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僕とケット・シーの魔法学校物語  作者: らる鳥
五章 平穏ではない冬休み

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 冬期休暇も終わりに近づくと、実家に帰っていた生徒達が徐々に帰ってくる。

 まず帰ってくるのは、夏と同じく先生の送り迎えを必要としないポータス王国に実家がある生徒達。

 だが同時に、これまでに見なかった顔の生徒達もちらほらとだが見かけるようになってきた。


 そう、新しい一年生となる、新入生である。 

 彼らはまだ正式にウィルダージェスト魔法学校の生徒になった訳ではないのだけれど、移動に難があるこの世界では、入学の日に合わせて集まるなんて事は不可能だろう。

 なので早めにやって来て、前期が始まるよりも早くに寮での生活を始めるのだ。

 ちなみに既に寮にやって来てる新しい一年生は、ポータス王国に実家がある子達らしい。

 他の国、ノスフィリア、ルーゲント、サウスバッチ、クルーケットから来る新しい一年生は、他の実家に帰ってる上級生と一緒に、各国の首都から先生達の送り迎えでこの魔法学校に来るそうだ。


 冬でも然程に寒くならないサウスバッチ共和国はともかく、他の国、特に北よりのノスフィリア王国なんかは、首都までの移動も大変だと思うのだけれど、一年生に関してはその辺りも先生が助けてくれるという。

 まぁ、農村の生まれの子供なんて、首都までの旅ができる筈もないし、当たり前と言えば当たり前の話だった。


 既に寮での生活を始めた新しい一年生を見ていると、なんだかとても微笑ましい。 

 期待と不安に胸を膨らませながらやって来て、卵寮で働く魔法人形を見て驚いてる様を眺めるのが、ここ数日の楽しみだ。

 中には同じ新しい一年生に対して偉そうな、横柄な態度を取ってる子もいるけれど、……あれは貴族の家の子弟だろうか。

 流石に上級生、僕のクラスメイト達に対しては絡みに行ってないみたいだから、特にこちらから何かを言おうとは思わない。


 もちろん横柄な態度が度を過ぎて、苛めにでもなってる現場を見れば右ストレートで対処だが、そうでないなら、あまり無理に干渉する必要はないだろう。

 それにもし干渉をするにしても、僕よりもジャックスの方が向いてた。

 同じポータス王国の貴族の子弟の言葉なら、素直に耳を傾け易い筈だし。


 しかしそれにしても一つ思うのは、どの学年にも貴族の生徒が少しは居るなぁって事である。

 どの国でもそうだと思うが、貴族と平民の数を比べれば、平民の方が圧倒的に多いだろう。

 それこそ比率で言えば、百倍でも利かないくらいに。

 だけど僕のクラスには三十人の生徒に対して、ジャックスにシズゥ、それから一応はガリアと、貴族が複数いた。

 平民と貴族の比率を考えると、僕のクラスの貴族率は明らかに異常だ。

 そして他の学年も、新しい一年生はまだ全てが知れた訳ではないけれど、僕のクラスと貴族の数は大差ない。


 この魔法学校が、貴族の身分に忖度して、貴族から多く生徒を募ってるって可能性は、そりゃあ皆無じゃないが、……けれどもジャックスもシズゥも、それからガリアだって、別に他の生徒に比べて魔法の才に劣るなんて事は少しもなかった。

 寧ろ彼らは、クラスでも優秀な部類である。

 つまり、少なくとも僕の学年に関しては、彼らが魔法学校の生徒に選ばれたのは忖度の結果ではない筈だ。

 また、一学年上の貴族、グランドリアも、……まぁ、あんまり好きな相手ではないけれど、魔法の実力はあったと思う。


 すると魔法学校が忖度してるっていうよりも、貴族の家には魔法使いの才を持った子供が産まれ易いって事になるんだけれど、……それってあり得るんだろうか?

 この世界では、魔法の才能は、即ち魂の力だ。

 貴族の血統に強い魂が宿るなんて、それはどうにも納得しがたい話だった。

 ……いや、逆に考えて、強い魂の持ち主だからこそ、この世界で生き抜く為に有利な立場、貴族の家の生まれを勝ち取れているとか?

 答えなんて出ないだろうけれど、ふと、そんな事を考えてしまう。


 ふと、視線に気付いたか、ぼんやりと眺めてた新しい一年生達が、僕に向かってペコリと頭を下げた。

 なんだかちょっと嬉しくなって、僕は彼らに手を振る。

 一歳しか違わないのだけれど、年下で、後輩ってだけで、妙に可愛く思えるのはなんでだろうか。

 尤もこのテンションで話しかけて、不審者だって思われたら嫌だから、行動には出ないし、顔にも出さずに取り繕ってはいるけれど。


 あの中に、僕の事を先輩って呼んで、仲良くしてくれる子はいるんだろうか。

 他国からの新しい一年生は、今頃はその国に戻ってる上級生が面倒を見てるのかもしれない。


 そう考えると、ちょっとワクワクだ。

 僕のクラスメイトが、後輩を紹介してくれたりしないだろうか。

 サウスバッチ共和国に帰ってるガナムラとか、あれで中々面倒見がいい奴だったりするし。


 それから、忘れてはならないのは、前期の授業が始まった後にエリンジ先生が連れ帰るという、新しい一年生の当たり枠は、どんな子なのか楽しみだった。

 今年も後期に初等部の一年生と二年生の模擬戦が行われるなら、最も注意すべきはその当たり枠の生徒だから。

 ……まぁ、あの模擬戦はどう考えても得がないので、ルールをもっと改変するとか、他のイベントに差し替えるとか、前期の間にクラスメイトと相談して、要望をマダム・グローゼルに叩き付けたいところだけれども。


 いずれにしても、もうすぐ始まる次の一年間、二年生も楽しみだなぁって、そう思う。



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― 新着の感想 ―
[良い点] 新たな出会いの季節にワクワクしますね
[良い点] 対処方法は名物の右ストレートなんですね。 でも魔法を使えるこの学校の人間だからこそ右ストレートのに意味が出てきそうですね。
[気になる点] 各国の首都の首都から先生達の送り迎えでこの魔法学校に来るそうだ。 この「首都の首都」って何かおかしくないですか?
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