旧友
俺は久しぶりに中学の頃ずっと一緒にいた4人のメンバーで遊ぶことになった。最初の第一印象としては、みんなあまり変わっている様子はなかった。顔合わせのときは、気まずい雰囲気だったが、徐々に昔と変わらない空気になっていく。
しかし、私は郡山に違和感を覚えた。中学の頃は肌が赤褐色で、おさげ髪のサラサラヘアー、鼻は高く、まるで海外人をおもわせるような顔をしていた。いつも顔の喜怒哀楽が激しく、面白いやつだったのを覚えている。
だが今、目の前のやつは顔つきが硬いのだ。笑顔が怖かった。まるで、笑顔しか表情を作れないような顔という、初めて人に抱いた印象だった。久しぶりだから緊張しているのかと初めは気にしないようにしていた。
「最近、みんな仕事は何してるの?」
食事中に雑談の中、リーダーシップである山森が聞いてきた。
「俺は美容師してるよ。専門卒業したのは10年前だし、もうプロだわ」
斉藤が冗談か自慢か判断しずらかった。
「誠司は今何やってる?」話を振られて私は答えた。
「ライターしてるよ。年収は全然なんだよな」
「意外だな。てっきり栄養士にでもなると思ってた。」
俺は栄養士専門の大学に進学していたが、途中で挫折してライターになった。
「斉藤と郡山は?」
「え?ああ、出版社に勤めてるよ」
「やっぱりなー!郡山学生時代は毎回学年1位だったもんな」
「僕は銀行かな」
さすが2人は成績優勝であったため、良いところに就いていて少し羨ましい。
某有名飲食店で将来設計や昔話に華を咲かせて盛り上がった。
「そろそろ帰るね。」
誰かが言い始めて、俺たちは「俺らもそうするか。」と、声を上げた。今のところ、郡山の話は普通の会話で、きっと気のせいだろうと片付ける。
帰り道にひとり、またひとりと別れて郡山と2人っきりになった。
「最近畑を耕してるの。」
東京で畑を持ってるとは珍しい。少し興味を持って話を聞いてみたい。
「畑で取った大根を煮物にすると美味しくてな。お前にも分けてあげたいよ。」
「出版社に勤めてるのに、時間なんてあるんだな。」
そう軽く言うと、郡山の表情が真顔に変わった。しまった、嫌味に聞こえてしまったのだろうか。
心臓が焦る。
「ああ、休日が多くてね。結構暇してるのさ」
「良い会社でよかったな」
なんとか持ち直すと、それから会話はなく、別れ道に着いた。
「じゃあまたいつか会おうな」
声をかけると、真面目な顔で「そうだな」と、返してくれた。
その後、郡山とは会わなくなったが、噂によるとどっかのコンビニで働いているらしい。