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僕とケット・シーの魔法学校物語  作者: らる鳥
十一章 甘く、苦く、狂おしく

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 二年生で学ぶ科目は八教科。

 そのうち試験があるのは七教科だ。


 試験がない一教科、錬金術に関しては、事前に提出した課題で評価が決まる。

 今回の錬金術の課題は、音消しの魔法効果を付与した布地だった。

 これはかなり難易度の高い課題で、正直、要求通りの物を提出できたのは、クラスでも数人しかいないと思う。

 恐らくこれを要求通りに提出する事が、水銀科に入る為の試験でもあったのだろう。


 実際、今回の課題の要求レベルが高いというのは、事前に教科担当のクルーペ先生も言っていて、仮にその辺りで購入した何の変哲もない布を提出したのであっても、百点中の五十点は貰えるそうだ。

 もちろんそこに少しでも努力、付与をしようとする努力の痕跡があったなら、それもちゃんと評価すると。


 またこれは口に出しはしなかったけれど、音消しの魔法効果を付与した布地を用意すれば、その全てを自らの手で作り上げる必要は特にない。

 仮に魔法薬を使う方法で布地に魔法効果を移すなら、音消しの魔法薬は伝手があるなら水銀科の上級生から購入しても構わないのだ。

 それを元に調整すれば、布地に音消しの魔法効果を移す魔法薬は、比較的簡単に作る事ができる。


 水銀科に進み、錬金術を専攻するなら、全ての工程を自分の手で行っている暇はない。

 例えばシールロット先輩も、生きている剣を作る時は、剣の本体は外注をしたというし、そもそも僕という働き手を雇ってる。

 当然ながら、他の誰かの手が入った分は、クルーペ先生も見抜いて減点するだろうけれど、幾らかの減点は受けたとしても、音消しの魔法効果を付与した布地を提出したなら、水銀科には入れるだろう。


 まぁ僕は、全部の工程を、それこそ採取の段階から自分でやったし、出来も満足のいく物を提出したから、錬金術に関しては恐らく満点が採れた筈。

 魔法学校に入ってから二年間、最も力を入れた科目は錬金術なのだから、これに関しては最も高い評価を得たかったし。


 さて試験の前半は何時も通りに筆記の試験。

 七教科の内、古代魔法基礎、魔法陣基礎、魔法生物学、魔法史の四教科は、問題見て解答を書く、いわゆるペーパーテストが行われる。

 このうち古代魔法基礎と魔法陣基礎に関しては、前期よりも格段に問題が難しくなってた。

 まるで、古代魔法や魔法陣を専攻する心算があるのなら、これくらいの問題は解けて欲しいって、教科の担当であるカンター先生やシュイラ先生の言葉が聞こえてきそうだ。

 錬金術もそうだったけれど、これらの科目は高等部でそれを専攻しようとする生徒に対する試験になっている。


 出来は、古代魔法基礎と魔法陣基礎ではかなり苦戦させられて、魔法生物学と魔法史は何時も通り。

 クレイが古代魔法の分野で躓く筈もないし、彼は魔法陣もかなり覚えてたから、……もしかすると錬金術で得たリードは、この二教科で消えたかもしれない。

 古代魔法基礎の試験の難しさに、黄金科を希望してるパトラがふと心配になるが、試験の最中に友人を気遣ってられる程、僕にも余裕がある訳じゃないから。

 それに試験前は助け合えても、いざ始まってしまったら、自分で目の前の試験と戦うより他にないのだ。


 試験も後半に入ると、実技試験が待っている。

 呪文学と治癒術は前期と特に変わりがなくて、ホッとした。

 いや、呪文学はともかく、治癒術の試験は前期から物凄く厳しかったんだけれど、……何というか、慣れって怖いなって思う。

 そういえば、治癒術を担当するシギ先生が、どことなく機嫌が良さそうな雰囲気だったのは、もしかすると治癒術を学びたいって言っていたシーラが試験でいい結果を出したんだろうか?

 あぁ、いや、これは半ば、そうだったらいいなって、僕の勝手な想像なんだけれども。


 そして最後に待っているのは、戦闘学の実技試験だ。

 戦闘学の実技試験は、二日間かけて行われ、クラスの半分は一日目に、残るもう半分は二日目に試験を受ける。

 つまり一日目に試験を受ける生徒は、一日早く試験が終わり、二日目の試験を受ける生徒は、試験期間中に空きの日が生じてしまう。

 何故、わざわざ試験の終わる日がずれたり、間に空きの日を作ったりするのかといえば、恐らく試験を担当する教員の負担を減らす為。


 そう、二年生の後期に受ける戦闘学の試験は、担当教員であるギュネス先生との模擬戦だった。

 ギュネス先生との模擬戦が試験となるのは、一年生の前期の試験以来。

 まぁ、多くのクラスメイトは一年生の後期でも模擬戦を試験として受けたらしいけれど、あの年行われた行事、上級生との模擬戦で代表と出場した僕らは、その試験を免除されたから。


 待機室で、迎えの魔法人形が来るまで、手持無沙汰になりながらもジッと待つ。

 何時も肩に乗ってるシャムも、試験中は一緒に居られなかった。

 一人一人、クラスメイトが呼び出されて、やがて待機室には僕一人だけになってしまう。

 どうやら今回も、ギュネス先生は僕を最後に回したらしい。


 でも、別に焦れる必要は少しもなかった。

 待ち受けてる事はもうわかってる。

 何なら、再戦の機会は一年生の前期の試験が終わった日から、ずっと待っていたのだ。

 後少しばかり待たされたところで、何が変わる訳でもないし。


 僕はただ、その時間を使って心を研ぐ。

 迎えの魔法人形が、待機室の扉を叩くその瞬間まで。



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― 新着の感想 ―
[良い点] ギュネス先生、エコーのお試し試合で負けた分ムキになってそうですし、お互いモチベーションはバリ高そうですな 満点はつけるけどそれはそれとして全力で負かす、みたいな 次回スキップされずに描写さ…
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