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「あいつ何しようとしてんの?」
乙女の声を聞き、上古は〝う~ん〟と顔をくしゃくしゃにした。困っているようだが確かにこうして見ると愛嬌がある。
「ど、どういう風に言うたらええんかにゃ?」
「お前が喋るのだろう?」
回向の返事はあまりにもつっけんどんだった。
「いやお前、それはそう言うたけれども、そういう言い方は……」
上古と回向は何やらごそごそと小声で話しあっている。
「……え~、乙女さんはかささぎ峠、っちゅうところに陵があるのをご存じですかにゃ?」
「う~んと……」
「古墳のことだ」
フリーズしている乙女に、回向が助け舟を出した。
「あ! ああ! はいはいはい! かささぎ峠古墳ね!」
乙女も一応、斧馬町の観光マップは頭に入れている。えらく端っこの方に描かれていたそういう名前の古墳があったはずだ。
「新早薬子はそれをブチ壊そうとしとるんですにゃ」
「おぬしはこの町に活気をもたらそうとしているのだろう? 名所が破壊されるのは意に沿わんのではないか?」
「ああ、まあ……」
二人に立て続けに言われ、乙女は曖昧に返事をする。
『あいつ何でそんなこと……そういやあいつ歴史好きっつってたし、なんかそういう調べもんとかかな? いや、そもそもこいつらのこと信用していいのかどうか……』
乙女はちらっと、化け猫と虚無僧に目を向けるが、両人ともじっと乙女の顔を注視していた。回向はわからないが、上古は真剣な面持ちである。
『ダメだ。わかんねえ。よし!』
乙女は考えるのを早々に諦め、勢い良く席を立つ。
「ど、ど、どしたんですかにゃ?」
「あんたらの言う事一応信用するよ。引き受ける。今から行ったら多分休憩所閉まるまでに間に合うから、直接薬子と話す。もしホントに古墳壊そうとしてるんなら、説得するから」
「ああ、いやいやいや。それはちょっと」
「下策だ。やめておいたほうがいい」
一匹と一人は同時にNGを出した。彼らは噛み合っていないようでいて、息があっている。
「なんでだよ」
「こう……被害が大きくなる、みたいにゃ……」
「話し合いで解決するのは無理だ。戦闘になる。町中はまずかろう」
回向が簡潔に意見を述べた。




