7.日常の風景
ぎりぎり今日のうちに投稿することが出来たか……
ようやく外の暗さが明るくなり、小鳥たちの囀りが聞こえてくる時間帯。
もとの世界の時間で言えば早朝の5時くらいか。
そんな時間に自分の主の部屋に入るメイドが一人。
「一也様、起きてください」
いつもなら起きる一也なのであるが、如何せん昨日、ベットに眠りに就いたのは2時間ほど前。もはや就寝ではなく仮眠の域。
しかも、昨日はいきなり召喚されたなどの心労が溜まるイベントが目白押しだったため、未だに深い眠りについていた。
「一也様、起きてください」
メイド――アイリは一也の肩をゆさゆさと揺さぶる。
アイリの顔には疲労の色はなく、2時間、いや1時間だけ寝ると疲れはなくなるようだ。流石に毎日それが続くと体が壊れるだろうが、一日くらいなら問題ない。
「はぁ……こうなったら奥の手を使うしかありませんね」
アイリは溜息をつきながら一也の顔に自分の顔を近づける。
それは傍から見るとキスをするように見えて―――
「ふぅ~」
「ひぅ!?」
耳に吐息を吹きかけた。
その効果は抜群で、一度吹きかけると一也は起きたようだ。
「おはようございます、一也様」
「へっ!? ……アイリさんだったか……」
ふぅっ、と溜息を吐きながら挨拶する。
「おはようございます。けど耳に息を吹きかけるのはやめてくれないか? 心臓に悪い……」
「揺さぶっても眼を覚ましてくれなかったので」
クスクスと微笑みながらアイリさんは答える。
「そ、そうか……。まぁ着替えるんで部屋の外で待っていてくれるか?」
頭もやっと動いてきたので服を着替えて鍛錬に向かうとする。
し かしいつまで経ってもアイリさんは部屋から出ていかない。
「アイリさん?」
「お手伝いさせていただきます」
「いやいやいや!」
何言ってんだよ! めちゃくちゃ焦ったぞ。
「いや、服を着替えるくらい一人で出来るから! てか出来なかったら問題だから!」
「そう言われましても……この世界では当り前のことですよ? メイドがご主人様の着替えを手伝うことくらい……」
そんな顔で言われても無理なものは無理なんです。
「駄目だ! 部屋の外で待っていてくれ」
俺は無理やりアイリさんを外に押しやると一息ついた。
「はぁ……アイリさんの考えがわからん……」
もう一度息を吐き、着替えを開始するのであった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「待たせたな」
着替えをし、自分の刀である影桜を腰に差して部屋から出る。
そこには少し怒っているアイリさんが待っていた。
「待ってはいませんよ。待っては」
ネチネチとさっきの行動を咎めてくるアイリさん。
「そう怒らないでくれ。俺の世界ではそんなことは一般常識じゃないから恥ずかしいんだよ」
「しかし……」
言い淀むアイリさんを見ながら一言。
「他のことはアイリさんに頼むからこれだけ勘弁してくれ」
「はぁ、わかりました」
しぶしぶながら納得してくれる。
これで納得してくれなかったらどうしようかと思った。
「んじゃさっそく鍛錬に行くか。どこか誰にも見つからないで鍛錬出来る所はあるか?」
あまり人には鍛錬しているところを見られたくない。
流派のこともあるがただ俺が見られることを嫌っているだけである。
何か見られてると集中力が欠けるんだよな。まぁアイリさんは仕方ないとして。
「そうですね……なら、城を出て城下町を少し抜ければ森があります。そこなら誰にも見られないかと……」
「ふむ」
森か……
木が邪魔な気もするが、どこか開けた場所もあるだろう。
「ならそこに案内してくれ」
「かしこまりました」
アイリさんの先導のもと、俺達は森へと向かった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「ここが城下町か……」
森に辿り着くまでに横切る城下町に辿り着いた。
昨日は城から一歩も外に出なかったので初めて見る。
「予想以上栄えてるな。まだ早朝だぞ?」
