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エクジステンス  作者: さやき
第二章
9/12

復讐

  翔

 しばらく書類を書いていて、僕はあることに気づいた。今日、塩野さんを一度も見ていない。

「今日、塩野さんを見かけないですが、任務ですか?」

「有希は今日定休日だ。部屋にいるんじゃないか。」秋間さんが言った。

「ああ、有希さんなら今日朝早くから出掛けに行きましたよ。」国枝さんが言った。

「そうだったのか。まぁ、そのうち帰ってくるだろ。」秋間さんが言った。

 僕は時計を見た。六時半だ。まだ心配するほどでもない。

 そのあと、月見さんと拓也さんは喧嘩を続け、僕たちは書類を書いた。七時ごろに佐野さんが戻ってきた。

 時間は刻々と過ぎ、やがて外は真っ暗になった。まだ塩野さんは帰ってこなかった。

 時間は九時になった。月見さんと拓也さんは喧嘩を終え、僕たちは書類を書き終えた。

「塩野さん、遅いですね。」僕は言った。

 みんな心配で部屋に戻っていなかった。

「連絡はしたんですけど、もう一時間ほど既読がつきません。」佐野さんが言った。

「もしかして、反抗期?」拓也さんが冗談っぽく言った。

「既読もつかないんですよ。既読スルーならまだそういうのかもと思えますけど、既読なしはおかしいですよ。」佐野さんが心配そうな声で言った。

「まあ…確かに…」拓也さんが小声で言った。

 さらに黙々と三十分過ぎた。

「有希を探しに行くわ。」月見さんが立って言った。「あの子は特に実績が高いから、何かあったのかもしれない。」

 月見さんが扉に向かったその時、FAXが来た。

「こんな時間に…」月見さんが言った。

 国枝さんがFAXから紙をとった。

「––––!」国枝さんが目を見開いて驚いた。「みなさん、見てください!」

 僕たちは国枝さんが机の上に置いたFAXの周りに集まった。

 FAXの内容はこうだった。

『塩野有希は預かった。彼女の命が惜しければ、明日の夕暮れまでに爆弾を解除せよ。

 爆弾夕暮れと同時に爆破する。その華やかな光景は赤い夕陽によってさらに綺麗なものになるだろう。それとともに塩野有希と私はこの世から去る。––––––ヘーラー

 P.S.我が弟を殺したあなたたちは死んでも許さない。』

「爆弾⁈」僕は思わず声に出して言った。

「明日の夕暮れまでか。時間がないな。」拓也さんが言った。

「場所もわからないのに、どうやって見つけるですか⁈」僕は言った。

「ヒントはある。『赤い夕日よってさらに綺麗なものになるだろう。』それは多分夕日の前で爆破が起きるということだ。つまり、それは見える距離の西の方角にある高層建築物だ。」拓也さんが言った。

 こんな少ない事で大体場所が絞れたことに僕は感心した。

「今からそれぞれ捜査を始めろ。夜明けまでには終わらせて、会議を行う。」月見さんはみんなの気を引き締めるような声で言った。

「はい!」みんな一斉に返事をした。

 一睡もせずにみんな捜査をした。一言を交わさず、ただひたすらかちゃかちゃとキーボードとマウスが鳴り、時折紙にボールペンで何かが書かれる音がした。

 太陽が登り始めた頃、みんなの机にはコーヒーのペットボトルやエネルギードリンクの瓶があった。

 朝の七時ごろ、太陽が登り切って、空は真っ青だった。不幸な時には不似合いな天気だ。

 僕たちは会議室に集まった。

 会議室はホワイトボードに向かって、長机が四つ置いてあった。長机にには二つずつパイプ椅子が置かれていた。ホワイトボードの横には四つの机の方を向いた机が置かれていた。

 会議室は電気がついておらず、唯一の光はプロジェクターだった。

 僕たちはそれぞれ席につき、月見さんはホワイトボードの横の席についた。

「これから塩野有希誘拐事件及び爆破予告の会議を行う。」月見さんが言った。「拓也、捜査報告を。」

 プロジェクタースクリーンに若い金髪の男の顔写真とその横に名前や年齢などの情報が書かれいているものが映し出された。

「はい。犯人はおそらく天城慶花です。彼女は天城勇人の姉です。天城勇人は三年前、爆弾を作る特殊能力、『華麗なる爆裂』で連続爆破事件を起こしています。彼は毎回ゼウスと名乗って、爆破予告を出していました。彼は逮捕時、死んでいます。」拓也さんが席を立って言った。

