呪われし弟
ざわ… ざわ… ざわ…
ざわ… ざわ…
ざわつきが鳴り止まない周囲の人たち。
そんな奴らの声が逆に落ち着くとは不思議なものだ。
「ふむ……」
闇か。
消滅した水晶を観察する。
いや、ちょっと言葉を間違えてるな。
水晶があった台を観察する……だ。
俺が魔力を流した瞬間、水晶は黒に染まった。
それはもう真っ黒に。
俺が書庫で読んだ本だと、水晶は魔力に反応してその属性の色として輝くはずだ。
闇も例外ではない。
黒には黒になるはずだが黒光りになるんじゃなかったか?
なのに俺の魔力に反応した水晶はまるで光すら逃がさない真っ黒が中からのみ込むように水晶を消した。
なぜそのような表現かというと、水晶が黒に染まった瞬間、掌が物を吸うような感覚があったからだ。
俺、もしかして某海賊漫画のゼハハとかで笑うやつと同じ力に目覚めたか?
それにしてはのみ込んだ物を放出出来る気がしないのだが……要検証だな。
それもこれもこの場を切り抜けてからだが。
振り向く。
そこにあったのは――
恐怖。
困惑。
絶句。
嫌悪。
「む、無能……貴様……。」
「なんだ?父上。」
分かりきった反応するだろうがあえて父と呼ぶ。
「わ、ワシを父と呼ぶな!!」
「可笑しなことを言うなぁ?俺はあんたの股間のもんで出た物と母上の腹から出来た子だが?」
「き、貴様のような呪われた子なぞ持った覚えなどないわ!」
………拒絶……ま、こんなもんだ。親なんて。
「そ、そうだ!人族が闇魔法に目覚めるはずがない!」「呪われた子だ!」「そいつは何かの災いを持ち込むに違いねぇ!」「殺せ!」「そうよ!誰かそれを殺して!」「殺せ!」「殺せ!」「殺せ!」
まるで合唱コンクールのような息ピッタリの殺せコール。
明らかな異変を感じたからか、外で待機していた騎士達が入ってきた。
「旦那様、この状況は一体!?」
「騎士様!あれを!あれを殺して!」
「あれをって……」
「貴様!ルーク様にその指で指すなっ!!」
誰も彼もパニック状態になってる。
そんな中で父上は――
「そうだ……そうだ!やつを殺せ!」
「あ、貴方まで何を言っているんですか!?」
「旦那様の子ですよ!?」
……すまん。ロウェン、ドナルド。お前たちをこんなことに巻き込んで。
「あのような危険人物はワシの子ではない!!良いから早くヤツを殺せ!!!」
危険人物と来たか。
コレが現実か。
分かってたものだけどな。
メルヴィン達も仕事だし、ここで俺と戦うことに――
「お断りします!」
「拒否します!私の剣は子供を切るためにありませぬ!」
……は?
「刃向かうというのか!このワシに!?」
「「慈愛深き剣神ガラクシアナ初代王の名と我が剣への誓いをもって貴方の命を拒否いたします!」」
!?……お前ら、そんなことしたら――
「それは我がアストラ家を反逆することになるぞ!?」
「「覚悟の上でございますっ!!」」
理解出来ない!な、なぜ、そんな事をする!?
「……っ!……ええい!貴様らに用はない!周りの愚民共の鎮圧をせよ!貴様らの罰はそれが終わってからだ!」
「「は!」」
「マイケル!鎮圧された愚民共に緘口令を敷け!従えないのならば処刑すると伝えよ!名無し共も呼べ!街を巡回させ、誰か一人でも噂を立てるのならば、その場で殺しても構わぬ!貴様らもだ神父共!この事が外に漏れるのは絶対に許さぬ!王家にこの事を絶対に知られてはならぬ!」
父が次々と命令を飛ばした後、俺に近づいて来た。
「……貴様のせいで!!貴様のせいで予定が全て狂ったのだ!!」
「………………。」
怒りに満ち、拳をあげる。
「貴様さえ!貴様さえ生まれてこなければ!クソォオオ!!」
「………………。」
拳が振り下ろされる。
魔法の使い方はもう学んだ。
兄上の訓練を見て、やり方も覚えた。
魔力を出し方のコツも教えて貰った。
腕が黒い煙のような物を纏う。
俺は反撃しようとした。
何かをのみ込めるのなら、拳くらいのみ込めるんじゃないか?と思った。
けど……。
ノエルの後ろに俺は見た
先程、会話した瑠璃色の髪をした少女。
アリアが俺の目に映った。
彼女だけではない。
領民達のパニックを必死に諫めようとしてる……
ロウェンとドナルド。
俺がここで反撃してあいつらまで巻き込んでしまったら?
貴族の怒りを買う危険まで冒して礼を言いに来た娘。
反逆者として処刑される危険を冒しまで俺を守ろうとした騎士達。
ここで反撃して、想定してた以上の被害を出してしまったら――
彼らの行動を無駄にしてしまうじゃないのか?
……脱力する。
反撃しようとした腕も下ろす。
纏った闇も消える。
俺は……
そんな彼らの行動を無駄にするくらいなら……
諦めて、振り落とされた拳を……
黙って受け止める。
「ぐっ!……っ……。」
顔に当たった拳の衝撃とぞれがもたらした強烈な痛みに……
意識を闇に落とした。




