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夏花  作者: 八花月
16.激突
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「オトメは、私のこと攻撃出来ないんだと思ってた……子供の格好してるから」


 しばらくして、ミラは呟いた。


「あれは攻撃なんて大層なもんじゃねーよ。その、悪い子への躾だ。お前風に言えばな」


〝なにが躾よ〟と、ミラは吐き出すように言う。


「人間だったら、頭潰れたトマトみたいになってるわ。あんなの」

「ははは。いいじゃん。ミラはなってないんだから」


 ミラは、恨みがましそうな目で乙女を見ながら立ちあがった。服についてしまった埃を払っている。

 

「……で、これから私どうすればいいの? ここを出て行けばいいわけ?」


「何言ってんだよ。ダチにはなってやるって言っただろ? 一緒に住めばいいじゃん」


 乙女は快活に言ったが、ミラはまだ納得いってない、というジェスチャーなのか、顔をぷいっと横に向けてしまった。


「血ぃ吸わねーんなら、一緒に寝てやってもいいぞ? どうする?」


 ミラはふくれっ面のまま、こくんと頷き、おとなしく管理人室についてくる。


「あーあ。ひでえなこりゃ」


 部屋の中は、戦いの傷跡がそこかしこに残っていた。また補修が必要だろう。


「なぁミラ。ダチにはなるけどさ、結局人間ってのは……まぁ人間じゃなくても、生き物はみーんな一人で生きてかなきゃいけないんだからな。それは覚えとけよ」


 寝床に入りながら、言い聞かせるように乙女が言うと、ミラはその幼い目をキッと吊り上げた。


「嘘よ! オトメは昔アイドルとかやってて、友達もファンもいっぱいいるし……家族もいるんでしょ? 全然一人じゃない!」


『ちょっと難しいか……』


 乙女は、ここでこれ以上ミラに自分の感じていることを説明するのは、不可能だと判断した。


「まあ、最後に頼れんのは自分だけってことさ」


 へへっ、と笑いながら言うと、乙女は寝返り打ってミラに背を向ける。


「……ねぇ、どうして私のこと吸血鬼だって気付いたの?」


 背中ごしに、囁くようなミラの声が聞こえてきた。


「まあ色々あんだけど……一番はあれだな。あの学生二人にお前が色々やってた時さ、鏡に映ってなかったんだよ。あの、玄関ホールの階段の踊り場にさ、デカい鏡あんじゃん」


 以前、オカルト好きのアイドル仲間に〝吸血鬼は鏡に映らない〟という話を雑談中に聞いていたのだ。


 乙女の答えを聞き、ミラはチッと大きな舌打ちをした。


「あんなの外しとけばよかった……」


 あはは、と笑いながら乙女は内心、

『あたしはまだ鏡に映るよな?』

と、少し不安になっている。


 明日早速試してみよう、と思った。

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