 言い終わった拓也さんは座って、次に秋間さんが立った。

「犯人については拓也と同意見です。僕の調べでは、おそらく有希の監禁場所、そして爆破される場所は同一だと思われます。その場所はおそらくエイムタワー、石川ビル、飛鳥ビルとアーチタワーのどれかです。」スクリーンにビルが四つ映し出された。下にビルの名前が書いてある。「右側の二つ、エイムタワー、アーチタワーは高層マンションで、左側の二つ、石川ビル、飛鳥ビルはオフィスビルです。僕の予想では、高層マンションの方が監禁場所の確率は高いと思うのですが、オフィスビルも使われていないオフィスなどもあるので、あり得なくはないです。」秋間さんがそう言って、座った。

 次は佐野さんが報告をした。

「僕の調べでは、先ほど涼平さんが言った建物の近くに今建設中のビルが一つありました。その建物は現在工事がトラブルによって止まっており、人の出入りがほぼありません。人がいないため、誘拐があっても気づかれないと思います。」

 スクリーンには建築途中のメッシュシートで囲まれたビルの写真があった。

「そうか。翔くんは?」月見さんが言った。

「あっ、はい!」僕はメモを開いて、立った。「大体わかったことは拓也さん、秋間さんと佐野さんが言ったことと同じですが、ネットの書き込みで誘拐の目撃情報らしいものが数件ありました。」僕はスクリーンにその書き込みを映し出した。「これは昨日の午後十五時十八分に書き込まれたものです。エリアはここらへんで絞り込んでいたので、おそらく近くで書かれたものだと思われます。写真ではある女の人が大型のスーツケースを持って歩いている写真です。この書き込みによるとスーツケスから叩くような音が聞こえたということです。」

 画像にはベージュ色のコートを着た女の人が黒いスーツケースを持っている姿があった。それに「このスーツケースの中で何か叩くような音鳴ってる!これってもしかして誘拐とかだったりして!怖っ!」という言葉が添えられていた。

 僕は次の書き込みを映し出した。

「こちらの書き込みは写真などはついていないが、このエリアで前の書き込みと同様、女の人が持っているスーツケースから叩くような音が聞こえたそうです。」

 書き込みは「今通りすがった女の人のスーツケースからバンバンという音が聞こえたんだけど、気のせいかな?最近よくドラマとかでこういうスーツケースに入れて誘拐するとか見るけど、まさかね。」

「こちらが最後の書き込みです。」僕はスクリーンを切り替えた。

「これは動画です。この動画ではあんなの人がスーツケースを持って工事現場に入って行っています。他の書き込みと同様、スーツケースから音が聞こえたそうです。」

 動画では、周りをキョロキョロ見ながら工事現場に入ってゆくスーツケースを持った女性が写っていた。「何この人⁈最近ここの工事止まってるし、明らかに工事関係者じゃなさそう。これって不法侵入じゃね。警察に通報した方がいい?」と書かれていた。

「以上です。」そう言って、僕は座った。

「そうか。つまり、有希と犯人は工事中のビルにいて、爆弾もおそらく同じ場所に仕掛けられているということか。一応これが犯人の偽装かもしれないから、他のビルの周辺も警戒を強めるように本部に言っておく。」月見さんが言った。「私たちはこれから現場に向かう。準備を終えたら、事務所に集合して作戦会議を行う。以上だ。」

 そう言った月見さんは会議室を出て行った。僕たちもあと追って出た。

 

 作戦会議は短かった。

「今回現場に行くのは拓也涼平と翔くんだ。」

 月見さんはホワイトボードに貼られた地図に僕たちに見立てたマグネットをつけた。

「私、淳弥と和馬はここら辺で待機をする。」地図にもう三つマグネットをつけて言った。「ここからなら、今予想されているビル全てに近い。現場に行く方は拓也が指揮を取る。現場に行ったら、各階を全て調べるようにしてくれ。もし何かあったら、拓也の判断に任せる。対処しきれない場合は私たちを呼べ。これで以上だ。出発するぞ。」月見さんはそう言って扉へ向かった。

