⑫午後の講義
午後の授業が始まった。
みんな教室に再び集合している。明日以降の授業のカリキュラムについて、ニナ先生からの説明が始まった。話を聞きながら、俺は別のことについて考えを巡らせる。
そう、エルレイナについてだ。
俺は、彼女がこの国を揺るがす不穏分子であるのかを見極めるためにこの学園に来た。親しみやすいキャラを作り、交友関係を広げ、エルレイナの情報を集める。初日からなかなかいいスタートを切る事ができたと思っている。
まさか本人に会うとは思ってもいなかったが。
彼女についての事前情報はあまり多くない。不穏分子リストに入っていた理由は、反政府派の人間との交友が多かった為だ。つまり、黒寄りのグレー。まだ彼女が何かしたという証拠はない。証拠となるものを見つけるか、卒業するまでの動向監視、それが俺の「最後の仕事」だ。とりあえず、最初に俺がすべきことは、交友関係を広げること。
まずはクラスメイトみんなと友達にならないとだな。
ガラガラガラ。
教室の扉が開く音がして、みんなの視線がそこに集まる。
「すいません〜。いま、戻りました。」
「リリレイルさん。おかえりなさい。いま、明日以降のカリキュラムの説明をしているところです。さ、席についてください。」
リリが席に戻るのを待ち、ニナ先生の説明が再開する。しかしクラスメイトは明らかに集中力が途切れた。保健室から帰ってきたリリに、聞きたいことが沢山あるようだ。
そして関係なく説明を続けるニナ先生。
先生!みんな話し聞いていません!なんてね。
「以上で大体の説明は終わりです。なにか質問ある人はいますか?」
ニナ先生の説明が終わったようだ。もちろん俺は、全て理解した。
「リリレイルさんには後でもう一度説明するので、この後一緒に教員棟に来てくださいね。」
「はい。わかりました。」
ニナ先生の説明がほとんど終わりがけの頃に、リリは帰ってきたからな。
「この後は皆さん寮の方で、これから寮生活の説明を受けて頂き、本日は解散となります。私の説明はここまでです。お疲れ様でした!」
このあとは、俺達がこれから過ごす、学園寮の説明があるようだ。
「では、レイモンドさん、ここからよろしくお願いします。」
ニナ先生からのバトンタッチで、教卓に立ったその男は、筋骨隆々でスキンヘッドだった。また、口の周りが青いことから、毛が濃いことも伺え、そしてまつ毛が長い。
まつ毛が、長い....?
「はいは〜い!任されました!みんな初めましてっ。アタシがレイモンドよ。みんな気軽に、レイちゃんって呼んでねっ!」
「「「「「・・・・・・・」」」」」
教室の空気が一瞬で凍りついた。
「何よもう〜。みんなアタシに釘付けっ??照れちゃうわっ」
「レ、レイモンドさんは、この学園にある寮の、寮母さんです!レイモンドさん、寮生活の説明、続きからお願いしますっ」
ここでニナ先生からの助け舟が入った。
しかし....
寮母......だと.....!?
「ありがとニナちゃんっ。それじゃ、寮生活の説明していくわね〜。それじゃみんな、早速寮棟へ向かいましょ!今日はそのまま寮に帰宅になるから、忘れ物とかないようにネ」
誰しもが呆然としたまま、言われた通り帰り支度をしている。
それにしても驚いた。
まさか、寮母がオネエだったとは。