三日月島の黄金郷伝説
太平洋に浮かぶとある三日月型の島。大きさは日本の佐渡ヶ島くらいはあるようだ。この島にはアメリカの空軍も日本の潜水艦も近づかない、特別な海域だった。
そこは金星に住んでいた金魚人が移り住んでいた。遥かな太古より、金星の厳しい環境から逃れて来た人々が暮らす金星人の避暑地だ。
金魚人の三日月型の島には、特殊な磁場が発生している。近づき過ぎると磁場のもたらす結界により、金魚の金の糞にされてしまう。
まさに現代にまで残る黄金郷だ。何人もの探検家、研究チーム、軍が密かに調査に乗り込んだが、誰一人帰って来るものはいなかった。
金の匂いを嗅ぎつけて最近では中国の船までやって来るようになった。近づける限界から特殊な防護幕を幾重にも施した海中用ドローンなど、金魚人の黄金を求めていつしか三日月島は、黄金を巡る争奪戦へ変わっていった。
しがない漁師のたまごのおいらも出資者のお嬢に調査を命じられ海上を漂っていた。
お金持ちの間で誰が最初に黄金郷の謎を解き明かすのか競争になっているらしい。
まったく、たまご使いが荒い。たまごだけにハードボイルドな姿を見せたいものだが、今は鮫の大群に囲まれてそれどころではない。
お金持ちが揃っているのなら、 もっとサルベージに向いた船があったはずだろう。
強引なサルベージをすると、金魚人が怒って押し寄せ船を沈めてしまうのだが。
そこで私は考えた。秘密兵器として老舗和菓子店三日月堂の新作の和菓子『秋桜』を用意した。コスモスの花を彩る薩摩芋を使った芋羊羮にしたものだ。
秘密兵器が和菓子なんて何の役に立つのかって?
チッチッチッ、甘いよ君達は。砂糖を入れ過ぎた卵焼きのようだよ。
あの手この手で上陸する必要も、強引に入る必要もない。
手土産を持って、彼らに来てもらえば良いのだよ。
見なさい、この食いつき具合を。まさに入れ食いさ。
用意した和菓子の数は限られている。さあ諸君、極上の和菓子が食べたいのならわかっているね?
「獲ったどぉ〜〜!!」
流石は金星からやって来ただけの事はある。我先に抱えられるだけの黄金の糞を持って泳いで来た。
謎を解かないで、何をしに来たんだと言われそうだな。
良いかね。金の卵を産む鳥の話しを知らんのかね。この島の謎は解いてはいけないのだよ。
謎を解けば金魚の金の糞は、ただの金魚の糞しか産まなくなるのだ。
――――偏西風のいたずらか、急な突風で波が押され、黄金を積んだ私の船は結界を越えた……。
お読みいただきありがとうございました。この物語は、なろうラジオ大賞5投稿作品となります。
ジャンル的には金星人が入るのでSFでもあるのでしょうか。現代世界の架空の物語ではありますが、私達に知らされていないものが眠っている可能性は否定出来ません。
たまごシリーズになってしまいましたが、先に投稿した【たまご探偵と怪死事件簿】の関連作品になっていますが、今回は漁師のたまごです。この物語から読める形にしてあります。
応援、いいね、評価、ご感想等よろしければお願いします。