⑧マスターシェフ
ニナ先生の案内で俺たちは学園食堂に来た。
学園食堂は、学園の中心に有り、その周りを様々な棟が囲むように配置されている。学園食堂も例に漏れず立派な作りをしていた。
一度に学園生全員が入れるくらいのデカさだ。
とりあえずここで一旦自由解散して、昼休みが終わったら教室へ集合することになっている。皆ぎごちないながらもクラスメイト同士で話し合い、いくつかのグループのようなものが出来ていた。
そのままお昼へと洒落込むようだ。
ふむ、俺も馴染むために声でもかけるとするか。
「アンタは、お昼何にするの?」
そう意気込んでいると後ろから声をかけられた。
振り向くと、小柄で気の強そうな眼差しをこちらに向けたアイナがそこにいた。
「んー、僕は日替わり定食にしようかな。アイナは何にするんだい?」
「アタシはもちろんデラックスステーキ定食特盛よ!」
もちろんが最も似合わない小柄な体型をしているが、一体どういうことなのか、すごく気になる。
「...沢山食べるんだね。」
「...何よその間は。言いたいことがあるならハッキリ言いなさいよ。」
「いや、何でもない、何でもないんだ。」
「ふーん?なら気にしないけど。ほら、並ぶわよ。」
どうやら、アイナとお昼ご飯を食べることになっているようだ。いきなりボッチにならずに済んでよかった。まあ、アイナに声を掛けられなくても、自分からどこかのグループに声をかけて合流するぐらいな容易く出来たが。
学園食堂は学園生であれば無料で利用出来る。まあ、高い学費を思えば当然だな。
「ねえ、知ってる?ここのご飯ってものすごく美味しいらしいわよ。」
「へー、そうなんだ?」
「知らないの!?ここは料理の才能を持った、マスターシェフと言われている料理人がレシピを作ってるんだって!だからものすごく美味しいんだって!」
アイナが興奮したように早口で喋りだした。この感じ、どうやら食べ物が大好きみたいだ。
「マスターシェフ!それは楽しみだね!」
笑顔を作って愛想よく、そう返事をしておく。
「あっ...ごめんなさい!アタシご飯の話に目がなくて....」
アイナは顔を少し赤くしながら恥ずかしそうにそう言った。我に帰ることが出来たようだ。
「顔、赤いよ?」
バシッ!!
余計なことを言ってしまったみたいだ。アイナに肩を思い切りたたかれた。痛い。
その後、それぞれ定食を受け取ったあと、適当に空いてる席を見つけ、着席した。
「「いただきます。」」
今日の日替わり定食は、オムライスだった。
マスターシェフのレシピ、いざ実食。
パクっ。
「お、おいしい!」
このオムライス、ものすごく美味かった。
「ふふん、そうでしょ。」
「なんでアイナが得意げになってるの。」
「アタシの言った通りだからよ!」
「はいはい、さすがだよ、アイナ。」
「分かればいいのよ、分かれば!」
それにしてもほんとに美味い。
学園食堂には毎日欠かさず、通うことになりそうだ。
これがマスターシェフのレシピか。
才能よ、恐るべし。