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白銀の聖霊騎士  作者: 桜海冬月
第一部 
9/70

解析鑑定 前編

ご覧いただきありがとうございます。

 爆炎に後を任せて歩き始めて数分して、わたしたちは御神木に辿り着く。エイルが御神木の近くにある広場のような場所に案内してくれる。陽菜はこの神社については知っていたようで、神主から切り株から作ったような椅子やテーブルを借りてきた。それをみんなで並べているうちに爆炎も戻ってきた。

 わたしはセッティングされた机にお弁当を広げる。


「流石、清治おじさんだね。品数もたくさんあって元々多めに作ってあるから人が増えても問題ないね」

「じゃあ、早く食べてしまおうか」


 わたしの言葉にみんな頷き、合掌をする。そして、次々に料理を口にしていった。


 食事をしながらもわたしとエイルは千里さんたちから情報収集をしていた。料理の虜になったらしく、父さんに紹介する代わりに色々教えてくれた。

 それによると、陽菜と千里さんは蓬菊隊という騎士団の一員で、精霊がいることに気づいた千里さんたちがわたしのことを調べているうちに中位精霊であったという事実を諜報部隊が突き止め、これが騎士団内の問題となり敵か味方かを見極めることになったようだ。そこで、同じ学校の学生である陽菜と図書館の手伝いによく顔を出していて、生徒に近づいても不審に思われることはなく、万が一敵だった場合にも実力が高く安全な千里さんが派遣されることになったらしい。


「でもさ、有里も初めての戦闘にしてはあり得ないくらい高位の魔人を相手にしての戦いで平然としているし、そこの精霊にいたっては全然余裕だったみたいだし。そういえば、契約の時もわたしはたまたまとなりの部屋で話が聞こえてきて、隠れて耳をすませていたのに、強引に周囲を契約の範囲内にして致命傷を与えかねないほどの敵対を防がれたし、君たち本当に強すぎるよね」


 千里さんがさらっと驚くようなことを暴露する。エイルが少しだけ反応していたのであの時に一応気配だけは感じていたらしい。そして、おそらく敵か味方か判別できなかったのであの時に急にわたしの殺害を禁止する契約を結ばせたようだ。甘利先生を信用していないのだと思っていたけれどどうやらそういうことではないようで嬉しい気持ちになる。まあ、そうだよね。先生がわたしを殺すなんてあり得ないから。


「ところでどうして、有里をそんなに危険視していたんだい?いくら中位精霊とはいっても、いるにはいるだろう」


 確かに言われてみれば何故わたしがそこまで重要視されていたのだろうか。


「それはね、有里の髪の色だよ」

 これについては陽菜が詳しく説明してくれた。わたしの髪色は白銀色でこの国ではとても珍しい。そして、相手方の上位の鬼人にもわたしと同じような髪色と目の色をしていた人がいたらしい。だから、わたしが何らかの形で漏れ出る魔力や霊力を制御したその人が学生として騎士団の中枢があるこの土地に潜入してきた可能性があると考えていたようだ。


「でも、戸籍とか調べたら分かったりしないんですか?」

「確かに筆頭幹部たちなら調査して有里の存在自体を確認することはできるけど、殺してあなたのふりをしたりすることも可能だからね。それにどちらにしてもあなたの霊力量は凄まじいことはわかっていたから、味方になってもらうことも視野に入れていたよ」


 鬼人とはどうやら思ったよりも手段を選ばないようだった。まあ、ルワンが来たときに何となく検討はついていたけれど。あっ、そういえば······


「千里さんさん、ルワンが来たときに言っていた"あのお方"とは誰なんでしょうか?」


 父さんが作っていた巻き寿司に伸ばしていた手をピタリと止めて、わたしに向き直って口を開く。


「鬼人たちのトップのことだと思う。でも、これ以上は今は話せない。多分知ってしまったら、絶対に騎士団に協力せざるを得なくなってしまうからね。それは死んでしまう可能性が増えるということだよ。もし、君がどうしても知りたいというなら、家族と話し合ってから決めなさい。でも、覚悟ができたなら、わたしをはじめとした騎士団は協力を惜しまないよ」


