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12 理と理の衝突?

アリスと真理の存在が相対する。

二つの“理”が触れ合った瞬間、街そのものが悲鳴をあげた。



空は割れ、昼と夜が同時に存在する。

片方の空には太陽が灼き、もう片方には星が瞬き、

その境界線は稲妻のように走って交錯する。


大地はねじれ、街路は無限に分岐し、同じ場所がいくつも出現した。

人々の立つ地面が“もう一つの街”と重なり、

現実は多重化し――あらゆる存在が「戦場の駒」と化していく。



真理の存在が放った一撃。

それは“定義”の力――存在を存在たらしめる根本を書き換える光。

触れたものは、瞬時に「概念」となり、崩壊する。


アリスはそれを真正面から受け止め、両手で捻じ曲げる。

彼女の指先から、無数の可能性の線が伸び、光を解体して別の現実へと変換した。


アリス『均衡? 調停? そんなもの、ただの思い込みよ!

    世界はもっと“多様”でいい!』


叫ぶと同時に、街の人々の影が再び浮かび上がる。

未来の彼ら、過去の彼ら、あり得た可能性の彼ら――

そのすべてを束ねて、アリスは“力”に変えて放った。



街は戦場と化す。

家々が戦艦のように浮上し、通りは剣や盾の形に変貌する。

時計台の針は狂ったように逆回転し、時間そのものが武器となって砕け散る。


人々の叫び声は、もはや恐怖だけではない。

アリスに共鳴した者たちは「自分の可能性」を目覚めさせられ、

戦場そのものを構成する“駒”となり始めていた。


ナツメは唇を噛みしめる。


ナツメ「これ……戦いじゃない……世界の再定義そのもの……!」


ギンは鋭い視線をアリスへ向けた。


ギン「アリス……お前は本当に、“人類の代表”になる気か」



真理の存在が低く唸り、街全体を覆う。


真理の存在『ならば――この都市ごと、抹消する』


空から降り注いだのは“終焉の矢”。

それは街の存在を一瞬で無に帰そうとする究極の裁き。


しかし、アリスは真っ向から立ち向かう。

髪が銀色の奔流となり、瞳には多次元の光が灯る。


アリス『やってみなさい!

    私は――この街と共に、新しい理を生き抜く!』


その瞬間、戦場と化した街の全てが震え、

“理と理の衝突”が本格的に始まった――。


アリスと真理の存在――

二つの理が衝突した瞬間、その余波は街を越え、

この世界の“外側”にまで響き渡った。



空の裂け目は広がり、青空の奥に「別の空」が見えた。

それは、見慣れた星々とは違う、異次元の大河。

時間が逆流し、空間が折り畳まれ、

幾千もの世界が一つの視界に並び立つ。


ナツメは息を呑む。


ナツメ「……これ……他の次元……!?」


ギンは低く答える。


ギン「いや……“観測の壁”そのものが壊れている。

   このままでは、隣接する世界すべてが巻き込まれるぞ……!」



街の人々も異変を感じていた。

空を見上げた者の瞳には、見知らぬ都市や荒野、

そして巨大な影のような存在が映り込み、

自分たちが“孤立した世界ではない”ことを否応なく理解させられる。


ある者は未来の地球を、ある者は滅びた文明を、

またある者は見たことのない異星の都市を見てしまう。

それらは夢でも幻でもなく――

現実と同等の“他の世界”だった。


人々の心に恐怖と同時に、奇妙な憧れが芽生える。

「この世界の外にも道があるのか」と。



真理の存在が声を放つ。


真理の存在『……均衡が崩れる……。

      無数の世界が一つに干渉し合えば、全ては“虚無”に沈む』


その言葉は裁きではなく、

初めて焦りの色を帯びていた。


アリスはその声を嗤いでかき消す。


アリス『虚無? それはあなたたちが恐れているだけ。

    私は見たの。

    無限の可能性が重なり合って、新しい“理”が芽吹く瞬間を!』


彼女の背後に広がる裂け目から、

幾千もの手――人間の手、獣の爪、機械の指――が伸びてきて、

アリスに力を与える。

それは“外側の世界”から響いてきた無数の応答だった。



ギンはその光景を見て、かすかに呟いた。


ギン「……このままでは、この世界が“特異点”になる……

   あらゆる世界がアリスを中心に再定義されてしまう……!」


ナツメは震える声でアリスを呼ぶ。


ナツメ「アリス! あなたは……もうこの世界だけじゃなく、

    全部の世界を巻き込んでるんだよ……!」


しかしアリスの瞳はすでに“彼方”しか見ていなかった。


――彼女は、もはや一人の少女ではなく、

「世界を繋ぐ存在」になろうとしていた。


アリスの身体から放たれる光は、もはや“個人の力”ではなかった。

それは世界の根底に流れるコードそのものを塗り替える力――。



空は幾重にも裂け、

昼と夜が同時に訪れ、

季節が混ざり合い、

雪が降りしきる中に夏の蝉が鳴く。


街並みは形を保てず、

木造の家屋の隣に未来都市の塔がそびえ、

その隙間からは古代の神殿がせり上がる。


人々は恐怖しながらも、

“懐かしいもの”や“未知の憧れ”に触れ、

奇妙な陶酔のような感情に呑み込まれていった。


子供は突然、見知らぬ言語を話し、

老人の目には若いころの記憶が実体化して街角に現れる。


――世界が再構築されている。

それも、アリスを中心に。



真理の存在が低く呻いた。


真理の存在『……この娘を核に、無限の次元が“ひとつ”へ収束していく……

      この道は、許されぬ……!』


だが、その声を遮るように、

アリスの声が響いた。


アリス『違うわ。収束なんかじゃない。

    これは“網目”。

    無限の世界が、互いに触れ合いながら並存する。

    私は――その結び目になる!』


彼女の瞳に、幾千の宇宙が映り込む。

青い空、紅い海、黒の大地、

そして存在すら定義できない世界が。



ギンは歯噛みする。


ギン「やばい……このままだと、本当に“全ての基準”がアリスになる。

   俺たちの生きてきたこの世界すら、別の理で塗り替えられる……!」


ナツメは立ちすくみながらも、震える声で言った。


ナツメ「でも……アリスは泣いてない。

    こんな化け物みたいな力を手に入れても……

    あの子、笑ってるんだよ……!」



そして――


空の裂け目はもはや傷口ではなく、“芽吹き”に変わっていた。

無数の根が伸び、異界と異界を絡め取り、

新しい“大樹”が形を作り始める。


それは世界樹の幻影。

すべての次元を繋ぐ“幹”として、アリス自身が立ち上がっていた。


――アリスは完全に「多世界の核」となったのだ。


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