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白銀の聖霊騎士  作者: 桜海冬月
第一部 
12/70

紫馬簾慈玖 前編

ご覧いただきありがとうございます。

あの授業から時間が経ち、藤の花が見頃を終え始めて紫陽花(あじさい)花菖蒲(ハナショウブ)、睡蓮(スイレン)などがちらほら咲き始めている。

わたしは光希さんから魔法知識や霊力操作について学び及第点をもらった。

それからは一人の時は新しい魔法をどんどん覚えていき、光希さんから教えてもらうときは攻撃面積の小さい攻撃を的の中心部を狙って放ち、精度を上げる訓練や結界を張って光希さんやエイルの魔法から耐え抜く訓練を行っていた。

その結果もあってか、中級魔法がある程度操作できるようになり、ここ数日は上級魔法にも挑戦できるようになった。


「アルブム」


最近わたしが霊力操作の精度を上げるために練習している魔法で霊力で弓矢のようなものを作りエイルが作った的の中心部を狙って撃ち抜くものだ。

最初の方は的にすら当てることができなかったのだが、最近では中心とまではいかないものの高確率で的の中心から数センチのところに当たるようになったし、外れることはほとんどなくなった。

今日も千里さんにいわれていたように先ず100回これを繰り返してから上級魔法の練習に入る。


「今日こそは成功させようね」


今は光系の上位魔法の「ライトニング」を成功させようと訓練しているのだが、流石に上位魔法と言うべきか発動には術式に加えて思念が必要になる。

使いこなせるようになれば相当強力な技だがそこまでたどり着くには一筋縄ではいかない。


「でも動きが速くて思い描きやすい動物なんているかな?」

「ループス···狼なんてどうかな。狼なら僕が見たことあるし、なんなら擬態できるよ」


確かに狼ならば速い動物でわたしだって何回かは見たことがある。了承してエイルに擬態してもらう。

思ったよりも再現度が高くて、姿形だけでなく遠吠えやふさふさの毛並みまで再現していた。

それを全身をいろいろな角度から絵に書き起こしたり、さわって雰囲気を感じ取ったり眺めたりしてイメージを叩き込み頭の中で思い描きやすくする。

数十分にわたって頭で思い描く訓練をしてから、ある程度すぐに思い浮かぶようになったことを確認して、もう一度試す。


「ライトニング!」


ふわっと黄緑色の光が流れだし身体から霊力が吸い出されているのがわかる。始めての結界系以外の上級魔法は思ったよりも霊力の消費が激しく、持っていた分の7割くらいを使っているのではないかと思う。

その代わりに私の霊力が普通の狼とは比べ物にならないくらいの大きな姿形をする光る狼になる。

成功したかに見えたのだが形作られた狼は私の制御を一切受け付けず、エイルの制御でさえも及んでいない。これは恐らく魔法が暴走している。

咄嗟に制御が聞かないことを察したエイルが光る狼を消し去ろうと緑色の魔力弾を放つ。


(残っている霊力を全部使っていいから反転(ギャスロット)結界(リュースト)を展開して!)

「わかった!反転(ギャスロット)結界(リュースト)


エイルの呼び掛けに応じてわたしは反転(ギャスロット)結界(リュースト)で狼の周囲を取り囲む。それと同時に霊力弾が炸裂してわたしが張った結界が強烈な光を発して砕け散る。

いくらルワンの時と比べて結界の範囲が広かったからといっても、わたしの霊力の残っているほとんどすべて、つまり最大量の約三割も結界につぎ込んでいたのだから壊れることはないと思っていた。

エイルが本気であの光る狼をすぐに消し去らなければいけないと感じた理由に気づく。


「でも、流石にこれだけの攻撃を受ければ耐えられないよね」


わたしは光と砂ぼこりのなかで、ほっ、と安堵の息を吐いたがエイルの顔は険しいままだ。


「そんな甘い相手じゃないみたいだよ。ダメージは負ったみたいだけどさっきの攻撃も相殺している。僕も霊力を使い果たしたし、僕たちにはこれは打つ手なしかな。でもこれだけの光が立ったんだから千里たちも気づいたはずだよ」

「わたしたちは出来るだけこの場で足止めをすることが条件?」


エイルは首を縦ではなく横に振った。

わたしたちはもう霊力の残存はほとんどないので、足止めを出来るほどの実力差ではないらしい。

だからといってただ諦めるつもりではないのはエイルの顔を見ればわかる。


「有里が持っている霊力を僕に送ってよ」

「でも、さっきの結界で霊力はほとんど使い果たしたよ」

「それでもいいから、回復してくる分だけでも送ってよ」


エイルがやりたいことというのは、わたしたちはもう残存霊力がほとんどないので二人分の霊力をエイルに集めることで、すこしでもエイルの霊力量を多く見せて光る狼の気を引いて狙われようということだそうだ。

もちろん魔獣だって本能だけで動いているわけではなく自我があるので()()()()()そんなにうまくいくはずはないのだが今回はわたしの霊力によって産み出された、言うなれば擬似的な魔獣である。

だから魂もなければ自我もない本能だけで動く魔獣、つまりはエイルの演算があっていればその通りに動く。


「でも霊力を送り込む方法がわからないよ」

「僕に霊力を送り込もうと強く念じればなんとかなるはずだよ」


実際は霊力を送り込むというのはとんでもない高等術式なのだが幸いにしてわたしたちは統合を行っているため、霊力回路がわずかではあるが繋がっている。

だから、わたしの霊力の回復速度分くらいならなんとか送り込めるそうだ。

その場合、送り込める量は三時間かけてもわたしの最大霊力量の一割にも満たないが(MP13000ぐらい)、今回はわたしの霊力がほとんど残っていないので持てる霊力をほとんどすべて送り込めると言うことになる。

でもそれでいい。

大事なことはエイルの霊力量を増やすことではなく、回復の量をすこしでも大きく見せることで最大霊力量を実際よりも大きく感じ取らせて引き付けることだそうだ。


(じゃあ、いくよ!!)

(うん。有里は絶対に狙われないようにできる限り僕に霊力を注ぎ続けて!)


エイルが光る狼の前に出てから、フラッシュや蔦などの霊力消費が最小限でなおかつ相手の目を引きやすい攻撃をして、時間を稼ぐ。

すべてはエイルの計算通りにことが進んでいて、光る狼はエイルを旨味のあるエサとして追い続けている。

ただ、ひとつだけエイルの計算違いだったのは千里さんや陽菜が何分たっても来る気配がなかったことだ。


ご覧いただきありがとうございました。

では、お元気で。

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