まだ朝日が完全に上りきってないというのに、商人であろう人達などは、皆頑張って賞品の陳列をしたりしている。
「そうですね。この城下町――ルーテンベルク城下町はこの国一番の城下町で、一番活気がある町だと思いますよ?」
「へぇ……」
俺は周りを見渡す。
どんな人間の眼にもやる気が見られている。
「いいところだな」
「はい」
それ以降は口数が少なくなり、無言で歩いていく。
「こんな人達――いやこんな人達だからこそ“救帝者”に縋りたくなるのだろうか」
「一也様?」
「いや、何でもない」
俺はアイリさんが何かを聞いてくるが何でもないと答えるだけに留めた。
力のない人間は力のある人間に縋りたくなる……か。
昔聞いた言葉が頭の中を駆け巡る。
それでも俺は……
自分勝手だと思われてもいい。ただ、自分の信条を貫くだけだ……
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「なかなか良い場所だな」
城下町を抜けた俺達は森へと辿り着いた。
そこから森の中へと入り、開けた場所を発見した。
「ありがとうございます」
「んじゃアイリさんは少し離れた場所でいてくれ」
そう言い残し、俺は開けた場所の真ん中に歩いていく。
手に持つものは自分の愛刀である影桜のみ。それ以外はアイリさんが管理してくれる。
「それじゃ始めるか」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
~side アイリ~
私は夢でも見ているのでしょうか。
確かに、ロイドさんと戦っている一也様を見ました。その時でさえ、私は常人離れした肉体をお持ちの方だと思いました。
しかし、それでさえ―――
「―――天凱流 攻式弐之型 烈火」
あの時でさえ、一也様は本気ではなかったのです。
流派と技の名を言った後の一也様は一段と私の想像の遥か上を行き、一也様の武器が幾重にも分身しているように見え、体は残像を残すほどの速さで移動していきます。
どうしたらあのような強さを手に入れることが出来たのでしょう。
どうしたらあのような心を手に入れることが出来たのでしょう。
私は弱い……
一也様はそんなことを言わずに、私に向かって「アイリさんは強いさ」と言ってくれるでしょう。
それでも私は弱いんです……
嫌なことから逃げだした私は弱いんですよ、一也様……
そんな私を見て貴方はどう思うでしょう。
軽蔑? 慰め?
それとも他の言葉を掛けてくれるんでしょうか。
それでもいつか―――
いつか私も一也様の隣に立てる日が来るんでしょうか。
いつか―――
~side out~
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
さて……
俺は息を整え影桜を抜刀する。
抜刀した後は正眼の構えで停止する。
まずはどのくらいの気の強化が出来るか調べるか……
まず力を抜き息を吸い込み空気を取り込む。吸い込んだ空気を丹田まで送り届けるように体の中に行き渡らせ、丹田に力を込め、そこから力を取りだすように力を均等に込める。
やっぱり総量、密度ともに上がってるな……
前までならこれくらいじゃあまり気が発生しなかったのに、今では軽く流しただけで前の4割くらいの気が発生している。
一度最高の量を確認するか……
そこから力を完全に解放しながら、丹田に力を込める。その時に一也から気が溢れだし、周りの眼に見えるくらいの気が発生した。
前の3倍というところか……
前の世界でさえ一番多く気の量を持っていたのに、こちらに来てその3倍の量を手に入れてしまった。
まぁいいんだけどな……
んじゃまぁ前の最大くらいの量、密度に下げてと……
気の量を調節しながら、正眼に構えていたのを上段に構える。
一閃。
そこから下段から切り上げ、体を捻り切り払い、体を回転させ、その遠心力薙ぎ払いと続け、その速度を上げていく。
その速度は残像を残し、剣筋は数多の剣に分裂させていた。
特に問題はなし…か。
体の調子を確認してから一旦体を停止させる。
一度何かの型を練習するか?
