないくせに、「あんた、少し食べ過ぎとちがうかしら。体のためにも控えたら?」などと初対面のお見合い相手にぶちかますので、今では全く来なくなった。

そんな、家を大きくする駒にもならない、一家の中でも嫌われ者の長女が、秋音であった。

…どうせ、そろそろ相手を見つけて出ていけだの、女の子らしくない事はするんじゃないだの言われるだけだ、と思いつつも、秋音は素直に父親の元へ向かった。

「お父様、秋音どす。お呼びでっしゃろか」

「ああ、入れ」

襖の前で声をかけると、返事が返って来たので、中に入る。

中には、流行を取り入れた質の良い着物を着た父と五十過ぎの割には派手な母が、揃って薄い笑みを浮かべていた。

「おはよう、秋音。立ち話も難やさかい、そこに座りぃな。ほれ、()()()出したって」

「はい」

珍しく優しい義母に促されて、両親の向いに座ると、お茶を出された。

「あんたはいつでも優しいな、百恵。えー、秋音も元気そうで何よりや」

「ふふ、あんたったら」

父の前や外でだけ優しい義母を見ながら、どこがだよ、と思いつつ、秋音は出されたお茶を上品に飲む。不思議な味だ。

「秋音はもっと可愛らしい服を着たらどや?きっと()()()()見つかるで」

「うちには似合わしまへん。それよりも、妹達に着したってください」

父親の口元だけの笑みに嫌気が差しつつも、秋音も愛想笑いを浮かべて話す。

「…そうか。あんたは親不孝者のままやったな。もうええよ」

ピクリと口元を動かしながら、父が言った。

「?…そうどすか。ほな」

いつもはもっと長い間叱られたりするのだが。用事でもあるのだろうか。

すんなりと帰らされた事に違和感を覚えつつも、秋音は部屋に戻ろうと立ち上がった。

「…っ?」

目の前がグルグルと回っている。足に力が入らない。気持ち悪い。

平衡感覚など掴める筈もなく、どさっと横向きに倒れた。

「あらまあ、どないしたの?」

義母の声がする。

返事をしようとしたが、声を出す余裕すらない。

段々と目の前が暗くなる。

「…ふふ」

最後に聞こえたのは、いつもと同じ、嘲笑する義母の声だった。


「そうやった。うち、倒れて。…あぁ、あのお茶…。」

()()()()()だったのは、そういうことか。

程よく硬い、だが掴もうとしても掴めない地面に寝転んだまま、秋音は独り言を呟いた。

「まだ、やりたい事、あったのになぁ…。まぁ、、しょうがないよね」

どうせ、親の手駒として生かされる人生だったのだ。

どうせならもっと人のためになってから死にたかったが、こうなってしまっては仕方がない。

辛いことばかりのあの場所から離れ、静かに眠れるのならそれも良いかもしれない。

先に行ってしまった、最愛の家族に会えるだろうし。

…だけど。

「やっぱり、ひぐっ、死にたく、ながっだ、なぁ…」

顔をぐしゃぐしゃにしながら、酷く小さな声を絞り出した。

その時だった。

「うっ、うわぁぁあぁぁ!?」

秋音の真下に、穴が空いた。

真っ白な世界に突然空いた黒い穴に、秋音な吸い込まれるように落ちていった。

見てくださった方、ありがとうございました。

登場人物、大まかな話の流れなどはあまり変わっていませんが、セリフ等はめっちゃ変えました。

他の話も追って直して行くので、暇つぶし程度の感じで見てもらえると嬉しいです。

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