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④自己紹介



 入学式も無事に終了し、今俺たち新入生は自分のクラス担任について教室へと移動中だ。広大な敷地を誇る王国学園には様々な建物が存在する。


 今向かっている教室や講堂がある座学棟、実技や実習を行う演習棟、教員棟、学生寮、食堂、入学式が行われていた大ホール、小ホール、そして闘技場、そのほか小さな建物を挙げだしたらきりがない。


 教室に到着し、二十人の生徒が各々振り分けられた机に着席した。俺の席は窓際の一番後ろだった。教壇に立ちこちらの様子をうかがっているクラス担任はかなり若く、まだ新人感が抜けていない様子がうかがえる。


「皆さん初めまして!私がこのクラスを担当することになった、二ナ=ニーナです。よろしくお願いします。さて、まず初めに、自己紹介をしましょうか!」


 二ナ先生は、元気よくそう言った。入学するまでの間、学園というものについて徹底的に調べつくした。これからの学生生活を左右するといっても過言ではない最初の自己紹介。


 ここは少し気合を入れていこう。

 

 廊下側の窓際、一番前の席に座っている少し小太りの彼から自己紹介は始まった。


「俺はニック=ロイム。ロイム家の次男だ。よろしく。」


 ロイム家は貴族階級の中でも上位に位置している。つまり彼の学園内のカーストも上位に位置するということだ。


 貴族とは民から税を受け取り、王国の統制や公務などに務める家系の総称だ。そのすべてが世襲制となっている。貴族階級の中では底辺から上位まで序列がはっきりしている。より国王に貢献している家が上位に来るという仕組みだ。


 その後の自己紹介が進み中堅から上位にかけての貴族子女ばかりであることが分かった。


「ジャ、ジャック=ジェネル、です。・・・よろしく。」


 半ばに差し掛かったころ、自信がないような小さな声が聞こえてきた。彼はいわゆる底辺貴族の子女だ。おそらく同級生の家名に圧倒され委縮してしまったのだろう。そして彼の心情が、貴族階級ひいてはクラス内のカーストの厳しさを表している。


 俺は今回、辺境の富豪商人の一人息子に身分を偽っているため、カーストとは無縁だが、ジャックはこれから苦労しそうだ。がんばれジャック、心の中で声援を送っておいた。


 そして彼女の番が回ってきた。


「初めまして。リリレイル=リーズファルトですっ。気軽にリリって呼んでくださいっ。そして皆さんどうぞ仲良くしてください!」


 あの生徒会長と瓜二つな顔、はつらつとした声、きれいな髪に、クラス内の男子生徒は、もちろんニックもジャックも、くぎ付けになったはずだ。


「あっ、ちなみに生徒会長は私のお姉ちゃんですっ・・・」


 恥ずかしそうにしながらも、自慢げにそう続けた。東侯爵の娘、このクラスのカーストトップはリリに決まった。まあ、当の本人はそんなこと一切気にすることはなさそうだが。


 彼女は調査対象にも、リストにも載っていなかったが実際はどうなのだろうか。数少ない彼女の情報を記憶の底から掘り起こしてみたが、何かを企んだり、危険な思想を持ち合わせるようなタイプではないように感じる。


 そんなことを考えている間に、自己紹介は俺の番に回ってきた。俺は静かに、それでいて堂々と立ち上がり、胸を張って、クラスメイトを見渡した。「ふぅ」と小さく息をつく。


「初めまして。僕はゼルノ=ブリッツ。田舎商人の一人息子だけど、皆さえよければ仲良くしてほしい。どうぞよろしく!」


 明るく、そしてハキハキと、やさしい声色で、簡単に自己紹介をした。我ながら中々うまくできたと思う。これで俺は好印象を抱いてもらえたはずだ。


 後は、これからの行動で、学園内で無難に過ごすことのできる立ち位置を確立していく。そうすることで、「最後の仕事」を進めやすくなるはずだ。



 最後のクラスメイトが自己紹介を終えるころには、そわそわしていたクラスの雰囲気も落ちついてきた。


「さて、皆さんがこれから三年間一緒に頑張る仲間です。仲良くしてくださいね!」


 最後に二ナ先生がそうまとめて、新入生が最初に行うレクリエーションは終了した。

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