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夏花  作者: 八花月
23.
93/95

93

 ブ厚い遮光カーテンで、窓を覆った一室に難しい顔をした人間たちが集まっている。


「こらおおごとやなあ」


 腕組みした男が、しわがれた声でぼやいた。部屋の前面には天井から白いスクリーンが垂れ下がっており、無残に損傷した山頂の古墳の姿がプロジェクターを通し次々とスライド方式で映し出されている。言わずと知れたかささぎ峠の古墳〝かささぎ峠古墳〟の写真だ。


「まあでも、整備前で不幸中の幸いよな」


「あれ、ちゃんと表面に石とか積んで昔の恰好にするんやもんな。その後でこんなんなったら目も当てられんわい」


「なんか、中の骨やら副葬品? もバラバラに散らばっとるゆう話で……。早急に集めんといけんよねえ」


「集めるゆうても……副葬品はともかく、骨はもう本当にバラバラなんやろ? わしら素人では難しかろう」


「骨やら石やらようわからんで」


「それはまあ、大学の先生に来てもろうて……」


「大学そんなんやってくれるんかいな」


「あの~、まあその辺のことはおいおい考えていくということで……今回集まってもろうた本筋のほうをですね……」


 まとめ役らしい男が、のんびりした声を上げた。


「ああ、はいはい」

「本筋ね」


 部屋内の者達は前方のスクリーンに向き直った。


「ちょっと待ってくださいね。本筋は動画んなりますけん……」


 まとめ役の男はノートPCを操作し、スクリーンに再生した動画を映した。


「おお……これはスペクタクルやな」

「あれ? あんた初めて見るの?」

「いや、そがいに大したもんやなかろうと思うとってな」


 スクリーンでは、薬子と乙女の凄まじい戦いが展開している。


「これ……やっぱおたすけし隊の二人よなあ」


「暗いけんわかりにくいが、そう見えるな」


「え? これ市のチャンネルに上がっとるわけ?」


「いやいやいや。なんやどっかのYOUTUBERが公開しとる動画っちゅうことで」


「そんなら問題なかろう」


「いやいやいや。それがやな、あの、武音乙女さん、ウチのおたすけし隊の。あの武音さんが作っとるYOUTUBEのチャンネルにリンク貼っとるらしい」


「えええ……」


「それだけやないで。武音さん、そのYOUTUBERの別の動画に出てなんか色々話したりしとるんやって」


 司会の男はPCを操作し、当該動画を映した。


「う、うーん……これはまた微妙な……」


「いやでも、それ自体は別にええんやないの?」

「なにがいな?」


「あの人は元アイドルやろ? わしらその、なんや、知名度やら話題性やらも込みで採用したやないの」


「ああ〝客寄せパンダ〟……」


「ええ言い方やないがな」


「そんならまあ、本来の仕事を果たしとる、ゆうことになりゃせんかな」


「いやいや、しかしやな。やっぱりこの、古墳のやつはなあ」


「うん。いくら話題作りや、ゆうても不謹慎すぎやせんかの」


「地震で壊れたかささぎ峠の古墳のとこ行って、こんなもん撮っとるわけやろ? まあ撮ったんは別の人間かもしれんが……」


「古墳ゆうてもまあ、墓やからなあ。故人のことを考えたら、あんまり遊びもんにするゆうんも……」


「そのことなんやけど、わしちょっと引っかかるんやけど」


 一人の男が深刻な顔をして挙手する。


「なに?」

「あの、古墳ってほんとに地震で壊れたんかな?」


 一瞬、みなが口を閉じ、ノートPCのスピーカーから流れる、がさついた動画の音だけが室内に流れた。

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