2.模擬戦
二か月振りの投稿w
明日から三連休なので少しだけ書いてみた。掛かった時間は二時間と超特急で仕上げたので駄作になっていると思いますが、暇な方は読んでください。
辿り着いた練習場は思った以上に広く、様々な器具なども置かれていた。流石に城の錬武場とまではいかないが、数十人が魔法を使ってもなんら問題にならないほどその場所は広かった。
俺はこの授業でどのようなことをするのかレイアに尋ねる。
大体の内容を聞き、そこから自分がどれくらいの実力を出せばあまり問題にならないかを考えていく。クラスの反応からすると、魔力量だけならレイアが間違いなくこのクラスでトップだろう。いや、一人受けていなかった人間が一人――
「確かクレアって言ったっけ……」
彼女がどれほどのものなのかはわからないが、多分俺の予測ではあるが、彼女も俺と同じであまり実力を見せたがっていないんじゃないだろうか。そう考えれば辻褄が合う。まぁそれも今は関係ないことと言うことで脇に置いておく。
ということは、最高でもレイアクラス。目立ちたくはないのでフィルより下というところが安全圏だろうか。
様々なことを思考しながら、平行してレイア達との会話も楽しむ。
しばらくすると担当の教師もやって来てその会話も終了することとなった。
「皆集まってるか~?」
「この授業って担任が担当かよ……」
まさか担当教師が俺達のクラス担任であるゼクスらしい。
まぁ一応中々の使い手ということは理解しているが、それでも普段のやる気のない声などで本当に大丈夫かと疑ってしまう。
ゼクスはやる気がなさそうに欠伸をしながら出席生徒の人数を数えあげていく。点呼でもするのかと思えば適当に自分で数えているし。
「あれでもこの学園一の魔法教師なんですけどね」
「そうと思いたくないな……」
「しかし一也様。あの方には隙というものが存在していないのでは?」
アイリさんは思った以上に“眼”がいいらしい。
戦闘系統は素人と思ったいたけど、まさかそれを見抜けるほどとは思ってもいなかった。
「へぇ、よくわかったな」
俺は素直に感心しながらアイリさんに顔を向けた。
アイリさんは「恐縮です」と言い、俺に一礼し、そしてまた普段通りに戻る。
「よし、全員集まってるな」
どうやら生徒の人数の確認を終えたらしい。
手に持つ出席簿らしきものを叩きながらゼクスは声を掛ける。
「今日の授業は今学期初めてということで……模擬戦をするぞ~」
「「「「「えー!?」」」」」
ゼクスの言葉にクラスの大半は驚いたような声を上げる。
どうしたのかと思いレイアに尋ねようとしたところ、御丁寧にフィルが教えてくれた。
「去年までは授業で模擬戦をすることなんてなかったんですよ」
「そうなのか?」
「はい。やっても精々魔法の押し合いというところです」
「押し合い?」
「えっと、同じ魔法を互いに使って、それで押し合うんです」
「なるほど……」
つまり力比べと言う訳か。
でもそれだと単純に魔法量が多い方が勝つんじゃないか、って。そう言えば、この世界の魔法は威力がほぼ均一だったな。ということは制御面などの勝負ということになるのか。
でもそう言えば爺さんの魔法の威力は俺とほど遜色なかった気もするけど。最強クラスにもなるとそうなるもんなのかな?
