表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
召喚されたッ!?  作者: Sir.G
第1章 王国編
19/26

16.死闘・前篇

久しぶりの投稿。

一月に一回投稿するとか言っておきながらこんなことになって本当に申し訳ない。

 その場に立つのは四人。


 一人は女性。ダークブラウンの髪を持ち、眼鏡の奥に潜む鋭利な瞳で前を見つめる。

 一人は男性。腰に剣を下げ、瞳には闘気を滾らせている。

 一人は老人。藍色のローブを身に纏い、その瞳を閉じ、何かを考えている。

 そして最後の一人は少年。この場に一番そぐわない、しかしその瞳にあるものは絶対的な自信以外は存在していない。


 そこにいる四人は誰一人として声を発しない。それはこの場には誰も存在しないのではないかというほどの静寂。

 しかし、その静寂も一人の声によって打ち破られる。


「これより、“最後の救帝者”一也 御薙と魔導騎士隊隊長“氷結姫”リーネ・ボルネア・ルイス、騎士団団長“暴帝”リーク・セルバネス・ライデン、魔導隊隊長“魔神”クレウィス・アスカルド・ペリオンとの決別試合を開始するッ!」

「「「「「ワァァァァァァァアアアアアアアアッ!」」」」」


 一人の男性の声によって、膨大な観客の声がその場を震わせる。


「凄い歓声じゃのぅ」

「だな。……にしてもあんたらの二つ名物騒すぎじゃないか? リーネさんはまだしも、“魔神”と“暴帝”ってなんだよ」


 俺は先ほどの聞いた二つ名を頭の中で反芻する。

 まず“魔神”。……どう聞いても悪いイメージしか思い浮かばない。

 もう一つの“暴帝”。こっちはまだなんとかって感じだな。日本の有名な神、素戔男尊とかが暴帝のイメージがあるし。


「これこれ。儂の“魔神”の二つ名の意味は魔族の神という意味じゃないんじゃぞ?」

「なら、なんなんだ?」

「これは“魔導を極めし者”という意味での“魔神”じゃ」

「あぁ、なるほどね」


 それなら納得出来る。

 そういう意味での“魔神”なら悪いイメージはないな。


「さてルールを説明する。ルールは居たってシンプルだ。相手を殺さなければ基本的に問題ない。ただそこに一也が提示したルールが加わる」


 おっさんがこれから始まる決闘のルールを街の人達に伝えていく。朗々と紡がれる声は、全ての街の人達の耳へと入っていった。


「それはリーク・セルバネス・ライデン騎士団長と闘う時は魔法の使用を禁じ、クレウィス・アスカルド・ペリオン魔導隊長と闘う時は武器の使用を禁ずるというものだ。リーネ・ボルネア・ルイス魔導騎士隊長と闘う時については特にはないがな」

「……何か私の時にルールを追加してくれてもよかったんじゃないかしら? これだと何か不公平に感じますよ」

「しょうがないだろ。リーネさんは魔法も武器も使えるから俺が使用しないっていうのも変だし」


 やはりリーネさんは異論を唱えるが、こればかりは仕方がないということで諦めて貰うしかない。

 まぁ無詠唱はなしにする方向でいいかな?

 レイラにもあまり無詠唱だと目立ち過ぎるから、適当な詠唱をしておけって言われてるし。詠唱をしなくても唱えられる俺ではあるけど、適当にその魔法のイメージを詠唱すればそれが想像するのを助ける役割にもなるし、中々便利でもある。


「決別試合の順番は、最初にリーネ・ボルネア・ルイス魔導騎士隊長と、次にリーク・セルバネス・ライデン騎士団長、そして最後がクレウィス・アスカルド・ペリオン魔導隊長という順番で行う」


 おっさんの説明ももうすぐ終わる。

 それから始まる闘い。この世界に来て初めての自分の意思で行う闘争。


「では試合の準備に取り掛かる!」



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「一也さん……」

「一也様……」

「二人とも、大丈夫か?」


 試合をするのは俺だと言うのに、何故かレイラとアイリさんの方が焦燥している。

 てか俺はそこまで焦燥――てか、疲れてもないよ? 大体疲れてたらこれから行う戦闘も出来ないし?


