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白銀の聖霊騎士  作者: 桜海冬月
プロローグ
1/70

自称神様の箱庭

ご覧いただきありがとうございます。



目が覚めるとわたしは白い雲の上にいた。


「あなたは誰ですか?」


わたしは目の前にいる女性に声をかける。

トラックにはねられたあと目を覚ますと、なぜかきれいなエメラルドのような色の髪をした女性が目の前に立っていた。

一瞬、わたしは死ななかったのかなと思ったけれどどう見ても病院ではないし、下はふわふわした雲のようなものでとても地球にあるものとは思えないから、死んだことはおそらく間違いない。


「私はセレーナと言います。あなたたちが呼ぶところの神様のようなものでしょうか?」

「そうですか。では、わたしは交通事故に遭って死んでしまったと思ったのですけど、どうしてここにいるのでしょうか?」


神様と言われてもよく分からなかったので、取り敢えずスルーして場所を確認する。

神様と言っても驚かなかったのが意外だったらしく、セレーナは目を点にして動きを少しの間、別の場所に行ったようになってから質問に答える。


「それは私もよくわからないのですよ。死んだ人が生まれ変わる前に話すという経験も始めてです」


ごめんなさいね、と前置きしてからセレーナは代わりになにか質問に答えてあげると言った。


「じゃあ、わたしが助けようとした子供たちと幼馴染の祐希は無事でしたか?」


祐希はあの場所に留まっていたなら無事だろうが、彼は正義感が他人よりも少し強いのでわたしと同じように飛び出していた可能性もある。


「まず、あなたが助けようとした子供たちは全員生きているわ。あなたに後ろから突き飛ばされて怪我をした子もいたみたいだけど擦り傷程度の軽傷だから安心して。次に、あなたの幼馴染の祐希くんは一緒に飛び出していたみたいね。事故に遭った直後は大怪我をしているけれど息はあったわ。病院に搬送されたあとのことは申し訳ないけどわからないわ」

「いいえ、助けることができていたならよかったです。それに、祐希はしぶといのであの場で死んでいなかったなら生きている気がします」


わたしたちが小学校に入る前の夏に遊びに行った海で祐希が離岸流に飲み込まれて流されてしまったことがある。

そのときは、海水浴客の一人が気づいてレスキューの人が助けにいこうとしたときにちょうど運悪く風が強くなって雨も降ってきたため助けに行くことも出来ずにみんな諦めてしまっていた。

雨風が収まってから、救助隊が編成されたが五、六歳の子供が何時間も荒波に飲まれていて生きているはずがないと救助というよりは遺体捜索のような雰囲気が漂っていた。

しかし、祐希は生きていた。

実は荒波の中ずっと泳ぎ続けて近くにあった岩の島に避難していたのだ。

その他にも、テスト中にシャープペンシルの芯がすべて折れてしまったときに折れた芯でなんとか回答をしたり、しぶとさを語るエピソードは枚挙にいとまがない。


「回想に耽っているときに申し訳ないのですが、あなたにはもうあまり時間が残されていないようです」




「死ぬ前、いや、死んでるんだからどう表現したらいいんだろう?とにかく、あなたの話を聞くことができてよかったです」


助けようとした子供たちが助かったということはわたしがしたことは無駄なことではなかった。

それを知ってからあの世にいくことがができるのはとても幸せなものだ。


「そうではなくて、残されている時間とはあなたが転生をするまでの時間のことです」


普通は生まれ変わるとき、記憶を失うはずだが稀に記憶を失わないまま生まれ変わることがあるそうだ。

そして、そのような人が生まれ変わる先は大抵が本人にとって異世界となる。


「もしかして、異世界転生ですか?」

「どうして楽しそうなのかは分かりませんが、あなたがこれからいく異世界は魔法が存在している可能性が高いです」


わたし、もしかしたら魔法使いになれたりする?

生まれ変わったらすぐに魔法があるのかどうか、使えるのかどうかを調べてみよう。

はしゃいでいるわたしを見ていたセレーナはできの悪い子供を諭すように言った。


「もう時間がなさそうなので言っておきますが、魔法が存在している世界だとしても絶対に一人で使ってみたりしないこと、10歳くらいまではできる限り魔法を練習しないことを守ってください」


セレーナはわたしがここに呼ばれたような経験は今までしたことがなかったそうだが、転生をした人と関わる機会はいままでに何度かあったそうだ。


「転生者の中でも特に地球から転生してくる人は魔法を早くから使いすぎないようにという忠告をしたにも関わらず守らないで、事故を起こしたり、魔法が使えなくなってしまったりしてしまうことがあるのですよ。とにかく、あまりにも幼いときからの魔法の使用は危険ですから絶対に使わないでくださいね」


危険には巻き込まれたくないから、成長するまでは魔法に関わらないようにしようと誓った。


「こちらはどうなるのか分かりませんが、転生したときに記憶の一部を失っている可能性があります。成長すると元に戻る可能性が高いですが······」


セレーナによると、本来転生者は死んだあとそのまま別の世界で生を受けることが普通だそうだが、わたしはセレーナの元を経由してから転生するので、記憶の部分に不具合が起きることが予想されているらしい。

もっとも、セレーナはわたしと同じ状況の人と出会ったことがないので、あくまで予測だそうだけど。

まあ、記憶を失っているうちは魔法に手を出したい欲求も消え去ると思うので、よかったと言えばよかったのかもしれない。


「本当にもう生まれ変わるみたいですね」


わたしの体はもうほとんど透明に変わってしまっている。この姿とももうすぐお別れのようだ。

わたしが手を振ろうとすると、セレーナが「そういえば聞き忘れていたのだけれど」と前置きをしてから質問をする。


「最後にあなたの名前を教えてくださる?」

「わかりました。わたしの今世での名前は柊冬花。冬に花と書いてきよかと読みます」


名前を聞くと、セレーナはにっこりと笑う。

今まで見せていた、表情が悟りにくいアルカイックスマイルとは違う、心からの笑顔だった。


「じゃあまたね、いつかまた会いましょう。そのときには転生先での名前を教えてくださいね」

「もちろんです!あなたに会うことができてよかったです。また会いましょう」


わたしたちは手を振りながら、別れた。


そして二人が別れた日と同じ日に、とある町で一人の少女が生まれる。

その少女は母親の銀髪とルビーを思わせる真紅の右目と、父親のサファイアと近しい美しい蒼色の左目を受け継いだ可愛らしい少女だった。

彼女の名前は有里、記憶こそ失くしているが日本の高校生、柊冬花が生まれ変わった姿である。




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