「あー、五月蠅い五月蠅い。もうこれは決定事項だ、グダグダ抜かすな」
「もう既に面倒臭がってるのかよ……」
◇◆◇◆◇◆◇
結局グダグダ言っていた生徒達はゼクスの成績下げるぞとの呟きに屈して模擬戦をすることを無理矢理納得していた。それにしても最終手段がそれとは酷い。
模擬戦の順番は今朝測った魔力量の多さの低い順からペアを組まされるようで、レイアはフィルとするらしい。ちなみに俺は測っていないので、同じく測っていなかった彼女――クレアとするらしい。順番は最後とのこと。
そうなると、彼女がどこまで戦えるのかと考えてしまう。流石に爺さん達と同等ということはあり得ないだろうが、実力を見せたがらない奴は得てしてその人物が持つ実力は高いというもの。雰囲気は冷たく、孤高の一匹狼というところか。予測だが、レイア達に劣らない程の実力は持っていると俺は思う。
そんなことを考えている最中、模擬戦は消化されていく。
現在は半分が終わったところで、やはり俺からすれば少しつまらないというところ。いや、これではレイアやフィルも同じようなものか。この年齢なら十分なのだろうが、爺さん達と戦った俺やそんな人に教えを請うているレイア、それと同格のフィルなどにとっては些か物足りない。
飛び交う魔法も威力制限されていて、担任が創った結界の中では大分と引き下げられているようだ。しかしこの結界、中々応用が効きそうな魔法だ。使い方を変えれば相手の魔法を使用不可まで落とせるかもしれない。
「でもこんな魔法を使うんなら、俺が爺さんとやり合った時みたいに魔法球を使った方が安全じゃないのか?」
「それはそうですけど。多分、実戦の空気なんかを知ってほしいんじゃないでしょうか?」
「そういう捉え方もあるのか」
確かに実戦では練習通りに身体が動かないことなんて多々あるからな。それに自分の命が掛かっていると言うのならそれだけ本気で動く事になるだろうし。
しかしあの担任がそこまで考えているとは思い辛い。ただ魔法球を用意するのが面倒で代用としてこの魔法を使いましたと言った方が納得出来る。
そんなことを思っていると、また一つの組の模擬戦が終了した。
この模擬戦のルールは、ある一定以上の魔法を放ち、それを相手に直撃されることで勝ちを得ることが出来る。戦闘時間は無制限。使用魔法も上位までは使用可能で古代クラスは不可。しかしこの年齢で上位はおろか古代を使える人間なんてそうそういないし、今までの試合だとよくて中級クラスまでしか使われていない。中には上級まで使える人材もいるのだろうが、詠唱の関係もあって早々と使えないのだろう。
ここまでの試合を振り返ってみると、一番多かった戦法が風の下位魔法の連発。これで決着がつくことが半分くらいを占めていた。
確かに風の魔法は視認が不可能で避け辛いという点もあり、初めて魔法を使って戦闘をする人間には有効な戦法だろう。
しかし風の魔法は殺傷能力が高いのも事実。今この場では結界によってダメージが大分と引き下げられ、大きくても切り傷までだが、もしこれが現実での戦闘ならば、それを使い相手を傷つけるということの意味するところは相手を殺すということ。そこまで理解して風の魔法を使用している人間は本当に数少ないだろう。実際、風の魔法が使用される度に担任のゼクスは顔を顰めている。
「次は――クライトリヒとスカールズのペアは準備しろよ~」
「はい。それでは一也さん、少し行ってきますね」
「あぁ、二人とも怪我だけはするなよ」
俺はそう言って二人を送り出す。
クラスの人間も二人の試合には興味津津だ。なんせ二人はクラス内の魔法量ナンバー1とナンバー2だからな。
「どちらが勝つと思いますか?」
「君は――」
俺に話しかけてきたのは、孤高の雰囲気を漂わせていた一人の少女。
「クレア・ルドラフ・リュクセンスです。以後お見知りおきを」
「御丁寧に。俺は一也 御薙だ。それにしても、何で態々俺に話しかけてきたんだ? 今まであれほど他人と関わるのは嫌そうな雰囲気を漂わせていたっていうのに」
少し警戒気味のアイリさんがいるので、俺は大丈夫の意味を込めて気楽に話しかける。
「そう……ですね。端的に言えば、今まではあまり興味を持てる人物がいなかったからでしょうか」
「レイラとかは?」
「確かに彼女には少し興味はありますが、彼女は王族でしょう? 彼女と関わると何かと面倒事に巻き込まれそうなので」
「ふぅん……」
どうやら想像したいたような人物ではなかったようだ。