 九時ごろに事務所を出た。車で現場に向かった。

 現場にはすでに二台パトカーが停まっていた。工事現場の周りには立ち入り禁止のテープが張られていた。

 拓也さんは胸ポケットから警察手帳を取り出し、警備の警察官に見せ、現場に入って行った。

 工事中のビルの外見はいかにも普通のオフィスビルだった。だが、中はコンクリートが丸出しで、電気の取り付けがまだで、天井からいくつものワイヤーが垂れ下がっていた。幸い日中だったため、窓からの光が多少あって、ビル内は少し明るかった。

 階段を上って一つ一つの階を調べた。20階まで上がったが、特に何もなく、ただ一向に息が切れていった。

 40階まで来た時、妙な音がした。その音は時計の針が動くような音だが、なんだか不安をそそるような音だった。

 念入りにその階を調べた結果、爆弾が三つ出てきた。

「この爆弾どうします?」僕は聞いた。

 拓也さんが爆弾をよく観察したのち、「爆発物処理班に任せよ。」と言って、イヤホンに向かって何か話した。

 僕たちはさらに上に上がっていった。

 42階と43階でそれぞれ爆弾が三つ見つかったが、それも爆発物処理班に任され、さらに上に上がった。塩野さんと犯人の気配は全くない。

 44階まできた時、爆弾の音は一層大きかった。

 あらゆる場所に設置された爆弾は、大きな音を立ててタイマーがなっている。だけど、この階の爆弾には携帯電話がついている。

「この爆弾、時限式でもあるが、遠隔操作でも爆破できるみたいだ。」秋間さんが言った。

「犯人はここで俺らをぶっ飛ばして、さらに上に行かせないみたいだね。」拓也さんが言った。

「生き残ったとして、この量だったら、普通は致命傷を負わせることができる。」

「ああ。そろそろ爆発するかな。」拓也さんが冷静にそう言った。

 そう言った時、周りの爆弾から起爆装置の電話の音がした。

「––––!」僕は一瞬目を見開いて驚いたが、すぐに恐怖が僕を襲って、目を瞑った。

 耳が壊れそうな爆発音がした。

 何秒立っても何も起こらない。衝撃波も何もない。

 僕はゆっくり目を開けた。

 爆発によって出た煙が僕たちを囲っているが、こっちには来ない。台風の目のように僕たちの周りだけ煙がなかった。

「翔くん、そのすぐ目を瞑るの癖やめた方がいいよ。この隙に犯人が襲ってきたら反撃できないでしょ。」拓也さんが言った。

 僕は何が起きているか理解した。拓也さんが『大気操術』を使って、爆発の衝撃を抑えたんだ。

「この前はたまたま力が発動したけど、普通なら自分で発動させられるようにならないといけない。」真剣な声拓也さんが言った。

「すみません…」

「まあ、今回はいいよ。これから気をつけてねという話だから。それより、上に行こう。」さっきまで真剣だった拓也さんは急に軽くそう言った。

 ところどころ崩れていたが、足場はまだあった。犯人の攻撃に備えて、拳銃を準備した。

 このビルは50階建てだ。

 45階から48階には何もなかった。49階には爆弾がまた数個あったが、遠隔式ではなかった。その爆弾をまた爆発物処理班に任せ、最上階に向かった。

 先手を撃たれないように僕たちは静かに階段を上った。

「多分犯人は次の階にいる。今の調査では、犯人は特殊能力を持っていない。一斉に突入して、有希ちゃんの救助と犯人を逮捕する。いなければ、即月見さんに連絡をする。」拓也さんが聞こえるか聞こえないかぐらいの声で言った。

 僕たちは声を出さずに頷いた。

 階段の上まで行った時、微かに声が聞こえた。

「有希ちゃんを助けに来た仲間は死んだ。44階に仕掛けた爆弾でね。ねぇ、早く教えてよ。なんで君たちは私の弟を殺したの?弟は確かに罪を犯した。だけど、殺す必要はなかったんじゃない?ねぇ、なんで?」

