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エクジステンス  作者: さやき
第一章
5/12

特殊能力課

  翔

「特殊能力をコピーする?」

「そう、君はみて理解した特殊能力が使えるようになる。もちろん使いこなせるかどうかは別の問題だけどね。」

「だけど、僕はこれまで特殊能力使いに会ったこともないのに、どうして…」

「私もそこは不思議だ。私の能力はその人の名前、能力、好き嫌いや家族構成などはわかるのだが、流石にその人の過去までは見えないんだ。だけど、多分、昔君は特殊能力使いに会ったことがあるのだと思う。」

「君はまだ体力もそれほどないし、能力も使いこなせないから、まずは訓練と他の任務の付き添いして、新しい能力を得ることかな。あと、この上は寮だから、今日は自分の部屋作りだね。」月見さんが言った。

「はい!」僕は言った。

「以上だ。」そう言って、月見さんは立ち上がった。

 僕は月見さんの後に応接室を出た。外には拓也さんがいた。

「また盗み聞きしてたでしょ。」月見さん呆れた顔で言った。

「翔くんの能力が気になっちゃってね。」拓也さんがこっちを向いた。「特殊能力をコピーする力…早速俺の能力知りたくない?」

「あんたは明日期日の書類があるでしょ。まだ翔くんは訓練ができない。体力をもっとつけないといけない。」

「だけど、自己防衛のために多少は何かできるようにならないと。」

「言いたいことはわかる、だけど今の状態だったら何をしても意味がない。今日は休むべきだ。明日からはある程度何かできるだろう。」

「そっかー。じゃあ、とりあえず翔くんの部屋作り手伝うかー。」拓也さんが言った。

「書類はどうするんだ。」月見さんが呆れた顔で拓也さんを見た。

「明日までに絶対終わらせるから!」拓也さんがお願いというポーズをしていった。

「まったく、仕方ないやつだな。」

「やったー!じゃあ、部屋に行こうか!」拓也さんが子供じみた声で言った。

 僕の意見は…?

 僕たちは2階に上がった。廊下を進んで右側の二番目の部屋に入った。中には、シンプルなベッド、机、戸棚と小さいキッチンがあった。

「さらに必要なものはこれから揃えていくとして、まずは掃除かな。」拓也さんが言った。

 僕たちは廊下の一番奥にあった用具室から雑巾などの掃除用具を取った。雑巾掛けからした。

「翔くんって、いつから路上暮らしなの?」急に拓也さんが聞いてきた。

 いきなり聞かれて、どう答えるかがすぐ頭に上がらなかった。

「あっ、別に言いたくなかったら言わなくていいよ!」拓也さんは焦って言い足した。

「ちょっと答え方に迷っただけです。僕は物心がついた頃からずっと路上で暮らしてました。だから、こんな場所住めることはすごくありがたいです。」僕は拭いてた床を見ながら言った。

「親はどうしたの?」心配するような顔で拓也さんが聞いてきた。

「わかりません。親の記憶は一つもないし、生きてるかどうかもわかりません。」

「そうか…」拓也さんが言った。

「あっ、もう四時じゃん!翔くんついてきて!」

「えっ?」なんのことが分からず、とりあえず拓也さんについて行った。

 僕たちは再び1階の事務所に戻った。僕がここに来た時と比べて、女の人が二人増えていた。

「全員揃ったか?」月見さんが言った。

 秋間さんが「はい。」と答えた。

「翔くん、特殊能力課のみんなだ。みんな、今朝スカウトした翔くんだ。」

「よ、よろしくお願いします。」僕はお辞儀をして言った。注目を浴びて、少し顔が赤くなっている気がした。

「私は国枝淳弥、よろしくお願いします。」

「私は杉本彩香。よろしくね。」

「私は塩野有希。よろしく。」

「僕は佐野和馬。これからよろしく!」

 みんな笑顔で迎えてくれた。

 国枝さんは茶髪で垂れ目の青年だ。。僕と同じ白いワイシャツに紺色のネクタイの上にジャケットを羽織っていた。

 杉本さんは僕と同じぐらいの中学生だ。白茶色の髪に大きな瞳で、可愛らしい女の子だ。彼女だけは、ここの制服だと思われる白いワイシャツに紺色のネクタイを着ていなくて、ブレザータイプの制服を着ていた。