もっと堅苦しい、孤高を貫くようなものと想像していたが、彼女は違う。興味があるものには普通に構う、好き嫌いが激しい子供のよう。
「それ以上にあなたには興味を持っているのです。王族に関わり、あまつさえその王族と親しげに話す。そんなあなたに」
「……そこまで美少女に興味を持って貰えるのは光栄だが、俺がそこまで興味を持たれる人間じゃないぞ?」
何て言うか、彼女はアイリさんに似ているような気がする。
「それはすぐにわかることです。ま、今は彼女達の試合を見ましょうか。二人ともこの学園ではトップクラスの実力保持者ですし、中々興味深いです」
「……そうだな」
◇◆◇◆◇◆◇
「氷の精霊よ――」
「火の精霊よ――」
二人は遠く離れ、同じように詠唱に入る。
片や氷で、片や火。互いに反発する属性を選択する。
「煌く欠片となり渦巻け その力を以て敵を飲み込め!“ダイヤモンドダスト”!」
「爆発は力なり 力は爆発なり 故に粉砕しろ 彼方までを!“ナパームブレス”!」
荒れ狂う吹雪と爆発する炎群が両者の中央で激突する。
威力制限をしているとはいえ、あれを直撃貰えばそのまま天国に召されるかもしれないほど、あの魔法には力が込められていた。
二人は互いの魔法が相打ちになることを予想していて、既に次の詠唱に入っていた。
「風の精霊よ その力で我の風と同化させよ!“シルフィスウィング”!」
レイラがその魔法を唱えた瞬間、急激にその速度は上がる。
そうやら速度倍増の魔法らしい。レイラはその魔法を使い一瞬でフィルの胸元まで入り込もうとする。が、フィルは慌てずにそれに対処を入れた。
その行動を読んでいたのか、入り込まれる二歩手前で詠唱は完了し、魔法は発現される。
「“アースガード”!」
突如発生する岩の壁にレイラはブチ破る手段は持ち合わせていない。
瞬間に身を捻り、そのまま宙に跳躍してやり過ごす。その間にも詠唱をしているところを見ると流石としか言いようがない。
「流石ですね……。両者とも間違いなく学園トップクラスです」
「……君は」
「クレアで結構ですよ」
「そうか。ならクレアはどれくらい強いんだ? 俺の予想だとレイアを抜かすとまでは言わないが、それでも同格だと思っているけど」
俺はそうクレアに問いながらレイラ達の勝負にも眼をやる。
下位の魔法による手数勝負。
レイラの速度倍増の魔法の効果が切れたのか、今は元の速さしか出ていない。
「それは光栄ですね」
そう言うだけでクレアは何も零さない。
下手すると戦闘面だけに限って言えばレイラ達よりも上かもしれない。
完全に感情を制御出来ている。これほど面倒な相手はこの世界にも少ないだろう。
「“リュミエールストライク”!」
「“ボルカニックレイブ”!」
と、ここまで話し込んでいるとレイラとフィルの戦闘にも決着が着いたようだ。
流石に王家専用の光魔法には威力負けするらしい。それに元々魔法量から見ればフィルの方が圧倒的に不利でもあった。
それ以上にレイラ相手にあそこまで戦えるフィルが凄いと俺は思う。
「お疲れ、二人とも」
「ありがとうございます、って? クレアさん?」
「お疲れさまです、レイラさん、フィルファールさん」
俺の横に居たクレアにレイラは驚いているようだった。
そんな行動に目もくれず、クレアは淡々と挨拶を返す。
「さ、次は私達の番のようです」
「んじゃ少し行ってくるかね」
最後にもう一度声を掛け、俺はクレアと一緒に練習場の中央まで足を進める。
ゼクスが声を掛けるまでもなく、二人は所定の位置に着いた。
「タクッ、お前達は少し早いんだよ。俺を休ませるっていう考えはないのか?」
「あんたは少し怠け過ぎなだけだろう?」
「そうですよ。教師なんですからもっとシャキっとしてください」
「あーあー聞こえない聞こえない。んじゃ準備はいいか?」
喚いた後一点、普段とは違い真面目な顔に変化する。
いつもそれくらい真面目なら俺も考え直すと言うのに。
「私はいつでも」
「同じく」
二人は同じ返答を返し、そしてゼクスはその返答に頷いた。
さて、どこまで出来るのか。
あまり手の打ちも晒すのは嫌だが、彼女相手ならそうも言っていられないだろう。既に彼女の周りには魔力の素が集まっている。量的には中位を発動出来るくらいか。
「なら――初めッ!」
声が掛かった瞬間、俺は彼女の魔法に襲われた。
次の投稿は12月に入ってからくらい。
11月末に公募の試験があるので、それさえ受かれば勝ちなんですよね。
一応センターのテストは七割取れるようになってきたから大分と自信はついて着てるが……私大に通用するのか?