適性検査を見届ける弟 後編
スキル鑑定。
これも魔法属性とはまた違う方法で検査される。
魔法の場合、属性に反応して水晶の色が変わるだけだが、教会の本部から持ち込まれた水晶がなくとも鑑定スキルさえあれば分かるようだ。
ゲームでもレベルが上がっても、教会に寄らないとそこでしかスキルツリーを開けれないし、そこでしかレベルアップで貰ったスキルポイントを使えなかった。
じゃー、なんでスキルだけでも先に見なかったんだ?と思うが、
未熟な子供ではまだスキルが固まっていないし、分かりにくいそうだ。
子供は可能性の塊故に慎重にならないといけないらしい。
例えば、剣術スキルが発現したとして、それは片手剣スキルなのか、突剣スキルなのか、刀スキルなのか分からないらしい。
平民の場合、ぼんやりと剣術スキルってだけあれば充分だが、貴族の場合だとハッキリとしたスキルでないと政略結婚の手札にならないだとか。
なにせ、ゲームだとスキルだけで1300個以上もあるんだしな。
現実のこの世界だとそれ以上あるだろう。
とはいえ、兄のスキルも元々知ってるから、その1300個以上のスキル全部は覚えなくてもいいがな。
それは、
「これはまたすごい!片手剣、両手剣、スピア、ランス、と短剣スキルです。まるで、武の英雄達に祝福されたようだ!」
「ふん…」
複数の魔法属性と武術中心のスキル。
これらがあるから、ゲームの兄上はあんな傲慢なキャラになったんだろうな。
すると、周りのギャラリー達が
「おいおいおい!マジか!?」「どうなってんだ?他の貴族のスキルでもあんなに多くは持ってなかったぞ?」「天才だ!」「あなた、メイドに成りたかったのよね?お母さん頑張ってあなたを学校に行かせるから、あの方に仕えるのよ?」
そんな貴族が来たときに嫌そうな顔をしていた人たちが、掌を3回返したように兄上を称える。
「ふふふ……ボンクラ共が騒いでおるわ。」
兄上がそう言って帰ってきた。
「複数の魔法属性と複数の武術スキル、おめでとう御座います。アッシュ坊ちゃま。」
「おめでとう、兄上」
「ふん、見たか無能!これが貴様と俺の差だ!見ろ、この下民共の神を崇めるような目を!」
「そんなもん見れば分かる。それで?その力、何に使うつもりなんだ?」
「……は?」
「そんな力を持って何を成したいんだ?」
「そ、それは戦争に……。」
「俺らのアストラ家は財務担当だし、今は魔族達と戦争してるとは言え、それを担当してるのは軍事担当のネブラス家だけど?」
ネブラス家のスパイメイドことセッテはなにも言わない。
……ホント、なんでここに居るんだか。ヒロインの世話はいいのかよ?
……まぁ恐らく、ゲームではアストラ邸地下の情報を流したのコイツなんだろうな。
父上がコイツにここの代理を頼んだのもネブラスに商談のことを漏らしたくないからだろう……。
俺らの両親は金の亡者とはいえ、有能だから黒よりのグレーの地雷原でタップダンスしてても誰も両親を訴えられなかったし、国王様も中々手を出せなかったしな。
兄上の傀儡になるまでは。
「……それは。」
「すまん、説教などするつもりなかった。でもまぁ……兎に角、力があるっていうのはいいことだ。改めておめでとう、兄上よ。」
「…………。」
「じゃー、とっとと帰ろうか……セッテ。」
「はい、では御者に準備をさせます。」
「………………。」
その日、屋敷に帰るまで俺と兄上は言葉を交わさなかった。
散々説教してしまったからな、今日は此処までだ。
俺とて空気を読める。
…………
……………………
………………………………
その日の夜ーー
「お゛お゛ぉー…………。」
やっぱりこの世界の乗り物は尻に痛い。