 "死"という言葉に思わず、固まってしまう。


「暗い話はここまでにして、早く食べないとなくなってしまうよ」


 千里さんが自分の言葉でわたしが悩んでいることに気づいたのか話題を変えようとしてくれる。


(僕がついているんだから簡単には負けたりしないよ。安心して)


 エイルも励ましてくれる。ふと回りを見渡すと、みんなが笑顔で父さんの作ったお弁当を食べているのが見えた。そうだ、わたしは一人じゃない。頼りになる友達もいる。そう思うとなんだか、大丈夫だと思えてきた。


「そうですね。千里さんさん、今度お話があります」

「わかった。こっち側にも色々準備があるから2週間後で良い?」


 わたしはうなずく。気のせいかどこかで小さな笑い声が聞こえた気がした。

 あの後はみんなとお弁当を食べて、ついでに神社にお参りをした。


 今、わたしは家にいる。そして千里さんを始めとした先程の面々が揃っていて、鍋がおかれている。

 その顛末はこうだ。

 帰り道、ふと千里さんが思いついたように発言した。その内容は今からわたしの家に夜ご飯を食べに行こうというものだった。


「ちょっと待ってくださいよ。どこをどうしたらそうなるんですか?それにみんなにも帰る時間があるでしょう」


 当然、わたしは反論する。


「さっき、有里が君のお父さんに紹介してくれるって言ってたし、友人の家なら夜ご飯を食べてくるから遅れると行って問題はないでしょ。そうだよね?」


 千里さんの問いかけにさくらたちはうなずく。特に用事もないから大丈夫とのことだった。三人の反応に我が意を得たりとばかりに顔を近づけてくる。


「陽菜ちゃんは大丈夫なんですか?梅島に住んでいるなら、余り遅くなってはいけないと思うんですけど」

「大丈夫、大丈夫。陽菜は神楽坂に一人暮らししてるから。だからさ、早く行きましょう」


 急に千里さんの口調が優しくなった。なにか本当の目的を隠している気がする。いや、そんなことはないか。


「千里さんさん、本当の目的を話してください」


 冗談を込めて言ってみると、千里さんが観念したように話し出した。


「実は、有里があまりにも一角兎(ホーンラビット)を敬遠してる感じだったから食べてもらって改心してもらおうと。私は食わず嫌いはよくないと思っているからね」


 千里さんは開き直ったのかとてもハキハキとすべてを話す。確かに言われてみれば食わず嫌いはあまり良くない。そして、エイルも乗り気のようだったので仕方なく許可を出したというわけだ。





 千里さんは家に来るやいなや父さんへの紹介を急かして気づいたらお菓子について話を始めていた。父さんはちょうど今日の営業を終わらせようとしていたところらしく片付けを手伝ってもらいながら、余ったお菓子を試食させている。父さんのお菓子屋は他国のお菓子も扱っているのでとても有名なのだけど、千里さんは初めてだったようで目を輝かせていた。


「このお菓子、気に入ってくれたなら包んでおこうか?」

「いいんですか!」

「娘がお世話になっているようですから。それに今日は一角兎(ホーンラビット)の料理を作るのならば早く血抜きを始めておかないと味が落ちるだろう」

「あっ、そうですね。では厨房を借りてもよろしいですか?」

「ああ。有里も手伝ってあげるといい」


 そのままわたしは千里さんの手伝いで血抜きに駆り出されて最終的になぜか千里さんから鍋料理の指南を受けることになった。

 そして、今に至るというわけだ。

 どこからか千里さんが出してきた薬草(ザクラテ草という香り付けにもよく使われる薬草だそうだ)をホーンラビットのお肉の上に置く。ホーンラビットのお肉は少しクセがあるためザクラテ草で処理をすることでより美味しく食べられるそうだ。香り付けを行っている間に他の鍋の材料も準備する。千里さんが鍋の準備をしている間に野菜を切っていく。


「野菜は切れたようだね。お疲れ様、あとはわたしに任せてよ。もしよかったら陽菜とお話ししていたらいいんじゃない」


 

霊力と魔力についてですが魔法の発動効率が今のところ一番大きいです。大体三倍くらい霊力のほうが使うので、爆炎の魔力量を霊力に換算すると大体59万くらいになります。ただ、霊力が劣っているかというとそういうわけでもなく後々霊力でしかできない運用方法があります。


ではお元気で

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