#7 警戒線
俺と流星、ケイ、リブ、一二三さん、有綺さん、烈、ベルさんの8人はA棟とB棟をつなぐ通路を通り抜けてBB4に着いた。
そこに居たのは待っていた瑛愛さんと朱里ともう一人の青年だった。
「…その人は?」
「名村空くんって言うらしいわよ。上の階から降りてきた。」
「そ、、そそ、空です。お、お願いします。」
流星が状況を説明する。
「よろしく。僕たち二人はこの棟の下から上がってきたんだ。今隣の棟から6人連れてきたところ」
総勢11人。…とグレイ隊長の12人。
自分と同じ状況にいる人とこうして顔を合わせることがあるなんて数日前は思いもしなかった。ただ、俺が思っている15日間一度も外の光を見ていないからか、15日間過ごした確証もない。今が朝か夜かもわからない状況だ。
ここに俺たちを閉じ込めている人物は一体何をしようとしているのか。
「ちなみに、空君のチョーカーはBB31。おそらくB棟地下3階の1号室ね」
瑛愛さんが言った。
すると流星がまた口を開く。
「あと2フロアは先に目を通さなくてはいけなさそうですね。」
流星がちらっと俺の方を見た。
「…あぁ、そうだな」
「俺と黒で上のフロアを見てきます」
「二人で行くのか?俺もついていくぞ」
一二三さんが続く。
「黒さんが行くなら俺もいくっす!」
烈も乗っかってきた。
「そしたら4人で行きましょう。皆さんはここで待っていてください」
俺たちは上の階に続く階段に向かった。
「…俺が先頭かよ。」
「僕は黒みたいにナイフが出ないんだ。そんなやつを先頭に立たせるのか?」
「お前が言い出しっぺだろぉ…」
「俺いくっすか?」
「いいよ、俺が行く」
後輩を前に立たせる柄でもない。俺を先頭に流星、烈、最後尾に一二三さんが続いた。
ゆっくり、息を潜ませて、一歩ずつ、俺たちは階段を上がっていった。
フロアの入り口からまだ個別の牢を保っているBB2フロアにでようとした。
その時だった。
シュンと俺たちの行く手を遮るように見覚えのあるナイフが飛び出してきた。
慌てて後ろに後ずさる。
まるで人の気配を感じなかったのに…
「…誰だ?」
姿は見せず、男の声だけが聞こえる。このナイフの持ち主なのか。
俺たち4人は顔を見合わせる。そして流星が口を開いた。
「僕たちはここに囚われていたものだ。今朝、牢の鍵が開いているのに気づいてこの建物の中にいた人を集めて回っている。君たちは?」
…
しばらく沈黙が続いた。
そして突然影から人が飛び出してきた。
「「「「 …!!!! 」」」」
青髪の女性だ。ナイフを出せる様に掌をこちらに向けている。
声の主とは別か…!
何人潜んでいる?
野生の狐のような目をしている彼女は先頭の俺の事を足の先から舐める様に見た。
そしてその目が嘘かのように表情を緩め、フロアの中にいる仲間と思われる人に声をかける。
「蘭!この子たちちゃんと仲間だよ~。おんなじ首のヤツつけてるもん」
彼女の首にもチョーカーが付いている。目を凝らすとBB26と書いてある。
「あ、でも一人だけつけてないね。」
その女性は流星を指さした。
「こいつは俺と同郷のやつだ。もともと顔見知りで、今日隣の牢から出てきた。仲間だ。」
「だって~蘭。どうする?」
「そこに何人いる」
「4人だよ」
「チョーカーを着けてないのは一人だけか」
「うん」
しばらく青髪の女性と陰にいる男との会話が続いてから沈黙が続いた。
「・ ・ ・ 早くこれおろしたら?」
「本当にそこに居るやつらは大丈夫なのか?」
「蘭がじっと黙ってても私が刺されてないんだから大丈夫でしょ」
女性はちょっとあきれたように言った。
彼女は足でつんつんとナイフをつついた。
「早くおろしなって」
「そんな簡単に言うな…」
さっきの男の声が聞こえ、ナイフがカランと落ちた。
そして彼女の隣に現れたのは二人の男だった。
…陰に二人もいたのか。
3人ともチョーカーをしている。
さっきの声の主が問いかけた。
「その、建物の中の人っていうのは今どれくらい集まっているんだ」
「俺たち4人を合わせて12人。」
そしてその男は上の階に続く階段を見た。
「まだ上は見てないのか?」
「あぁ、これから。ただ先に下で待っている人たちと顔を合わせよう。いいか黒」
「わかった」
3人を含めた俺たち7人は再びBB4へ戻っていった。