音楽は実技苦手だから学期末テストの筆記で頑張る！

「数学も理科も終わったし、最終日の明日は楽な音楽と社会と家庭科だから、実質

テスト終了だね」

　三月初旬のある日、とある中学に通う一年生の佐奈は、浮かれ気分になって

しまっていた。

　音楽は実技が苦手だから、筆記で稼ぐぞぉ！

　そして迎えた翌日。音楽の第一問目はこんな問題が出題された。

次の１から５は明治時代から昭和初期にかけて作られた

日本の伝統的な童謡、唱歌の歌詞の一部である。

それぞれの曲名と、１は作曲者名も答えよ。

１．はるのうららの 隅田川　のぼりくだりのふねびとが　櫂のしずくも花とちる

　　ながめをなにに たとうべき

２．さくらさくら　のやまもさとも　みわたすかぎり　かすみかくもか

３．なのはなばたけに　いりひうすれ　

４．いちばんぼしみつけた　あれあのもりの　すぎのきのうえに

５．でんでんむしむし　かたつむり　おまえのあたまは　どこにある

１は滝廉太郎さんの『隅田川』、２は『さくらさくら』、３は『朧月夜』、

４は『一番星みつけた』、５はでんでんむし、じゃないや『かたつむり』で合ってるよね。

　佐奈は自信たっぷりに、解答用紙にこのように記した。

　あなたが日本を訪れた外国人に紹介したい歌はこの中のどれですか？　理由も記して下さい。

　これはこれが正解っていうのはなくて、何か書けば点数くれるサービス問題だね。

もうすぐ桜の季節だし、２番のさくらさくらにしよっと。

　そのあとに続く問題も佐奈は特に深く悩むことなく解答していった。

　テスト終了直後、、

　あ～あ。一問絶対間違えた。隅田川じゃなくて『花』だった！

　ふと思い出し、悔しい気分に。

　数日後、返却のさい、

「平均点は７１点でした。少し簡単にしたから一、二学期より高かったですね」

　教科担当の井出先生から伝えられる。

　佐奈は９７点。

「惜しかったね。でも、学年トップよ」

　唯一間違えた問題の正答『花』、佐奈、井出先生から慰めるように

言われるも、

「なんであんなミスしちゃったんだろ？」

　しばらくしょんぼり気分は晴れなかったのだった。