フューチャーアイランド
「元気にしてたか?」
「うん」
「宙光とは、どうだ?」
「おかげで、仲直りできたんだ」
「そっか。宙光、事件の責任感じてただろ」
「うん。でも、宙光の隣には明日葉さんがいてくれたから」
「その後はどうなった?」
「何も。僕が被害を訴えなければ何も問題は無いよ」
「……そうか」
「僕も、やっと父さんの気持ちが解ったんだ。僕も、宙光の父親だ」
「良かった」
「父さんを目覚めさせるって、凄く頑張ってくれたんだよ、二人とも」
「二人にもお礼言わなきゃな」
「うん。それと、二人とも結婚したよ。僕にも孫が出来た。もう4歳だ」
「本当か!? そんな嬉しいことが……お前、可愛くてしょうがないだろ?」
「可愛くて言葉にできないよ。とても元気で賢い女の子なんだ」
「名前は?」
「乃々花」
「乃々花ちゃんか。会えるのが楽しみで仕方ないな」
「今日は色々検査して入院してもらうけど、明日になれば会えるよ。父さんにはこれから、宙光の家族として暮らして欲しいと思っているんだ、乃々花のお兄さんとしてね」
「そっか、今の俺は10歳ぐらいだもんな。でも、家族の邪魔にならないか?」
「宙光も明日葉さんも、むしろそれを望んでいるようだよ」
「……そっか。ありがたいな」
「どの道、10歳じゃ一人暮らし認められないしね」
「あー、色々問題がありそうだ」
「いっそ子供になりきって小学校から通う?」
「馬鹿言え。今更小学校は無理だよ」
「習い事は? また空手や水泳でもやってみるかい?」
「おいおい、冗談だろ。子供の頃の話だよそれは」
「じゃあ大学は?」
「お、それなら良いな。これから生きていくなら、今の時代のことも知っておかないと」
「それなら宙光の大学に行きなよ。なんたって父さんは被検体でもあるし都合が良い」
「宙光の大学?」
「ああ。宙光のやつ、29歳の若さで准教授だよ。東京脳機大学のね」
「東京脳機大学?」
「そう。言ってみればここはフューマンに関する専門家が集う大学、街。いや? 丸ごと一つの島なのさ、ここは」
「島!?」
「そう。フューマンとは未来と人間の組み合わせから成る言葉。この国の産業の一角としてもう無くてはならない存在。ここはそんなフューマンに携わる人達が一つになって未来を切り開くための島」
昴流は病室の窓を背に両手を広げた。
「フューチャーアイランドさ」
刹那、窓の外に無限に広がるとさえ見える青空と景色が、風に乗って飛び込んでくるかのように大君には思えた。
「は、はは。スケールがデカイな」
「だろう? 娯楽から日用雑貨、居住区に教育、病院、警察、消防。ここに暮らす全ての人の生活を丸ごと満たす施設がここ未来島には揃っている。まさに産官学連携の最たるものさ。もちろん僕達FHF本社もここに移した」
「凄い、凄過ぎるな」
「御面さんにも協力して貰ってね。ここにはありとあらゆる最先端の技術が揃ってる。そして宙光は、その中心たる研究者にして次世代の育成にも携わる超一流のスペシャリスト」
「凄いな。宙光、そんな風になっていたのか」
「我が子自慢だけどね、脳機工学と言えば既に宙光はちょっとしたものさ。そう、父さんにも用いた脳と機械の融合技術も宙光が作り上げたんだからね」
「そうか……それじゃあ俺も研究に協力しないとな」
「頼むよ父さん。これから、フューマンを取り巻く環境は一気に変わっていくはずさ」
「嬉しいよ。お前達が成し遂げようとすることを、またこの目で見られるなんて」
「見てて。僕はこの世界をもっともっと幸せにしてみせる」
「ああ。見せてくれ、聞かせてくれ。お前達が作る未来の話を」
大君と昴流は時間を忘れて語り合った。