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#5 大男と少女




「BB4」と思われるフロアの階段とは反対側のこれまで見たことのない異質の壁。


流星が触れると自動でドアが開いた。


俺たちは顔を見合わせ奥に進む。

洞窟のような通路を通り、反対側の壁を触った。



「さぁ、この先に何がある…」



ドアが開いた。



―――――…!




「グレイ隊長がいたフロアと同じ状況だ…」



 「奥に誰かいるぞ」




ガタイのいい大男が一人壁際に座り込んでいた。…寝ているのだろうか。

その後ろにも一人女の子が眠っている。


 「話しかけよう」



ゆっくりとその大男の元に向かうと、気配に気づき目を覚ました。




その瞬間だった。





大男は右手からナイフを伸ばし、後ろで眠っている少女を守るように構える。



俺たちは慌てて男から距離をとった。

まずい。こんな大男に切りかかられたら終わりだ。




 「僕たちはここの監視人じゃありません!!」


「あなたの味方です!!ナイフを下して!!」



大男は俺たちの声かけに一切反応せず、じりじりとこちらに詰め寄ってきた。





…まずい。…殺される。



流星はナイフを出すことができない。今は俺が応戦するしかないのか…!



一度しかやったことないけど自分の意思でナイフを…



・     ・     ・



「流星、右に走れ!!!」



俺の合図とともに流星は逃げ、大男は俺めがけて切りかかってきた。


切りかかってきたナイフを何とか自らのナイフで押さえる。





俺よりもガタイのいい大男の力が増していく。



ちらっと横を見ると逃げた先の流星が横たわっている女の子に近づこうとしていた。



 「…女の子が目を覚ましたぞ」

「目を覚ました?」



 「…なにが起こってるの?」



かわいらしい声が聞こえる。

一瞬だけ大男の力が少し緩んだ。


流星が女の子と話し始める。



 「僕たち、この建物の隣のから来たんだ。君たちと同じ、捕まった人間だよ」




流星が女の子にむかってゆっくりゆっくり距離を詰める。



 「さっき、どうやら牢のロックが解除されたらしくて、一応移動できるんだ。だからこの建物にいる人たちを把握しようと思ってここまで来た。」



さらに距離を詰めた、その瞬間




大男は横目で流星を確認し、俺を押さえている手とからナイフを流星めがけて伸ばしていった。



 「……!!!」



ナイフは流星の顔面10センチ前方を通り壁に突き刺さった。



「両手から…!!!」



流星は一瞬驚いていたものの、顔色を変えずに女の子に聞いた。



 「君はこの男の人と知り合いかい?」


 「ちがう、ここであったの」


 「この人のこと何か知ってる?」


 「分からないの。でもたぶん、私たちの言葉がわからないんだと思うの。」



だから俺たちの声かけに応じないのか。



でも、明らかにあの子が目を覚まして、流星と話している所を聞いて少し力が緩んでいる。



「流星、その子の声は聴いてくれるかもしれない」



 「わかった。」



流星は優しい口調でその女の子に問いかけを続けた。


 「君、名前は?」


 「リブ・ホワイト」


 「そうか、いい名前だ。リブ、この男の人は君を守ろうとしてる。僕たちの問いかけには応じてくれないんだ。君から伝えてほしい。…僕たちは味方だ。一緒に来てほしいって」



 「わかったの」



リブがコツコツとこちらに向かって歩いてくる足音が聞こえた。



 「ケイ?」



それがこの人の名前か。



女の子の小さな手が大男の肩に触れた。男は振り返り目を合わせる。




女の子はしゃがんで男の目線よりも下に入った。



 「この方たちは仲間なの。大丈夫なの」



そういってニコッと笑った。







…助かった、か?




男は両手から延ばされた2本のナイフを下して折った。



「ありがとう」


リブは少し心配そうな顔をしてうなずいた。



流星が駆けつける。


 「やるじゃん、黒」


「もう死ぬかと思ったよ。…あれ?リブの首」


 「そう、チョーカーが付いてないんだ」


この子も流星と同じでナイフを出さない。手も汚れていない。


 「リブ、ちょっと聞いていいかい?」


 「なに?」


 「リブはここに何日閉じ込められてたかわかる?」


 「多分4日なの。いきなり襲われて、目が覚めたらここにいて、白い煙が出てからまた眠っちゃって、そこから何回か寝て起きてだけなの」



4日なわけがない。流星と同じ、眠りすぎてしまってるんだ。



「多分流星と似たような現象が起きてるんだろうな」


 「この人が話が分かればな…」


 「この男の人はずっと私のそばにいるの。目が覚めて壁が壊れてた時からここは私とケイの二人だけなの」


 「最初はもっと人がいた?」


 「それはわからないの」


「ケイっていうのがこの人の名前なんだね」


 「名前かどうかはわからないけど、自分で言ってたの」



すると、リブが男の肩を叩いて目を見てから自分のことを指さした。


 「リブ」


次に俺のことを指さし


 「名前いうの」


「…黒」


そして流星を指さした


 「流星」


最後に男を指すと、その男は



 「ケイ」


と、一言いった。



 「でしょ!」


リブは得意げに俺たちを見た。






この子は強い、えらい。絶望的な状況の中でここまで冷静にことを処理できるなんて、まだ中学生ぐらいなのだろうに。




4人で話をしていると階段の方から何人か上がってくる音がした。











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