大人のカウンセリング
ガチャリ。
大君が奥の部屋に移ると背後で鍵を掛ける音がした。
「ん? 鍵掛けるの?」
「誰か来たら困るじゃん? カウンセリングするのに」
「そういうものなんだ」
「そうそう。それよか服脱いでそこのベッドに横になって」
「はあ、研究室なのにベッドもあるんだね」
「まあ、ここはフューマンを弄ったりするしね~」
「なるほど。しかし、カウンセリングって服も脱ぐんだ。上だけで良いよね?」
「最初はね」
「最初?」
大君は言われるがままに従ってベッドに横たわった。瑛奈がベッド周りのカーテンを閉めて何やら準備をしているのを音で聞きながら大君は天井を眺めていた。
「ね~ヒー君、アタシ何歳に見える?」
「え? かなり若いよね……でも3年生って言ったよね、てことは大学3年だから……」
「ダーメダメ! 考えないで直感で」
「もしかしてエーナちゃんも中学からの入学? てことはまさか17歳?」
「あ~もう、ズルいな~! でもブッブー! 実は4月で18歳になってまーす」
「うわ、凄い。優秀なんだね……見た目によらず」
「酷っ! ヒー君人を見た目で判断するタイプ?」
「いや、そんなことは無いよ」
「じゃあ、アタシみたいなギャルは嫌い?」
「いや? むしろ好きだけど」
「たっは~! 直球~! でも良かった」
大君は何やら布の擦れる音に異変を感じてカーテン越しの瑛奈の影を見た。丁度そこへ顔を突っ込む形で瑛奈が現れた。
「アタシ思うんだけどさ、ヒー君が使命を果たすために、必要なものってあるじゃん?」
「な、なに?」
「いや~、それが結構大事なものでね? 心理面を担当するアタシとしては、何とかしてあげないといけない訳じゃん?」
「な、何のこと?」
「ヒー君も中身はおっさんだし~、色々酷い目にもあったようだからさ。ホラ、年齢的にも精神的にも、色々と枯れちゃってるんじゃないかって心配……みたいな?」
「まさか……」
「ヒー君もアタシのこと好きって言ってくれたし、良いよね? えいっ」
そこでカーテンを割って入って来たのはあられもない姿の瑛奈だった。
「ななな、何やってんのエーナちゃん!」
「えーいっ!」
飛び上がる大君を押さえつけるように瑛奈は上に飛び乗った。
「逃げちゃダーメ。これは大事なカウンセリングでーっす」
「いや流石にそれは嘘だろ? なんでそんな格好で」
「ん~? 正常な欲求を保持しているか確認するために一番手っ取り早い方法だよん。あ、子供なのにちゃんと反応してるじゃん、ウケる~」
「だ、だ、駄目だよ!」
逃げようともがく大君の手を瑛奈は力づくで押さえつけた。
「こらこら。子供の力で逃げられる訳ないじゃん? センセもま~だ帰って来ないよ~? 本当は嫌じゃないんでしょ~? 観念するじゃ~ん?」
「ちょ、ちょ、ちょ! 駄目だってそんなの」
「たはは~。往生際が悪いな~。初めてじゃあるまいし」
「そ、そういう問題じゃないでしょ。駄目だよそんなに自分を軽く扱っちゃ」
「ん~? それはどうだろ~? 既成事実さえあればロイヤルファミリーじゃん? むしろ逆に自分を高く売ってるんじゃね? みたいな。ヒー君もソッコーで使命達成だし? これはもう油断したヒー君が悪いレベルっしょ」
「で、でも俺、さっき彼女できたからっ!」
「そんなの知らな~い。ていっ!」
瑛奈はとうとう大君に飛び掛った。
「うわーーーー!!」
大君の声は誰もいない研究室に虚しく消えた。






