①プロローグ
初投稿です。
今まで俺は、上手くやってきたつもりだった。友人も多い方だし、誰からも嫌われること無く、無難に過ごしてきた。はずだった。
夜。俺は無様にも地面に転がっていた。首筋にあてがわれた剣はひんやりと冷たく、見上げた彼女の姿は闇夜の中でも恐ろしいほどに美しかった。というか、ものすごく恐ろしかった。
「私に、何か用か?」
恐ろしいほどに美しい笑みを湛えながら発されたその言葉を聞き、俺は大胆にも・・・・
その場で気絶した。
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半年前、俺は暗い部屋の中ろうそくの明かりを頼りに、たった今完成した王都内不穏分子のリストを、大きなクマができた目で最終確認していた。
「やっと終わったぁぁぁあ!」
これでやっと眠ることができると思うと、思わず大きな声で叫んでしまった。
王国隠密暗殺団「影」
それは俺が所属している部隊の名称だ。物心もつかないうちから過酷な訓練を繰り返し、王国のために身を粉にして働いてきた。
隠密部隊に所属していた俺は、くる日もくる日も王国内の情勢に目を光らせ、怪しげな動きがあれば現地に赴いて調査を行い、この国を守るために情報を集め続けた。
しかし、それももう限界だった。毎日休みなく働き続け、心身共に疲弊しきっていた。そして俺は今、決意するのであった。
「よし、仕事辞めよう。」
勤務年数にして十五年。ようやく決意することができた夜、俺は泥のように眠った。
夢を見た。いつも見る夢だ。夢の中で俺はいつも周りを一切見ずに、目的もなく、ただひたすら歩き続けている。
すると、後ろから声が聞こえてくる。いつも、聞こえてくる声だ。一つではない。いくつもの声が重なって、一つの言葉となり俺の背中に突き刺さる。
『『『おまえは、まちがっている』』』
しかし俺は、聞こえないふりをして、振り返ることなく、ただひたすら歩き続けている。