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「お嬢ちゃんも色々事情があんだろうけどさー、悪ぃけどしばらくあたしここに住まわせてくんない? やんなきゃいけないことがあるんだ」
「しばらくってどのくらい?」
「三年くらい」
少女はじいっと乙女を見つめている。何事か感じ取ろうとしているかのようだ。
『三年は長すぎるか。一ヵ月二ヵ月じゃねーからな……』
自分でも、見ず知らずの人間をそんな長い期間居候させることになったら少し考える。
乙女はこの場合、居候と呼称していいのかどうか微妙な立場だが、この少女から見ればそのようなものに映っているだろう。
「? お、おい」
少女は何の合図もなく、いきなり乙女の傍らに腰を下ろした。
「いいよ」
言葉少なに、少女は呟く。言い終わると、少女は遠慮がちに乙女に体重を預けてきた。
「乱暴なことしないでね?」
「しないよ、そんなの」
少女は、ますますその小さい頭を乙女の腕にくっつける。
『さっきは確かに浮かんでたんだけど、今は重さがある……っつうか、えらく友好的だな』
少女の振る舞いは、飼い猫のように人懐っこい。が、何か微妙な違和感がある。
「なぁお嬢ちゃん、名前は? なんて呼べばいい?」
「名前……うん。ミラー……。ミラって呼んで」
少女は、囁くような声で乙女に告げた。
「ねぇ、今日一緒に寝てもいい?」
「ああ……うん。別にいいよ」
乙女の了承を取り付けると、ミラはいそいそと寝袋の中に足を入れる。
「入れるかな?」
「大きいやつだから大丈夫だろ。夏だし開けっぱでもいいよ」
乙女が明かりを消し寝ころぶと、ミラも一緒に横になった。幼児の如く乙女の二の腕をぎゅっと抱いている。
……直接触れている掌だけでなく、ミラの身体はとても冷たかったが、僅かにぬくもりも感じられる気がした。よくわからない。
乙女の体温が移っているだけかもしれない。
『あたしを追い出そうとして、色々してたんじゃねーのかなー……』
色々疑問は浮かぶが、取りあえず幽霊と仲良くなれてよかった、と乙女は思った。