 塩野さんは高校生ぐらいの女性だ。黒髪に整った顔で背が高かい、美しい人だ。ベスト以外僕と同じ服装の上にベイジュ色の薄いコートを着ていた。

 佐野さんは杉本さんのような白茶色の髪で、耳にはピアスをつけていた。セーターの下に白いシャツと紺色のネクタイを着ていた。

「新人が入ってきたわけだし、今日は新人歓迎会を兼ねて、どっか食べに行ここうと思っているのだけど––」月見さんが言い始めたところ、「いいね!どこ行く?」と拓也さんが割り込んだ。

「ここら辺で言うと、胡桃亭とか良いんじゃないっすか。」佐野さんが言った。

「あそこの杏仁豆腐美味しいよね。」杉本さんが塩野さんに話しかけた。

「そうだね。」にっこり笑って、塩野さんが答えた。

「じゃあ、胡桃亭で良さそう?」

「みんな良さそうなら、僕はそこでいいですよ。」国枝さんが言った。

「涼平と敏美さんも胡桃亭で大丈夫?」拓也さんが聞いた。

「俺は良いぞ。」秋間さんが言った。

「私はみんなにお任せするよ。」月見さんが言った。

「翔くんは胡桃亭で良い?」拓也さんが聞いた。

「えっ、あっ、はい!」まさか聞かれると思っていなかった僕は慌てて答えた。

「じゃあ、みんなここに5時集合!じゃあ、かいさーん!」そう言って拓也さんは階段へ向かった。

 

 みんな次々と階段の方へ行った。僕は別に着替える必要もないし(そもそも着替えるものがない)、とりあえず、部屋へ戻って、ベッドの上に座った。ベッドは春の草よりも柔らかく、気持ちよかった。部屋の中は暖房で温められ、外より断然に暖かかった。

 僕は今日のできごとを思い返した。いったいあの男は誰だったのだろうか。

 あの男が所属している組織は僕を狙っている。僕はいつか殺される。

 僕は今更恐怖に呑まれ、うずくまって、静かに涙を流した。やっぱり死ぬのは怖い。


 

 拓也

「敏美さん、翔くんは『烏』に狙われています。」俺は自分の仕事机に座りながら、横に立っている敏美さんに言った。

 『烏』は東京を拠点とする、凶悪犯罪組織だ。組織の中には特殊能力使いが少なからずいる。

「知っている。私は今日まで誰にも翔くんのことを話してない。なのに、今日翔くんは殺されかけた。」敏美さんがそう言った。

「何か対策をしないといけないのでは。」

「それぐらいわかっている。」月見さんが顎に手を当て、考えながら言った。「報告ありがとう。」

「はい。」

 誰にも翔くんのことは伝えてなかったか…じゃあどうしてあそこに『烏』がいたんだ?今朝盗聴器か何かで聞いて急遽来たのか?だけど、この事務所は結構警備が固い。監視カメラはあらゆるところにある。監視カメラには何も映ってなかった。身を隠す特殊能力か?それとも、敏美さんの思考が『烏』の特殊能力使いに読まれているのか?

