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奥で笑う弟と時が止まる兄

ゲーム【ルセリアの軌跡】の舞台はこの大陸、ルセリアだ。勿論、現実になったこの世界ではルセリアだ・け・が人の住む世界ではない。




 ゲームではゾディア列島と呼ばれる、ゲームクリア後のやりこみ要素があったり、その他にも色々なイベント用の島もある。そこには原住民の集落があったり、既に滅んでいたセナフ教とは違う神を祭る一族の遺跡があったりしている。




 さらに、ゲームストーリーのエピローグでは国王が新たなる大陸を見つかったという報告受け、その大陸の調査を主人公逹に頼もうと手紙を出した。




 その大陸の発見をしたのは、他でもない。




 オルビット家だ。正確にはトリーシャの父、


 ロバート・ヴィ・オルビットだ。




 馬車からウェーブの掛かった、肩まである茶髪の髭オヤジが出てきた。それがロバートなのだろう……




 続いて遅れて出てきた少女はゲームではヒロインの1人、


 トリーシャ・ヴィ・オルビットだ。




 背中まである父と同じウェーブの掛かった茶髪に、前髪は目が見えそうで見えないくらい長さになっている




 遠くから見るとゲームでの見た目と全く同じだな。




 二次元じゃない分、ちょっと可愛さが落ちてるが逆に落ち着いた雰囲気が増している。





 しかし…………





 遠くて良く見えないな。





 うーん、もうちっと近くで見たいかもしれん……。






 ………………………………


 





 …………………………抜け出すか!




 腹も減ってるしな!





 ◇ ◇ ◇





【アッシュ視点】






客が増えてから挨拶が永遠に続いている。




「お誕生日、おめでとうございます!アッシュ様。」


「お誕生日、おめでとうございます!アッシュ殿。」


「アッシュ様!3属性トリプルの発現、誠におめでとうございます!流石はアストラ家の神童!」


「ええ、まさしく女神逹の寵愛を受けし者で御座います!」


「なんでも、最近はもう魔法の勉強を始めているだとか、どうです?我が家も世話になった教師の元に学ん――――」




どいつもこいつもの瞳には打算と欲望に満ちた者しかいない。




彼らは家のために来ているのを頭では分かっているが、それをまだ3ヶ月前で8歳になったばかりの子供に向けるのか?




全く、貴族とは本当に度し難い。





――と、そう思っていた俺だが、セッテが俺に耳打ちしてきた。




(坊ちゃま、オルビット家の方々がお見えになりました。)


(そうか、分かった。父上の下へすぐ行く。)




目前の貴族の子逹と軽い挨拶だけをし、早足で父の下へ向かった。




「おおー、来たか。オルビット侯爵よ、これが我が息子のアッシュだ。」


「貴方がアッシュ殿ですか。お誕生日おめでとうございます。私はオルビット家当主、ロバート・ヴィ・オルビットです。」




 濃い髭と長めの茶髪とは裏腹に裏腹に穏やかな瞳をしているな。




「ありがとうございます。先程父上が申した通り、息子のアッシュ・ヴィ・アストラです。」




「ふふ…どうだ?侯爵よ。良い子であろう?この前の適性検査も3属性トリプルに目覚めたそうだ。これで申し分ないと思うのだが?」




――と、早速俺を売り込む父上だ。




「……そうですね。ですが、先ずは私の娘の紹介をさせて頂きませんか?」




「そうだったな。そなたの娘をここに連れて来るのを許す」




「ありがとうございます。…………トリーシャ。」




 オルビット侯爵がそう言って、トリーシャと呼ばれた少女がここに歩いて来た。




 そして、俺は彼女を見た瞬間――




「………………!?」


 


――世界が止まった気がした。




彼女の一歩の音があらゆる雑音を掻き消した。




彼女のその真っ直ぐな瞳がこのホールのあらゆる宝石より輝いた。




彼女の髪が、このホールの貴族の服よりも美しかった。




そう…………







俺は………






俺は彼女を見た瞬間…………





 


…………………………






 


彼女に恋をした。






 


…………………………






 


…………………………………………








……………………………………………………





とは、言いたかったものだ。


 


彼女の後ろの奥に見える執・事・服・の・男・に気づかなければ。





「お初目にかかります。アストラ公爵様、アッシュ様。私はオルビット家の長女、トリーシャ・ヴィ・オルビットです。どうぞ、お見知りおきを。」




「うむ!我はアストラ公爵家頭首、ノエル・ヴィ・アストラである。よろしく頼むぞ?ほれ、アッシュも挨拶せんか。」




「あ、ああ……アッシュだ。よろしく頼む。」




あまりのことで挨拶が雑になってしまった!




な、何故あやつがここにいる!?




「アッシュよ、我らはこれから大事な話がある故、お前がトリーシャ嬢を案内せよ。」




「は、はい……」




父はそう言ってオルビット侯爵と2人で上の階へ行った。




………………この状況を俺はどうすればいいのだ!




「どうかしましたか?アッシュ様?」


「い、いや!何でもない!そう、何でもない。何の問題もない。」


「そうですか……」




問題しかない。




今、奥にいる貴族令嬢逹と談笑している男が……




自室から脱走して執事服を着た男が……




まだ社交界に出れないはずの男が……







俺の弟だからだ。 



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