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白銀の聖霊騎士  作者: 桜海冬月
第一部 
16/70

入隊についての話 後編

ご覧いただきありがとうございます

簡単な蓬菊隊の説明の後に燁幽術の説明が始まる。

そして、燁幽術とは蓬菊隊に伝わる魔法術式の一種で他の魔法とは違い、霊力でしか使うことのできない技のことだ。

燁幽術の中にも炎や水、紫といった幾つかの流派のようなものがあるのだが、細かく固定されているものではなくそれぞれの特性などに適応した形になるものだそうだ。

燁幽術を使用するためには身体能力が必要とされるが効率面では普通の魔法を凌駕しているらしい。

基本的には対集団よりも対個人に特化した術式が多く蓬菊隊に入ることが決まっている人たちは通常の場合、千里さんが前に言っていた養成施設で燁幽術習得を訓練するそうだ。

ただし、親族が元蓬菊隊の幹以上または所縁の深い家で燁幽術についてある程度以上の知識と技術があり習得にそこまで手がかからない、もしくは既に習得している場合や蓬菊隊のA級以上の弟子である場合は養成施設を経由することなく入隊できるらしい。

わたしの場合はこの内の後者で慈玖さんの弟子になるので既に入隊条件を満たしている。


「弟子として入隊する場合は二級を与えられるんだけど審査がすこし厳しいんだよね」


昔に賄賂による口利きで二級隊士として入隊した人がいたそうなのだが何しろ賄賂でないと入隊できないような感じなので実力はお察しの通りだろう。

本来は高い実力がある人が養成施設で無駄な時間を過ごさないように用意されていた道が悪用されたのだ。

このような事態が何度も起こったために新たな関門が用意された。


「それが合格試験だ。天皇の信頼がおける人物で血族ではない人が一人と第一騎士団の騎士団長、蓬菊隊の幹から一人、九条家と一色家の当主もしくはその代理の五人の前でB級相当の魔獣と戦って勝利して認められれば合格する。こちらの方はそこまで難しくないが、もう一つが厄介だ。燁幽術を習得していることを証明するために試験官全員に見せないといけない」


そして、それぞれの燁幽術の特性に見合ったものが要求されるらしい。

防御特化ならば攻撃を受け耐え抜く、攻撃特化ならば相手の結界を傷付けることなどが要求されるそうだ。

一応試験官の行動は全力ではなくB級程度に調整されるけど簡単なことではないらしい。

しかも、そのときになって試験官が試験内容を話し合ってから決めるので事前対策も不可能で純粋な実力を計ることができるそうだ。


「実力の上では申し分はないが燁幽術の習得が一番の難題だな」


習得自体はそこまで難しくないのだが、自分の思い通りに操るのに苦労するそうだ。


「もともとこの制度は小さい頃から梅島で燁幽術に触れて慣れ親しんだ人を対象にしておるからな」

「そこまで急がなくてもいいのではないですか?」

「それが難しいのじゃ」           


光希さんは急がずにゆっくり進めていけばいいと言っていたが校長先生が首を振る。

幹の弟子は必ず蓬菊隊隊士でないといけないという規定があるそうだ。

その理由は師匠は弟子に実戦で教えるために自分の任務に同行させることもあるが、幹は危険な任務に赴くこともあり、弟子も巻き込まれる恐れがあるため正式な弟子はC級以上の蓬菊隊隊士という制限があるらしい。


「そんな決まり事があったなんて······」   

「試験までの予行期間として弟子にしてもいい期間は一月だけじゃから、()()()()()()()()()()()()()()()()()()試験で合格することが条件じゃな」


()()()()()()()()()()()()()()()という校長先生の言葉を聞いてエイルが何かをひらめいたようだ。


「取り敢えず慈玖の師匠の弟子になってから修行して、合格できるようになってから試験を受けてその後に慈玖の弟子になればいいんじゃない?」


つまり、わたしが山瀬玖楼義信さんの弟子となることで慈玖さんは兄弟子という立場になるので弟弟子(妹弟子?)のわたしに稽古をつけるのは当然と言えば当然だし、別に何の問題があるわけでもない。

それに山瀬玖楼義信さんは既に引退している身だそうなのでわたし自身が蓬菊隊である必要があるわけでもない。


「師匠次第だが多分認めてもらえると思う」

「急いで試験で失敗してしまうよりはそちらの方が私もいいと思います」

「ワシもそっちのが確実だと思うぞ」

「有里はどう思う?嫌でなければその感じで話を進めようと思うのだが」


三人の意見はわたしを山瀬玖楼義信さんの弟子にすることでまとまったようでわたしに意見を聞いた。

でもわたしの意見は最初から決まっている。


「その案でいいと思います。そういえば、その場合は必要なものの用意はわたしの方で行った方がいいですか?」

「それは予定通りこちらで準備させてもらう。寸法を測ったりしなければいけないので今度梅島の私の家に来てもらえるか?もし難しいならばミリヤにそちらに行ってもらうが」

「道を教えてもらえれば大丈夫です」

「じゃあ今度私たちと一緒にいきましょうか」


必要なものを準備してもらえるのはとてもありがたい。

千里さんたちに前もって聞いていたところによると蓬菊隊に入るには刀や杖などの武器に隊員としての正装が必要で種類は少ないものの一つ一つはとても高価だ。

しかも、普通の杖や刀ではなく魔法陽のものなので余計に高くなるらしい。

一応、払えない人のために幾つかの項目を満たす人たち向けに支給や支払い延長などの措置があるそうだが多分わたしの家は該当しない。

父さんに言えば普通に出してくれるだろうけど急な大出費になってしまうので家計にもあまりよくないはずだ。


「では早めに師匠に話を通しておくから、顔合わせの日程は光希か校長を通して伝えよう。それから採寸だが······」

「今週の半ばには陽菜も帰ってくるので今週末でいいと思います」

「ああ、その日でどうだろうか?」

「分かりました」


これで話は終わりだ。

光希さんの授業に関してはそのまま続けて慈玖さんは燁幽術と剣技を教えてくれることに決まった。不安もあるがわくわくも同じくらい大きく先が楽しみだ。


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