ぼくが かんがえた さいきょうの フューマン
その頃、激化が進む前線では遂に自衛隊が到着、参戦することで中国部隊を押し返しつつあった。
「くそっ! くそっ! 自衛隊まで来ちまったら、これは正直、大分キツいぞ!」
高憂炎には焦燥の色が浮かんでいた。
「おい何永邦。こうなりゃ暴走フューマンの停止を交渉材料に撤退した方が良いんじゃないのか? 分が悪ぃぞ」
「く……ここまで来ておきながら」
その時、悔しさ滲む何永邦の視線の端を横切ったのは二人の少年だった。
「喜屋武、大君……この状況で何処へ行こうと言うんだ? ……まさかフロンティア?」
何永邦は何かを考え始めた。
「おい永邦! 聞いてんのか!」
「聞いている」
そう答える何永邦の表情に不気味な笑みが宿った。
「そうか、喜屋武大君。あれもまた我々の求める一つの理想。こんなところに転がっていようとは。ははは」
何永邦は何人かの兵に直接声を掛けると、それらに大君を追うよう指示を下した。
そして追われる身となった大君と友親もすぐにそのことに気付き反応していた。
「どどど、どうしてこんなことになったでござる~!」
武装したプロの兵に追われる時点で逃げの選択肢を捨てざるを得なくなった二人は辛うじて建物の影に隠れた。
「ししし、死ぬでござるか。ここで殺されて死ぬでござるか」
「最悪、俺が可能な限り引き付ける」
「死ぬならせめてエーナさんの揉みたかったでござる……無念」
「聞けよ」
友親は念仏のようなものを唱え始めた。
「命懸けで戦いに出るとか、黙ってりゃ格好良いのに余計なことを言うから」
「黙ってれば揉めたでござるか」
「少なくとも君は黙ってた方が確率高そうだ」
「揉みたいのに揉みたがらない方が揉みやすいとはこれ如何に」
「そう言うもんなんだよ。てか、そんな話してる場合じゃない。どうやら追い込まれた」
「どどど、どうするでござるか?」
「一か八か、立ち向かうしかないな」
「無理無理無理無理。相手はプロ、こちらは素人。敵を知り己を知れば百戦してもアウツですぞ。例え大君殿に音響兵器があっても相手は三人、指向性では複数相手に歯が立たないでござる」
「だけど、やるしかない状況だろ? ま、そこで見ててくれって」
大君は言語変換機能を使用し、両手を挙げて兵の前に姿を晒した。
「どうして俺を狙うんだ? お前達の目的は何だ?」
兵達は最初こそ大君に銃を向けていたが、大君の幼い容姿もあって完全に油断をした様子で構えを解き、嘲笑した。
「ははは、どうした? もう逃げないのか」
「逃がすつもりは無さそうだからな。それより質問に答えてくれよ」
「その必要は無いな」
「じゃあ聞き方を変えるけど、中華フューマンの暴走で視線を集めておいて、真の目的は未来島の何処かにあるだろうSシステムを奪取すること、で合ってる?」
刹那、兵達に緊張が走った。
「やっぱり図星なんだ」
「やるじゃないか。その通りだ」
「なら、自衛隊が投入されたこの状況では目的達成は最早絶望的と言う訳か」
「確かにそうだ。だが、我々はこの場においてもう一つの可能性を見出した」
「ああ……それって、もしかして俺?」
「そうだ。抵抗せず一緒に来い。そうすればそこに隠れているガキは見逃してやる」
「解った。でも、その前に暴走フューマンを止めてくれないかな? 持ってるんでしょ? 暴走フューマンを止める方法」
「ここには無い。だが、お前が大人しく一緒にくれば止めてもらえるだろう」
「ふうん。実在はするけど、君達は持っていないんだね」
「お前には関係の無いことだ」
「あるよ。お陰でここで立ち止まれないことが解った」
「何を言っている? お前はここで終わりだ」
「あんまり舐めるなよ。緊急事態に備えて特別に付けてもらった機能をくれてやる」
「なっ! 兵器内臓か!?」
兵達は銃を構えようとしたが大君の初動の方が早かった。
「遅いっ! グレアブラスター!!」
刹那大君から放たれる強烈な閃光。その照射を受けた兵達はたちまち姿勢制御を失って地に倒れた。それを見下ろしてから大君は小さく安堵の息を吐いた。
「だ、大君殿。一体これはどうしたことでござるか……?」
恐る恐る顔を覗かせる友親に大君は余裕で微笑みかけた。
「説明しよう。グレアブラスターとは、人間の脳が視覚情報を受信し処理する能力を超過した激しい光の点滅により眩暈や気絶等の症状を強制的に引き起こさせる武器である」
「酷い説明口調でござる」
「いや~思ったより凄い威力だったな。やっぱ俺の時代よりも進歩してるのかな。実は前の誘拐事件以降、もしもの時に備えて付けてもらったんだよ。少し強力過ぎたけど」
「さ、最強でござる! ぼくがかんがえたさいきょうのフューマンでござる!」
「ほれほれ。そんなことは良いから、早くフロンティアに向かうよ」
大君は目を輝かせる友親の背を押してその場を後にした。
「でもきっと、技名を叫ぶ必要は無かったでござる」
「厨二病に言われたくない」






