01 異世界転移?
アリスは、橋の上に立っていた。
橋の下は、200mも落差があった。
アリス「私は飛べる。私には超能力があるから、必ず飛べる。」
そして、アリスは飛んだ。飛び落ちていく。
落ちていく中で思った。
アリス「私には、超能力が無かったんだ。
私は飛べないんだ。」
アリスは落ちながら後悔する。
私の人生ってなんだったんだろうと。
生まれて今まで何も良いことが無かった。
よく「神は試練を与える。でも乗り越えられない試練は与えない」と。
乗り越えられないよ。ぜんぜん。
つらい。つらい。
人生って何?
プラスとマイナスの法則。
良いことがあれば、必ず悪いこともある。
悪いことばかりしか起きないんだけど。
きっと私には特別な能力があるに違いない。
そうじゃなきゃ、今までのつらい人生に納得できない。
きっと私には飛べる能力があるんだ。
飛び降りたけど、飛べない。落ちるだけ。
今落ちてる。落ちていく。どんどん落ちる。
こんなはずじゃなくて、こんな思いもなくて、
ただただ落ちていく。
光が見えてきた。キラキラ輝く光が。
そうかこれが終わりってことね。
もう終わるんだ。
声が聞こえてくる。
ナゾの声「アリス。アリス。起きて。」
アリス「だれ?なに?」
ナゾの声「アリス。もう大丈夫ですよ。アリス。目を覚まして。」
アリス「なに?なに?何を言っているの?」
アリスがそっと目を覚ます。
真っ白い光に包まれた世界にいる。
アリス「私は死んだんだ。きっと。ここは死後の世界ね。」
ナゾの声「アリス。アリス。こっちを見て」
アリスは声の方向を見ると、輝くほど眩しい光に包まれた背中に白くて大きな羽を持った絶世の美女がすぐ前にいた。
アリス「あなたは天使様?それとも女神様?」
ナゾの声「私はあなたに未来を告げる者です。」
アリス「未来を告げるって何?どういうこと?」
ナゾの声「そのままの意味ですよ」
アリス「私は死んだんでしょ?
高い橋から落ちて死んだんでしょ。」
ナゾの声「死んでいませんよ。
私はあなたに未来を告げますね。あなたの未来は、‥」
何も聞こえない。薄れていく意識。
すると現実が目を覚ます。
アリス「なに?なに?どうしたの?どういうことですか?」
アリスは自分の体が浮いていることを感じていた。
アリス「私は浮いてる。浮いてるよ。
ほら、今浮遊してる。」
アリスは浮いていた。すぐ下は水面である。
水面の1m上で浮いている。漂っている。
アリス「浮遊霊?もしかして浮遊霊なの?」
アリスは、自分のほっぺをつねってみる。
アリス「いたっ!浮遊霊ではない?」
アリスは、走馬燈のように自分の人生を振り返る。
そして今起きていることを考える。
声が聞こえてくる。
ナゾの声「アリス。アリス。大丈夫だから。
自分を信じて。大丈夫だからね。」
アリス「何が大丈夫なの?自分を信じるってなに?」
アリスは浮遊しながら考えていた。
そして現実に気づいた瞬間に水の中に落ちた。
川を泳いで岸に上がった。
見上げると200m上に端が見えている。
アリス「あれ?あそこから落ちたんだよね?
あそこから落ちても無事なんだ。無事だったんだ。
生きているよね?まだ生きているんだよね?」
落ちた。浮いた。落ちた。
どう考えてもおかしい。
手に念を込めてみる。
手のひらで光のかたまりができる。
その光のかたまりを水面に放ってみた。
水面に水しぶきが起きた。
足の裏に念を込めてみる。
足の裏と地面が離れた。
浮いてる。浮いてるよ。
もっと強く念を込める。
地面との間がどんどん開いていく。
飛んでいる。飛んでるよ。
念を弱くしていく。地面に近づく。
降りている。降りてるよ。
小さな小石に念を込めてみる。
小石が浮いているイメージを作る。
小石浮く。小石が浮いてるよ。
小石を動かせた。
私には超能力がある。
これから人生が変わると思い、家に帰り始める。
だが、私の知っている町のはずなのに、何かが違う。
時々、町の人が超能力らしきものを使っている様子を見る。
いや、この街並みは、私が知っている街並み。
でも配達員が重い荷物を超能力で浮かせて運んでいた。
ふと、交通事故に合いそうな子供を瞬間移動で守った人もいた。同じ街並みなのに、超能力の世界になっていた。
家に帰ると確信に変わった。
家族も皆同じなのに、全員が超能力を使っていた。
アリス「あれ?みんなは超能力が使えたっけ?」
母「何を言っているの?今更。最初からみんな使っているでしょ。」
アリス「そだね。変なこと言っちゃった。ごめん。」
まだ頭が混乱している。
ここはどこ?
前の世界と同じなのに前の世界と違う。
パラレルワールド?の異世界転移?
意味がわからない。
一度寝ることにした。
朝起きたら戻っているかも。
淡い期待だった。
相変わらず、超能力の世界だった。
学校に行った。
友達と会った。
みんな前と同じだった。
でもみんな超能力が使えた。
もしかしたら、元々超能力が使える世界にいて、私だけ違ったのかもしれない。ケンカも超能力でのケンカであった。
こうして前と同じはずの人生だけど、ひとつだけ前と違った。ここは超能力が強い者が絶対の世界であった。
私の超能力は、他の人と比べると強いらしい。
火をつけると火事になり、水を出せば洪水になった。家の中で物を動かそうとすると、家ごと動きそうになった。
最初はそんなに強くなかったが、毎日使っている内に段々と強くなった。
ここは前と同じ世界。でもひとつだけ違って、超能力がすべての世界だった。




