曾孫
「「ただいま〜」」
玄関から聞こえた声に反応して乃々花が慌てて二階から降りてくる。
「パパママおかえりなさい!」
今にも飛び付きそうな勢いは直前で止まった。宙光と明日葉の間に見知らぬ少年の姿があったからだ。
「……だぁれ?」
「はじめまして乃々花ちゃん。俺は喜屋武大君、乃々花ちゃんのヒイお祖父さんだよ」
「ひ……ひー?」
「乃々花、大君ヒイお祖父さんだよ」
横から宙光が乃々花に視線を合わせて言った。
「ひ、ひー……ヒージィ?」
「そうだよ。俺はヒージィだよ乃々花ちゃん」
乃々花は顔を明るくして大君を指差した。
「ヒージィ!」
「いいの? 大君さん?」
明日葉が大君を見た。
「いいのいいの。乃々花ちゃんが呼びやすいのが一番だよ」
「ヒージィ。のんちゃんは、のんちゃんだよ」
「うん、解ったよのんちゃん」
「うん!」
乃々花は元気良く頷いて両親を見上げた。
「パパ、ママ、ありがとう! 私、こーんなお兄ちゃんだけが欲しかったの!」
「あはは、良いお兄ちゃんになれるよう、ヒージィ頑張るよ」
「うん。のんちゃんも、良いのんちゃんになるよ」
「偉いね。のんちゃんは幾つ?」
「4歳! ヒージィは?」
「ええっと……」
大君は宙光を見た。宙光は両手を広げて答えた。
「10歳だよ」
「わ、おっきい。のんちゃんと、仲良くしようね!」
「うん。のんちゃん、これからよろしくね」
「うん。よろしくね!」
乃々花は満面の笑みで答えた。
「そうだ! ハナもこっち来て! ヒージィが来た!」
「はい乃々花様、ここに」
奥の部屋から若い女性型フューマンが現れた。
「ヒージィ、こちらがハナだよ!」
「あ、これはどうも」
「大君様。私はこの家でお世話になっております、フューマンのハナと申します。大君様のことは宙光様、明日葉様から伺っておりますので、御用がありましたら何なりとお申し付けください。これから、どうぞよろしくお願いいたします」
ハナは穏やかな口調で挨拶した後、整った姿勢で丁寧にお辞儀をした。
「これはご丁寧に。既にご存知のようですが同じくフューマンの喜屋武大君です。こちらこそ、よろしくお願いします」
そんな様子を見て、宙光と明日葉は顔を見合わせて笑った。
「お爺ちゃん、これが我が家だよ」
「大君さん、遠慮は厳禁だからね」
「うん。じゃあ、改めて言わせて貰おうかな」
大君は照れ隠しに一つ咳払いした。
「ただいま」
それに宙光、明日葉、乃々花、ハナが満面の笑みで答えた。
「「おかえりなさい!」」