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夏花  作者: 八花月
6.待宵屋敷へ
19/95

19

 その夜。


 乙女は、待宵屋敷一階の部屋に陣取り遠方の友と話していた。寝具は一応備え付けられていたが、勿論使えないので、寝る時は持参の寝袋のつもりである。


 住む場所は、市で用意してくれていたのだが、リフォームを実況するなら住み込んでやったほうが盛り上がるだろうと思い、乙女がしばらくここに住むことを申し出たのだ。


 萩森は、青い顔で必死に止めたが、乙女は意に介さなかった。


 〝せめて今日だけでも旅館に泊まってくれ〟と萩森は、ほとんど泣きそうになりながら乙女に頼んだのだが、その様子が面白かったので本日からここで寝泊まりすることにしたのである。


「……はぁっ? 何言ってんのあんた? 許すわけないでしょ、そんなの」


 久しぶりに連絡を取った旧友は、ノートPCのモニタ越しにドスの利いた声で乙女にそう言った。かなり苛立っている。


「いやさ~、一姫が怒るのもわかんだけどさ~」


 乙女はなるべく相手を刺激しないようにと心がけて水前寺(すいぜんじ)一姫(いちひめ)に話しかけるのだが、


「あんな別れ方して、そっちから連絡してきたから反省してんのかと思ったら……。それで? 今何やってるって? 地方振興おたすけし隊?」


 一姫はさも小馬鹿にしたように鼻を鳴らす。


 ビデオ通話なので、向こうの表情がよくわかった。ムカッ腹が立った乙女は、普通の電話にすれば良かった、と後悔する。


「てめー言い方気をつけろよ。みんな真面目にやってんだからな」


 本当にみんなが真面目にやっているかどうかなど乙女に知る由はないが、一括りにバカにされていい気がしなかったのは本当であった。


「そのなんとか隊をバカにしてんじゃないわよ。あんたをバカにしてんの。あんた個人をバカにしてんのよ」


 重ねて嫌みを言われ、乙女は思わず我を忘れそうになったが、グッとこらえる。


 別に一姫に協力して貰わなくてもかまわないといえばかまわないのだが、協力して貰ったほうが効果が高いのは確実なのだ。


「……まあ、その、ケンカ別れしたのにこんな頼み事すんのは虫がいいとは思ってるよ。一つ貸しってことでさ。なんかあったらあたしもお前に協力してやるよ。だからお願い」


 乙女がこう言うと、ノートPCの画面に映っている一姫は〝へえ〟という顔をした。

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