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夏花  作者: 八花月
15.幕が上がる
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55

 夜は更けたが、乙女たちの居る部屋は煌々と灯りが灯っている。


 結構遅くまで話しこんでいたのだが、今はもう萩森も雅樂も眠りこんでいる。


『雅樂ちゃん、ずっと起きてるって言ってたのにな』


 乙女は苦笑しつつ、音を出さぬよう静かに立ちあがった。


 乙女が使っている部屋には、玄関ホールを経なくても外に出られる勝手口がついている。


 乙女はつっかけを履いて、こっそり外の闇に出た。


「おーい……えー、ミラ? ミラー、ちょっと出てきてくれないー?」


 微風が梢を揺らす、快い音が聞こえるだけである。


「おーい、ミラー。ミラちゃんやー」


 声が小さすぎたのかと思い、少しだけ声量を上げ言い直したが反応がない。


『建物の外では出てこないのかな……』


「なによ」


「わあ、びっくりした!」 


 背後から声をかけられ、乙女が降り返るとミラがいた。


「猫みたいに呼ばないで」


 相変わらずの美少女ぶりだったが、今は機嫌が悪いらしく、頬をぷっくり膨らませている。


「ああ、いや、それは悪かったよ。ちょっとお願いがあるんだけどさあ。あのー、今この館の中にいる人間で、ちょっと脅かして欲しいのがいるんだ」


「それって、あなたと一緒の部屋にいるやつら?」


 険のある調子で、ミラは聞き返してくる。


「いやいやいや! あの人たちはいいの! 同僚だからさ。下手なことしないで」


「ふうん……」


 ますます気に入らないようで、ブスッとした表情を隠そうともしない。


『なんだこれ。この様子じゃ無理かな……』


 予想外のミラの態度に、少しうろたえたが結局乙女は腹を括る。どうせダメで元々なのだ。


「あの、脅かしてほしいのは玄関ホールにいるヤツらなんだけど。若い男二人」


 ミラは黙っているが、一応話は聞いているようだっだ。


「……それで?」


「なんつうのかなあ、脅かすってもガチのやつじゃなくって、楽しませるっていうか、怖い半分・おもしろ半分、みたいなそんな感じでお願いしたいんだ。肝試しみたいなさ。肝試しってわかる?」


 ミラはしばらく沈思黙考していたが、やがて顔を上げた。


「いいわよ。やってあげる」

「お! マジで?! ありがとう!」


 半ば諦めかけていたので、乙女の喜びもひとしおである。

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