「大丈夫です、と言えたらいいですが……」

「やっぱり不安です……」

「――約束するさ」


 俺は二人を優しく抱きしめる。

 この二人は優しすぎる。俺にはもったいないほどに。ただの少年に、これだけの優しさを与えてくれるのだから。


「あっ……」

「一也様……」

「絶対に無事に帰ってくる。だから二人は笑って待っててくれ。んで、終わったら皆でパーティーでも開こうぜ? 夜通しで騒いだりしてな」


 最後に二人を撫でてから、俺は身体を離す。

 少しだけもったいない感じもしたが、あまりやりすぎたら怒られそうだし。


「だから心配なんかしなくても大丈夫だ。な?」

「……はい。私は笑って待っていたらいいんですね? 約束ですよ?」

「私も待っています。だから……早く帰ってきてください」

「了解♪」


 最後にはちゃんと二人は笑ってくれる。

 だから俺は何の心残りもなく、歩き出す。待っていてくれる人が居るんだ。だから何も心配することはない。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 さっきまで居た街の人達は、今では遠く離れた場所に居る。

 この場所の風景は魔法で映し出しているらしい。だから遠くに離れていようと、この闘いははっきりと見える。まぁ目視するレベルと同じな為、闘いのスピードに追いつけないこともあるだろうけど。


「まずは私ですね……」

「最初の関門か」


 眼の前に対峙する一人の女性――リーネ・ボルネア・ルイス魔導騎士隊長。

 いつもキリッと前を向く瞳は、今では俺だけを映しだす。冷静であろうとしている中、滾る闘志も見え隠れしている。


「後の二人には流石に劣るかも知れないけど―――」

「ッ……」


 闘気が膨れ上がる。

 正直、この間戦った色王の一角より大きい。相手が人間だからそう思うのかも知れないし、本当に大きいのかも知れない。

 けど……


「魔導騎士隊隊長“氷結姫”リーネ・ボルネア・ルイスが第一陣を相手をしましょう!」


 そんなものは関係ない!

 ただ全身全霊を以て打ち倒すのみッ!


「これより決別試合を開始するッ! 両者共、準備はいいなッ!?」

「はいッ!」

「あぁッ!」


 俺とリーネさんの声が錬武場に響き渡った。


「なら決別試合第一試合、開始ッ!」



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「まず小手調べからよッ!」


 両者の間には結構な距離。

 今の俺なら気で強化すれば数秒で踏み込める距離ではあるが、これは決別試合。

 お互いが全力を出すことに意味があるので、わざとリーネさんに合わせる。


「炎の精霊よ その身を焦がす業火を以て 敵を焼き滅ぼせ!“ヘルフレイム”!」


 前方から十メートルくらいの大きさの火柱が飛んでくる。

 俺はそれに対して慌てず冷静に対処する。火に対するのは水だよな、やっぱり。


「清水流れし数多の川 清めて洗い流せ!“水の氾濫”!」


 俺は何もない地面から大量の水を作りだし、眼前に迫っていた炎柱を消しにかかる。

 それは互いに拮抗し、どちらも消滅を言う結果に終わる。すかさず俺は第二波の準備に掛かる。


「迸れ雷神 打ち出せ轟音 焼きつくせ雷鳴!“轟雷の響き”!」

「ッ! 大地の精霊よ 豊穣なるその身で我を守りたまえ!“アースシールド”!」


 俺が放った雷は、リーネさんが咄嗟に作りだした土の盾に防がれた。

 土は雷を通さなかったが、その速度により発生した衝撃までは防ぎきれない。盾はその役目を終えてまた土に戻るが、厄介な物を残して行ってくれた。


(土埃で視界が塞がったか……)


 間違いなくこの瞬間に仕掛けてくる。

 それは魔法かそれとも―――


 ガキンッ!


