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夏花  作者: 八花月
21.鵺
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「あの……わたくしもうそろそろ限界ですので……後はよろしくお願いいたします……」


 雅樂は消え入りそうな声でそれだけ言うと、後ろにバッタリ倒れてしまう。


「あんたホントに何しに来たの?!」


 ミラは憎まれ口を叩きつつも、雅樂の身体が地面につく前に、しっかり抱き止めた。


「ミラ! 悪ぃけど雅樂ちゃん安全なとこに置いてきてくれる?」


 ミラは乙女の言うことを聞いてか聞かずか、 小さく舌打ちし、雅樂を抱っこして木立の奥へ消えていく。


「おい、結局古墳ブッ壊しやがったなお前」


 乙女が呼びかけると、薬子は〝そうね〟と打たれた頬をさすりながら言った。


「今帰るなら許してあげてもいいけど」

「ああ?」


 薬子の妙に余裕ぶった態度と、小馬鹿にしたような態度が、少し乙女のカンに触る。


「私別に興味ないのよ。あなたにも、この町にも……。欲しいものがあったから来ただけ。それはもう手に入ったの。だからあの二人を連れてここから立ち去るなら何もしないわ。私に手を上げたことは許してあげる」


「何言ってんだお前? もう許すも許さねえもねーよ」


 乙女は、指の骨をポキポキ鳴らした。


「あたしはお前と話しにここへ来たんだ。でもお前あたしの言うこと聞かずに観光資源ブッ壊しやがったからな。一旦話し合いは中止だ」


「……こんなとこに人来るわけないでしょ」

 薬子は呆れたように言う。


「あなたおかしいわ。本気で町おこしなんて可能だと思ってるの?」


「大マジで思ってるよ。それがあたしらの仕事だろ?」


「大資本が入ってきた時点で、地域の金、物、人は都市に吸い取られる。地方の衰退は構造的な問題よ。解決策は無いわ」


 薬子は乙女を、冷たく見下ろした。


「世界中ネットでお手軽に繋がっちまってるような世の中だぜ? もう都会だ田舎だっつって簡単に色分けなんざ出来ねーよ。お互い良いとこはマネすりゃいいし、足りないとこは補いあえばいいのさ」


「もういいわ、時間切れよ。……消えて」


 薬子が、手に持った棒のようなものをタクトのように振ると、骸骨達の動きが早くなった。先程よりも統制がとれ、皆真っ直ぐ乙女に向いて降りてくる。


「オラァ!」


 乙女は、取り合えず助走をつけて一番近い骸骨を思い切り殴ってみた。呆気ないほど簡単にバラバラになる。


『あっ、これ……もしかして歴史博物館(れきはく)かなんかに飾る予定だったのかな……』


 少し後悔したが、考えている余裕はなかった。他の骸骨達も迫ってきているし、今破壊した骨も復活の兆しを見せている。


「雑魚を相手にしたってダメよ!」


 声と同時に、ミラが上空から薬子に飛び蹴りをかました。案の定さっきのように見えない壁に阻まれたが、諦めてはいない。


「このっ! このっ!」


 どうやら、薬子の周囲の地面を蹴り飛ばし、描かれている魔法円を消そうろしているらしい。それであのバリヤーみたいなものがなくなるのなら、いい案のように思えた。


「とっととそこから出てきなさい! 人間風情が……」


 威勢よく喋っていたミラが、突然息を荒くしへたりこんでしまう。


「おいミラ、離れろ! こっち来い!」


 詳細はわからないが、乙女はさすがの戦闘カンでミラに呼びかけた。


「ぬかったわ。あいつ、まだ地面の下に骸骨を隠してた……」


 薬子と距離をとったミラは、乙女の腕にしがみつきながら悔しそうに言う。


「骸骨? あれそんな強くないだろ?」


屍毒(プトマイン)よ。あのクソ女、死霊術にこんなものまで仕込んでるなんてね。かすり傷でもつけられたらマズイわ……オトメも気を付けて」 


 毒……?


『そういえばさっき、骸骨殴っちまったな』


 嫌な予感とともに、乙女は急激に自分の身体が鉛のように重くなるのを感じた。


『うおっ……』


 熱いものが食道を逆流してくる。胃のを中身少なからず山肌に吐き出してしまった。


「ブザマね」


 薬子の声音は、憐憫の情を湛えている。


 それが耳に入った時、乙女の理性は完全に消し飛んだ。



「お前さあ……」

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