 階段から足音がした。そこには翔くんがいた。

「あっ、翔くん。早いね。」

「暇で…ここに来たら誰かいるかなと思って。」翔くんが言った。「拓也さんは何をしているのですか?」

「書類だよ。終わらせないとこの事務所から出さないと敏美さんがうるさくてね。」

「当然じゃない。明日までなんだから。後回しにした拓也がダメなんでしょ。」敏美さんが言った。

「…あっ!いいこと閃いた!翔くん、読み書きできる?」

 キョトンとした顔で翔くんは僕を見た「まぁ、多少は…なんでですか?」

「じゃあ、書類手伝って!」

「こら、自分の書類は自分でやりなさい。」敏美さんは俺を軽く叱った。

「チッ、敏美さんは厳しすぎるよ。」

「はいはい。喋ってないで書類を書きな。もうすぐ5時だ。」

 

  翔

 5時に建物を出た。拓也さんは秋間さんに書類を手伝ってもらって、どうにか5時までに終わらせた。

 あたりは日が暮れ始めていて、薄暗かった。

 

  ???

「目標を確認した。特殊能力課が周りにいます。」俺はマイクに言った。

「監視を続行しろ。目標が一人になることはないと思うが、人数が減ってからではないと、こっちに勝ち目はない。」イヤホン越しの声が入った。

「了解。」

 

  翔

 誰かと食べるご飯は本当に美味しい。

「翔くん、この後俺と買い物行かない?色々買わないとダメなものあるでしょ。」拓也さんが食べ物を頬張りながら言った。

「僕、まだお金もないですし、遠慮しときます。」

「俺が払ってあげるよ。そうすれば、君は自分の給料を自分が好きなものに使えるでしょ。俺は君にこれからの人生を楽しんでほしい。遠慮しなくていいよ。」拓也さんが微笑んで言った。

「ありがとうございます。だけど、拓也さんに払ってもらうなんて申し訳ないです。」

「遠慮しいねー。そこはせっかくなんだから、遠慮しないで行こうよ。まぁ、君が何を言おうと、俺は君を買い物に連れて行くけど。」拓也さんが言った。

「えっ、だけど––。」

「諦めた方がいいよ。拓也さんが一度決めたことは変えられないから。」横に座っていた佐野さんが言った。

「そうなんですか…」

「拓也さんと接する時は遠慮することを忘れた方がいいですよ。」国枝さんが言った。

「そうだな、こいつには遠慮などいらない。」秋間さんが言った。

 みんな口を揃えて「拓也さんには遠慮はいらない」と言った。

 結局、僕は拓也さんと買い物に行くことになった。杉本さんが着いていきたいと言ったので、三人で買い物に行くことになった。

 

  ???

「護衛が二人に減りました。」

「わかった。君のタイミングで仕掛けろ。」イヤホンからの声が入った。

「はい。」

 

  翔

「何から買う?」拓也さんが言った。

 僕たちは近くのショッピングモールみたいなところに来ていた。

「まずは日常必需品じゃない。」杉本さんが言った。

 僕たちは歯ブラシや常備薬などの日常必需品を買った。そのほとんどは拓也さんと杉本さんが勝手に選んでしまい、僕には決定権がなかった。

「次は服買いに行こう!」拓也さんが上機嫌に言った。

 僕たちは色々な服屋を回った。その度にたくさん服を試着させられ、僕は疲れ切っていた。いつの間にか拓也さんと杉本さんは僕の服を必要以上に買っていた。僕はその荷物をほぼ全て持っていた。

「そろそろ戻るか。いるものは全部買ったね。」拓也さんが腕時計を見ながら言った。

「そうだね。そろそろ帰らないと月見さんに怒られちゃう。」杉本さんが言った。

 ショッピングモールから出て、道路の方へ歩いた。真っ黒な空に真っ白な三日月が浮かんでいる。

「はぁ、疲れた。」拓也さんが腕をのばしながら言った。

「本当に疲れたね。だけど楽しかった––––」杉本さんが急に静かになった。

 僕たちは杉本さんの方に振り向いた。

「彩香ちゃん!」拓也さんは叫んだ。

 杉本さんは腹部を押さえて、苦しがっていた。服に血が滲んでいた。指の間から地下滴り落ちていた。

 そして、後ろには血まみれのナイフを回しているあの男がいた。

「お前は今朝の––‼︎」僕は言った。

「俺は桐ヶ谷透だ。今回こそこの任務を遂行する。」


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