 女の人の声だ。今にも泣きそうなその声は徐々に大きくなり、最後の「なんで?」が暗いビルに響いた。

「答えてよ。」急に小さくなった声で女がそう言った。

「もういいでしょ。どうせもう誰も助けに来ない、私たちは死ぬ。なら、最後にそれだけ教えて。」

 答えはなかった。

 どさっという音がした。そして大きなため息が聞こえた。女の人が地面に座り込んだのだ。

「今だ。」拓也さんが言った。

 僕たちは部屋に入った。部屋の真ん中に犯人、天城慶花が座ったいて、犯人の目の前には塩野さんがいた。塩野さんは犯人のことを睨みつけていた。

「––––!何で生きてるの⁈さっき爆弾で殺したはず…」天城慶花は飛び上がるように立った。

「君は忘れてないか。俺ら特殊能力課だ。俺の特殊能力を使えば、爆弾では俺らを殺せない。」拓也さんが言った。

「で、爆弾はどこ?」

「教えるわけないでしょ!」慶花さんは手にナイフを取った。

 拓也さんはナイフを持った犯人に飛びかかった。ナイフを払って、犯人を抑えようとする。

 だが、急に拓也さんが後ろに飛んだ。着地とともに舌打ちをした。

 犯人は爆弾のスイッチを手に持っていた。

「そんなに教えて欲しいなら教えてあげるわ。爆弾はここよ。」

 慶花さんは着てたワンピースの第二ボタンまで外して、胸元を見せた。そこには爆弾があった。

「これだけじゃないわ。有希ちゃんにも同じのが着いてる。このスイッチはこの爆弾の有希ちゃんの爆弾に連動してるから、私の爆弾が爆発したら、有希ちゃんも死ぬ。いい仕組みでしょ。」犯人は笑いながら言った。

「自決する気か。」秋間さんが言った。

「久しぶりね。涼平くん。そういえば、君も弟が死んだ時にいたわね。

 そうよ。私はここで死ぬ。復讐を終えたら、私はこの弟のいない、息苦しい世界から解放されたいの。」

 拓也さんが銃をしまった。

「こうなったら、銃が使えない。君たちも銃をしまえ。持ってても意味がない。」

 僕たちは指示に従って銃をしまった。

 荊軻さんはまたナイフを持っていた。ナイフを持って拓也さんの方に走って無規則にナイフを振った。ナイフは毎回拓也さんの寸前で止まった。

「当たらないよ。諦めな。」拓也さんが言った。

 慶花さんはナイフを振り続けた。彼女は泣いていた。

「お前らのせいで勇人は死んだ!弟はたくさん人を殺した。それは確かにダメなことだ。だけど、死ぬ必要なんてなかった!」彼女が叫んだ。「どうして…どうして!」

 その時、拓也さんは特殊能力を解いた。ナイフが拓也さんの腕を掠り、ワイシャツに血が滲んだ。

「拓也さん!」僕は言った。

「これで気は済んだか?」拓也さんが静かに彼女に話しかけた。

「こんなので気が済むわけないでしょ!」涙を流して彼女は叫んだ。「私はあんたたちが全員滅べば気が済む。あんたたちみたいな人殺しは私がこの手で殺して、この命でその罪を償う!」