出来るだけ他の人間に型は見せたくないのだが、一つくらいなら問題ないだろう。
今度からは一人で来るようにしよう。アイリさんには悪いが、剣の鍛錬だけはあまり見られたくないしな。
そのかわりと言っては何だが、魔法の鍛錬にはついてきてもらって手伝ってもらうとするかな。
そんなことを考えながら正眼より少し高い位置で剣を構える。
―――天凱流 攻式弐之型 烈火
烈火――相手に反撃の暇を与えないように連続して斬りかかる技だ。これは爺さんが最も得意としていた技でもあり、爺さんの烈火は容赦なかった。烈火の如く相手に斬りかかり、連続して攻撃する。体の重心移動などが難しい技であるが、習得すればこれほど心強いものはない。
それから太陽が真上に来る少し前まで鍛錬は続いた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「お疲れ様です」
そう声を掛けられ、タオルと水筒のようなものを渡される。
「ん、ありがとう」
俺は受け取り、タオルで汗を拭いていく。
その後、水筒のようなものを開けると冷たい水が入っていた。
「ふぅ……久しぶりにこんなに動いたな」
「そうなんですか?」
「あぁ。前の世界じゃここまで動く必要がなかったからな」
喋りにながら水を口に含む。
冷たい水が喉を通り、乾きを潤してくれる。
「それにしても流石ですね。あのような動きを出来る人物なんてこの世界にはいませんよ?」
「それ昨日リーク爺さんにも言われたな」
苦笑しながらタオルと水筒のようなものを返す。
アイリさんはそれを受け取り、カバンに仕舞った。
「それはそうです。どう見てもギルドランクで言えばSSS――いえ、Mクラスと言っても何も問題はないと思いますよ」
「そうかな?」
「そうです」
アイリさんは熱心に俺のこと称賛してくれた。
「まぁギルドの方は明日にでも行くさ。昼からは魔法の練習をしなくちゃならんしな」
「ならもう城の方に戻りますか? そろそろお昼の時間ですけど」
「そうだな。んじゃ、戻ろうか」
「はい」
二人は立ちあがり、森から去って行った。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「どこに行ってたんですかっ!? 心配しましたよ!」
「うわっ!?」
城に戻るといきなりレイラに詰め寄られた。
しかも首をユサユサと揺らせれて気持ち悪い。
「ちょ、は、離して」
「どこに行ってたんですか!?」
「えっと、森に行って鍛錬をしてました!」
早く答えないと吐きそうになるのでとっとと答えてしまう。
「何で私に言ってくれなかったんですか!」
「えっと、出て行ったのが朝開けて間もない時間だったんで寝てると思って声をかけませんでした!」
どっちにしろ付いてきたいと言ってもどうにかして断ってはいたが。
「むぅ~!」
「あまり無茶を言ってはなりませんよ、レイラ様?」
「あれ、アイリさん?」
俺が無茶ぶりされているところに荷物を仕舞ってきたであろうアイリさんが助けてくれた。
「そう無茶を言っては駄目ですよ? 一也様が困っています」
「あ…ごめんなさい」
「いや、かまわないさ」
しゅん、となるレイラを見て少し罪悪感が募る。
「そういえば何でアイリさんが? メイド長の仕事はどうしたんですか?」
メイド長?
