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⑱闇に潜む



「最近、学園周辺で不審者が目撃されています。目撃されているは夜の10時から12時頃なので、皆さんその時間は外出を控えるようにしてくださいね!」


 午後の授業が終わり、終礼の時間の最後にニナ先生の注意喚起聞いてから、解散となった。


 迎えた放課後、学園の構造、生徒と教員の情報を集め終えた俺は、不審者の事が少し気になり、そっちの調査を行うことにした。


 荷物をまとめて教室を出てから、教員棟に戻るニナ先生を追いかけた。座学棟を出て少し進んだ先で、ようやくつかまえる事が出来た。


「ニナ先生。すいません、ちょっとお聞きしたいことがあって。よろしいでしょうか?」


「あら、ゼルノ君。もちろん大丈夫ですよ。どうしました?」


 よし、ここから聞き出すのはもちろん不審者に関する情報だ。


 しかし、あまり突っ込んだ質問をすると、変な疑問を持たれる可能性があるため、生徒として違和感のないラインを見極める必要がある。


「不審者についてお聞きしたいのですが。僕、少し怖くて、それで具体的にどの辺で目撃されているのかだけ教えて貰ってもいいですか?」


「不審者のことですか、怖いですよね。主に目撃情報が出ているのは、確か図書館棟の周辺です。あの辺は備品室や、小屋、生徒会室など、小さな建物がいくつかあるので、物陰が多いから気を付けてくださいね。」


 なるほど、生徒会室か.....これは、どうやら当たりか?


 思ったよりも早く、「最後の仕事」成果が上がるかもしれない。


「ありがとうございます。普段立ち寄らない場所なので少し安心しました。」


 そう言ったあと、挨拶をして、俺はその場から離れた。



 寮棟の自室に戻った後、俺は「最後の仕事」ここからどう進めていくか、一度頭の中で整理することにした。


 現状、王国学園敷地内にある全建物の調査は完了している。。在籍する生徒の全員の名前や経歴は把握済みだし、同じく学園で働いている教員や用務員の経歴や名前の把握している。


 基礎的な必要データは揃っている。


「最後の仕事」の目標は、国に仇なす不穏分の疑いがかけられている、エルレイナに関して、その真偽を見極めること。


 そろそろ本格的に調査しだしてもいい頃合だな。


「図書館棟、夜の10時から12時の間か。」


 今夜、不審者の正体を探ってみることにしよう。



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 夜。明かりひとつない闇の世界。俺は今闇に溶け込んでいる。常人なら避けるであろう闇。それと一体化すると落ち着く俺は、まさに「影」の住人と言った所か。


 俺は今、生徒会室から道を挟んで対面にある備品室に、影を潜めている。


 きちんと整理がされていのか、備品室の周りにも荷物が放置されていて、隠れるには格好の場所となっている。


 俺は夜目が利く。


 もし誰かが、生徒会室の前を通り過ぎたりしたら、まず間違いなく気付くだろう。


 王国学園内にて目撃情報が相次いでいる不審者。俺の予想が正しければ、不審者とは王国内の不穏分子のひとりで、エルレイナとも繋がっているはずだ。


 生徒会室の周辺で目撃情報が出ているあたりもかなり怪しい。


 現在の時刻は夜の11時過ぎ。そろそろ姿を現してもいい頃だろう。もし目の前の生徒会室に、不審者が現れなければ、俺の見当違い。それならそれでいい。また少しずつ、情報を集めていく。


「ん?」


 視界の端で、微かに光が見えた気がした。


 一般的に、夜外を歩く時は、ランタンを携帯することが多い。今の光は、ランタンの明かりに似ていた。


 俺は体の力を抜いてリラックスする。気配を完全に殺し、感覚を周囲に広げる。これらの技法は、幼少期の頃から「影」で徹底的に叩き込まれてきた。


 さぁ、誰が姿を現す。


「コツ、コツ、コツ...」


 足音が近くなってきた。俺は目に力を込める。暗闇の中でも良く見えるようにするためだ。


 やがて対象は、生徒会室の前まで来ると立ち止まり、周囲を一通り見渡したあと、扉を開けて中に入っていった。


 顔はしっかりと確認した。


 リバール=ライセント


 当たりだ。もちろん不穏分子リストに登録されている人物。大物ではないが、組織のメッセンジャー的な役割をになっているのだろう。


 エルレイナとの直接的な関係は確認できてないし、恐らくこれからも確認することは出来ない。


 しかし、それに関してはリバールを捕らえて尋問すればいいことだ。エルレイナ程の地位もなく、王国学園内に不法侵入しているという証拠もある。


 あとはどうやって捕らえるかだな。


 俺は備品室を後にし、寮棟に向かい歩き出した。


 俺が直接捕らえても良いが、派手な動きをして捕まえた後、確実な証拠にならなかった場合に、その後の調査を続行する事が厳しくなる。


 それは避けたい。さて、どうするか。


「自由に動かせる駒が欲しいな。」


 俺は今後の動きを考えながら、学園寮へと帰宅した。

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