 彼女は狂ったように目を見開いた。そして、拓也さんの胸を狙ってナイフを振り下ろした。

「やめろ。」秋間さんの声がした。

 シャッという音がして、ナイフの刃が柄から綺麗に切り離された。

 秋間さんは持っていた日本刀を鞘にしまった。

 慶花さんは驚いた顔で手元のナイフの柄を見つめて、投げ捨てた。

「何で…何で邪魔するの…?」彼女はその場に座り込んだ。

「もうこんなことはやめろ。」そう言って、秋間さんは彼女に一歩近寄った。

「近づかないで!!それ以上近づいたら…」慶花さんは爆弾のスイッチを見えるように持ち上げた。「これを押すわよ。」

 日が少しずつ下がっていた。もう時間がない。

「お前の弟はお前にこんなことしてほしくないと思うぞ。お前が犯罪に手を染めるのは嫌なはずだ。」秋間さんが優しく言った。

「あんたに弟の何がわかる。弟は自分を殺したあんたたちが死ねば、喜ぶはずだ。」彼女が言った。

「そうかもしれない。だけど、お前の弟はお前に死んでほしくない。そう言っていた。お前には生きて欲しいと。だから、こんなことはやめろ。」

 桂花さんの表情が一瞬緩んだが、すぐにまた睨むような表情に戻った。

「あんたのいうことなんて信じられるか。」

 何を言っても慶花さんは揺るがなかった。自分はここで弟を殺した人たちを殺して、自分はここで死ぬ。自分の中で彼女は強く決めていたのだ。

 太陽が少しずつ西に落ちてゆく。

 どうにかしないと、と僕は思った。同時に僕はこう思った。拓也さんの力なら離れていてもこの状況を終わらせられるのに、何で何もやらないのだろうか。

 この調子が続けば、犯人も塩野さんも、もしかしたら僕たちも死ぬかもしれない。それでは犯人の思う通りになってしまう。

 僕は今の状況で何ができるか。僕は考えた。

 そうだ––––。僕は閃いた。

「『大気操術』」僕は犯人に気づかれないように静かに、気合を込めて言った。

 慶花さんの周りの酸素濃度を薄めた。彼女の息が荒くなり、体から力が抜けていった。

 秋間さんがさっと彼女の手からスイッチを取った。そして、倒れてゆく彼女を受け止めた。彼女を寝そべるような姿勢にさせて、受け止めた手を抜いた。

「お見事!」拓也さんが嬉しそうに言った。

「こんな状況でよく新人に全て任せたな。」秋間さんが言った。

「これも新人教育の一環だよ。しっかり実践に慣れていかないといけないからね。」拓也さんが言った。

「まあ、だけど確かに見事だったな。」秋間さんが微笑んでいった。

「ありがとうございます。あの、爆弾の方は…?」僕は言った。

「涼平、そのスイッチでカウントダウンは止められるか?」

 秋間さんがスイッチを色々な方向から見た。

「できない。おまけに、さっき犯人の爆弾を見たところ、解体は無理らしい。」

「だけど、こっちの爆弾解除できそうですよ。」横で縛られていた塩野さんが言った。

「あっ、有希ちゃん、そっちは解体できるのか。」拓也さんが言った。

 僕は塩野さんが縛られていた縄を解いた。

「ありがとう。」塩野さんが拓也さんたちの方を見た。「だけど、体から取れません。」

「どういうことだ?」秋間さんが聞いた。

「なんかこの爆弾を体から取るには鍵がいるらしいです。だけど、その鍵さっき天城が使えない状態にしてしまいました。」

「涼平、君の刀でこれくらい切り落とせるだろ。」拓也さんが言った。

「そういうと思ったよ。」秋間さんが言って、刀を取り出した。

 刀で爆弾は塩野さんの体から離れた。

 塩野さんのコートの右肩が少し切れた。

「これお気に入りだったんですけど…」彼女が言った。

「後で月見さんに直してもらいな。」拓也さんが言った。「それより、次は犯人の爆弾だ。涼平、これも切ってくれない?」

「わかってる。」

 さっと秋間さんは爆弾を切った。ずれ落ちた爆弾を拓也さんが拾って、階段に走り出した。

「拓也さん?」僕は言った。

「翔、爆弾を解体するぞ。」秋間さんに言われて、僕は爆弾の方へ行った。

 爆弾の解体は難しかった。僕は全部メモをとった。終わった頃には頭がパンクしそうになっていた。

 その時上から爆発が聞こえた。

「拓也さん⁈」僕は言った。

「大丈夫だ。」秋間さんが言った。

「大丈夫そうね。」塩野さんが言った。

 タッタッタッという音が階段の方からした。

「よし、帰ろうか!」

 階段のところには拓也さんがいた。

「はぁ、びっくりしました。」僕は言った。

「?」拓也さんは僕をキョトンと見た。

「何でもないです。」僕は言った。

 

 僕は犯人に手錠をかけた。

「犯人を捕まえました。」拓也さんがイヤホンに言った。

「下まで連れていってだって。」

「どうやって、運ぶんですか…?」

 犯人はまだ目を覚まさない。

「有希ちゃん、お願いしていい?」拓也さんが言った。

「わかりました。」塩野さんが言った。

 下まで犯人を運んだら、犯人は警視庁本部に引き取られた。


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