「それなら昨日止めました。今は一也さん専属のメイドです」
「へっ?」
アイリさんの言葉を聞きレイラは眼が点になる。
「どういう事ですか?」
「言葉通りの意味ですが?」
「な、何で……?」
いきなり俺がはぶられながら二人だけで会話が進んでいく。
「それは私が一也様に仕えたいと思ったからですが?」
「そんな!」
俺は蚊帳の外に放り出されて暇になる。
昼飯でも食いに行くか。俺は二人を置いて昨日祝宴が開かれた場所に足を運んだ。
二人なら後から来るだろ……
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
二人を置いて来て祝宴が開かれた場所(食堂でいいのか?)に辿り着くと、おっさんと爺さんが二人で昼食を取っていた。
「おっさんと爺さんだけか?」
二人に声を掛け、調理場にいるコックにご飯を頼む。そして席に着き、二人の話に入りこむ。
「そうじゃな。して、お主は一人か? 確かレイラが騒いでおったはずじゃが……」
「あぁ、レイラなら何かアイリさんと話してるよ。それより、おっさん! いきなりアイリさんに専属のメイドになるって言われて驚いたんだが」
俺は昨日の最後の事件であったことをおっさんに話す。
「それなら俺も驚いたさ。なんせいきなりメイド長に『メイド長を本日を以て止めさせていただきます』何て言われたからな。まぁ理由を聞いたら一也関係で了承したがな」
クツクツと笑いながら俺を見るおっさん。
「俺もアイリさんほどの人が専属で付いてくれるのはうれしいんだが、給金を払う金がない。てことで初めのうちだけくれたらいいから金をくれ。明日からギルドに行って仕事するからそれまでに少しの資金がなかったらやっていけん」
「いいぞ? どちらにしても学園の費用だってこちらが用意するし、一也にはそれ以上に働いてもらわないといけないから金くらいは用意するさ」
「ふむ、なら儂が紹介状でも書こうかの。儂の紹介状があればAランクから仕事が始められるしの」
気前よく言ってくれるおっさんと爺さん。
資金の方は当然かもしれないが紹介状の方はいいのか?
「別に問題はないじゃろ。一也ならSSSでも別段問題ないじゃろうしの」
「助かる。ならギルドに行って仕事はしてくるか。こっちの情報や実戦での戦闘には慣れておかなくちゃいけないし、ギルドで有名になっていたらそれだけで目的達成に近くなるだろ?」
「そうだな。それでもアイリの給金は俺から払っておこう」
「そうか?」
それは俺が払おうと思っていたんだが。
「給金を払うよりも何か感謝を込めて贈り物でも送ってやれ。そっちの方がアイリもうれしいだろう」
「そうなのか?」
「あぁ」
「一也は女心がわかっておらんのぅ」
わからんなぁ。
「もし余裕があるならレイラにもやってほしいがな」
「ふむ、まぁ考えておこうか」
「それがいい」
そんな雑談をしていると料理が運ばれてくる。
そしていざ手をつけようとすると、
「一也さんっ!」
「今度は何だ?」
せっかく食べようと思ったのに……
「お昼の魔法の訓練は私も参加しますからね!?」
「……アイリさん?」
少しジト目でアイリさんを見る。
「すいません……」
「はぁ…まぁいいけど」
溜息をつきながら料理を食べる。
うまっ!
「早く食べていきましょう!」
「ちょ、ゆっくり食わせろ!」
そんな昼食でした。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
~side ラングル、クレウィス~
「一也はもてるのぉ~」
急かされて料理を食べさせられ、なおかつ引っ張られていった一也を見てクレウィスは呟く。
「そうだな。まぁ問題は一也が鈍感だと言う事だろう」
クツクツと笑いながら酒を飲む。
昼から酒を飲むのは駄目なのだが、今日くらいはいいだろう。
「しかもあのアイリとレイラ二人一緒にとは驚きだな」
「じゃな」
アイリは城内では冷静でクールな印象を持ち、どんな人間にも平等に接していたのだが浮いた話は一つもなかった。
反対に娘のレイラは男性が苦手でよく相談されることもあった。
「そんな二人を同時に攻略するとは末恐ろしいのぉ」
「まぁ本人はそんなことには全然気づいてないだろうがな」
「ふぉっふぉっふぉ」
~side out~
最近SAOを読んでデスゲームが書きたくなってきました(オィッ
まぁ時間の会い間にでもちょくちょく書いていくかな。構成が半分くらい出来たし。
そのわりにこの物語の構成は一つもないwww
てか作る気がなく、作者の気分で制作されているってことが問題なのか?www