再び教会に訪れる弟
「メイド共から二階の廊下が眩しいという苦情が来たのが……何かあったか?」
「いえ。」
「いや?」
ども、ルークだ。
今、適性検査が行われる教会を目指す馬車の中に俺、兄上、セッテと父上のノエルが揺らされてる。
そして、父上の開口一番はあの廊下の兄上フラッシュの事だった。
「こんな大事な時期に無闇やたら魔法を使うな。変に勘ぐられて、他の家になにかを知られてどうする?」
「知られて困るものがあるなら、しっかり隠せばいいんじゃないんですかねぇ。」
「なに?」
「貴族……権力者が秘密の1つや2つを持っているのは当たり前だろ。堂々とせず、ビクビクしてそれを極端に隠そうとしてる父上が怪しく見えて仕方ないでしょ……。」
あんたの隣に座ってるセッテが派遣されるくらいだし。
「貴様はワシを臆病者とでも言いたいのか!?」
「言ってないが?まぁ、子供2人が魔法で遊んでましたって真正面から言えないのはどうかと思うんだけどね。」
「キッサマァ!!」
ッドス
「……ぐっ……。」
「ち、父上!?」
「旦那様!?」
痛ェ……。
顔をグーで殴られた。
まぁ…いつもの事だし、慣れたけど。
はぁ……父上が相手だと無性にイライラするからあまり関わりたくなかったんだよなぁ……。
「毎度毎度親に対してその口の利き方、ワシをなんだと思っている!」
「つぅ…………ガキに手が出る時点で大した親ではないのは確かだな。それで?心が傷つけられて泣きそうか?外から来たオトモダチに慰めて貰ったらどうですかね?」
「……っ!………………貴様が今屋根の下に暮らせてるのも、温かい食事を喰らうことが出来るのも、全て貴様の頭に可能性を感じているワシのおかげだ!覚えておけ!」
言うに事欠いて俺はお前を生かしてるぞ宣言された。
くっだらねぇー。
(おい、父上を挑発するのも程々にせよ。)
(無理。馬車内の空気を悪くしたのは申し訳ないとは思ってるけど、我慢してくれ。)
(はぁ……。)
「アッシュ坊ちゃま、セッテよ。トラール城に着きましたぞ。」
城に着いたらしい。
相変わらずデカい城だ。
「……では父上、私はここにて。」
「うむ。励めよ?そこの無能のようなになるな。」
「…………はい……。」
「死ぬなよー、兄上ー。」
「………………ふふ。」
そんなやり取りした後、兄上とセッテは馬車から降りる。
そして、父上の右腕で執事筆頭のマイケルが馬車周りの確認した後、再び出発した。
◇ ◇ ◇
「……………………。」
「……………………。」
馬車に揺らされながら長い長い沈黙が続いた。
それを絶ったのはノエルだった。
「おい、貴様の先程の発言はどういう意味だ?」
「うん?何のことです?」
「貴様のオトモダチという発言だ!どういう意味だと聞いている!」
「どーもこーもそのままの意味だが?父上、婿入りだからオトモダチなんてそれなりにいるでしょう?あれ?もしかして本当はいないとか?」
俺と兄上の特徴的な明るい赤色の髪は王家の血が入ってる証だ。
だから顔が似ていても髪の色は全然違うんだよね。
父上、金髪だし。
ちなみに兄上の顔は母上似だ。
「馬鹿にしているのか!」
「馬鹿にするもなにも、そもそも話が見えないんですけど?」
勿論、嘘だ。
言おうとしてる事は分かっているし、単なる嫌がらせだ。
「貴様……!」
「旦那様、到着致しました。」
どうやら到着したらしい。
いいタイミングだ。
何度も何度も殴られるのはごめんだ。
「……チッ……おい、無能!貴様に一つでも役に立たぬ能力でもあったらただじゃすまさぬぞ!」
「へーい。」
「貴様ァ!!」
憤慨する父を馬車に放っておいて俺は飛び出した。
シャン!
スタッ
グゥゥン……
バァーン!!
さて、2年ぶりの教会だ。
俺の魔力性質がなんなのかはもう薄々と分かっているが、それでも確認しないとな。
正直、魔力よりスキルがあるかどうかの方が気になるくらいだ。
それさえ分かっていれば、今後の身の振り方も見えてくるものだ。
『良い力が授かるといいな。』
…………………………。
悪いな、兄上。
人というのは異形に対しての目は……悪意は……甘くねぇんだ。
世間は自身の世界の常識からかけ離れたもの程には…………容赦はない。
他人のために自分の生活を犠牲にする大人もいない。
だから……
これが終わったら、俺は――――――
「ハァ……さっさと入るかねー。」
屋敷を出て行くことになるよ。
俺はため息を吐き出しながら、この古いセナフの教会に向かって一歩進んだ。
◇ ◇ ◇
「ん?」
「どうかなさいましたか?アッシュ様。」
「いや…………なんでもない。気のせいだ。」