 俺は殺気のした右側に影桜を掲げる。掲げると同時に金属音。


「―――今度は接近戦ですか?」

「リーク様すら及ばないというあなたの剣技には退屈かも知れないけど、少しの間は付き合ってもらうわよ?」


 リーネさんの武器は長剣。

 何時もの姿からは考えられないくらいの力が、俺を襲いかかる。


「ハァッ!」

「フッ!」


 魔法による身体能力の強化か。中々の高速戦闘を展開してくる。まだまだ問題はないと言えばないが、それでも緊張は解けない。それを証明にリーネさんが魔法を放つ。


「“フレアレイン”!」

「ッ! この距離で無詠唱とはエグイなッ!」


 俺は高速で迫り来る炎の矢を斬り払う。

 一斬り二斬り三斬りと。刀を振る速度が早すぎで、一時的に残像が残る。


「それを簡単に切り捨てるあなたに言われたくないわねッ!」


 効かなかったと見るや否や、またもや接近戦を仕掛けてくる。斬り上げ、刺突、斬り払い。リーネさんの剣戟は一種の舞いのようにも見える。


「流石隊長格を務めるだけはあるッ!」

「お褒め預かり恐悦至極ッ!」


 さらに俺達の剣戟は激化する。

 俺が斬り上げれば、リーネさんは切り捨てる袈裟斬りで激突。薙ぎ払いを行えば、同じく薙ぎ払い。


「ハァッ!」

「シッ!」


 両者ともに譲らない。相手より速く、相手よりも鋭く。その想いを斬撃に乗せて放つ。

 一也は自分ではなく、この世界の人々に向けて。リーネは自分の忠誠を誓った主に、そしてその主が信頼した少年に向かって。


「埒が明かないわねッ!」

「俺も残り二人も居るからあまり体力は消費したくないんだがなッ!」

「ならこれでどうかしらッ!?」


 風の魔法だろうか。一気にリーネさんとの距離が開けた。

 最初に向かいあった時よりも距離は開けている。距離を取ったと言うことは魔法の詠唱か?

 どうやら当たりのようだ。朗々と紡がれる詠唱が風に乗って俺の耳に入ってくる。


「焔の精霊神よ さぁ焦がせ焦がせ焦がせ 溶けるような業火と劫火で敵を滅ぼせ 消し去るのは眼前の ただ一人のみ!“ボルカニックレイブ”!」


 どうやら最大魔法の類らしい。

 先ほどの炎柱とは比べ物にならない程の炎の波が俺を襲う。なら俺も最高に近い技を以て対抗しよう。


「契約に従い 我に従え氷の女王 来たれ とこしえのやみ えいえんのひょうが!“こおるせかい”!」


 そして世界は―――凍りついた。眼前に迫っていた獄炎の波は俺の魔法を受け凍りつく。

それに伴い、近くの地面なども一気に極寒の世界へと変わり果てた。


「なっ!?」

「―――チェックメイト」


 そんな光景に唖然としていたリーネさんに首筋に刀を突き付ける。

 一度二度と眼を瞬き、降参を告げた。


「―――勝者、御薙一也ッ!」



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


~side レイラ~


「まずは一勝ですか……」

「そうですね……」


 熾烈を極めた二人の戦いも、やっと決着が着きました。

 私では未だに辿り着けない、遥か高みに二人は居るようでした。


「それでもこの後はこれより激しい戦いになるんでしょうね……」

「はい……」


 この後に続くのは“暴帝”リークさんと、私の魔法の師匠の“魔神”クレウィスさん。

 こう言ってはリーネさんに悪いですけど、この二人は格が違う。どちらもこの世界最強クラスの使い手達。


「それでも私達は信じて待つって約束しましたからね……」


 私は祈る。

 別に一也さんが負けたって構わない。ただ怪我をせずに無事に戻って来て欲しい―――


「頑張ってください……!」


~side out~


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「――完敗だわ」


 勝利宣言を終えて、リーネさんは俺にそう告げた。


「剣術でも魔法でも完全に負けたわね……」

「リーネさんも凄かったぞ。最後の魔法には焦ったしな」

「……そう言ってもらえるとうれしいわ。でも次から注意することね」


 去り際にそう告げる。

 そして反対側から歩いてくる白髪の老人。


「同じ隊長格と言えど、残りの二人は別格よ? 間違いなくこの世界最強クラスの実力者達なんだから」

「……わかってるさ」

「そう、それならいいわ。頑張ってね」

「あぁ……」


 そうしてこの舞台からは一足に降りて行った。

 そして次に上って来た役者がようやく俺の前に辿り着く。


「―――この時をどれほど待ったことか。あの戦いの日からずっと待っておったぞ?」

「俺は……どうなんだろうな。闘いたかったのか闘いたくなかったのか」


 もう既に闘争準備は完了しているらしい。身の丈ほどの大剣を軽々と掲げ、俺に突き付ける。俺もそれに合わせ影桜を引き抜き、霞みの構えに入る。


「さぁもう言葉はいらん。存分に―――殺り合おうッ!」

「戦闘狂かよ……」


 眼の前から発せられる闘気はリーネさんを超える。

 その中には殺気までもが存在した。流石にそれには顔を引き攣らしたが、すぐに俺も応戦した。


「けど―――悪くないッ!」


 今か今かと二人が待ちわびる中、おっさんの声が響いた。


「決別試合第二試合、始めッ!」


 そして両者は激突する。

 その瞳には爛々とした笑みが浮かんでいた。

今度の投稿は7月に入ってからになりそうです。

出来るだけ早く投稿出来たらなぁ……


そういやいつのまにかPV数700,000とユニーク数100,000を超えていました。更新が不定期なこの作品をたくさんの人達に読んで頂いて本当にありがとうございます!

これからも頑張っていきますので、応援よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