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#33 前進あるのみ



翌日未明、レッダとスカイを含めた20人は森の入り口から森の木々を縫うように東に向かった。


俺たち第一小隊が道を見つけそれの後を輸送機が追う。

灰の海峡から引っ張ってきたコンテナは大きすぎて森を進む妨げになるので森の入り口に置いてきた。



未明に出発して数時間歩き、太陽が昇っていてもいい時間だが深い森の中でなかなか光が差し込んでこない。



 「こちら第二小隊一二三、南側ずっと奥にサスカッチが数匹見えます。多分寝てる」


 「指令室、了解。エンジン停めます」



昨日ツインケーブの指令室から指示を出していた蘭は今日は輸送機の運転席の隣から指示を出している。

今日は瑛愛さんの運転だ。どうやらニューリドルやニューダイブの車とダリアの車にはそんな大きな差はないらしい。



 「ベル、フレッド、ガク、車を少し北側に寄せよう。」


瑛愛さんがタイヤの向きを変える。

パワーの異能を持つメンバーが南側からゆっくり押すとじわじわと大きな輸送機が動いた。


異能のコントロールを目的とするこの作戦はうまく回っているようだった。



車が再び東に向けて走り出した。


太陽の位置がちょうど真上ぐらいになった。


 「外のみんな、一度休憩しよう」


蘭がそういうと車が止まった。



 「こちら第一小隊。3人で少し先の道見てくる。そんなに遠くはいかないよ」


 「指令室、了解」



俺と烈はシュウの後をついていった。


 「なんか気になることでもあるっすか?」

 「この辺、人間が移動してそうな雰囲気ないか?」

「人間が?」


 「なんとなくだけどな」


俺たちが歩いていると再び指令室からの通信が来た。


 「シュウ、ちょっと待って。」


俺たちは立ち止まって車の方を振り返る。


 「ケイとベルが一緒に行く。」

「ケイが?」


少しするとベルさんとケイが来た。


 「なんか、この辺からしきりに外を見てるから出るか聞いたら出るって」

 「コミュニケーションが取れるようになったのか?」

 「言葉がわかってるわけじゃないと思う。まだ雰囲気とかジェスチャーとかでなんとなく」


2人と合流した俺たちはさらに先に進んだ。

ケイが先頭に立ちどんどん奥に進む


「まだ進むのか?この辺にした方が…」

 「ケイ、ここ知ってるんじゃないか?」


輸送機の位置から2キロぐらい離れたような気がする。


ベルさんがケイの肩を叩いた。


 「そろそろ戻ろう」


ベルさんは親指を輸送機の方向に向けてケイにそういった。


 「あ…ち」

 「あっち?」


とケイはさらに森の奥を指して何かを伝えようとしている。


 「ケイがここを知ってたしても俺たちだけでここを進むのは危ないよ。輸送機でみんなもこっちに来てもらおうそれからだ。」


シュウがベルに言った。



 「ケイ、少し待とう」


ベルは掌をケイに向ける。


 「…はい」


シュウが再び連絡を入れた。


 「こちらシュウ、蘭いい?」

 「はい、蘭。」


 「ここら辺、ケイが気になるらしい。もう少し先に進みたいから輸送機に全員載せて俺たちに追いついてくれない?」

 「わかった。すぐ向かうよ」


 「ケイさんケイさん」


烈がポンポンとケイの肩を叩いた。


 「ここ、来た事あるっすか?」


 「ここ?…っす?」


ケイは困った顔をしてベルさんの方を向いた。


 「おい、烈。俺は必死にケイにきれいな言葉教えてるんだから困らせるんじゃないよ」


とベルさんがポコッと烈の頭を叩く。


 「いてっ!」


その様子を見てケイさんはふふっと笑った。

まる3日くらいベルさんと一緒にいて、俺たちに対する警戒心がケイからなくなったようでよかった。



しばらくすると輸送機が俺たちに追いついた。


 「みんなはここでもうしばらく休憩してていいよ。5人いれば大丈夫そう。」


シュウはそういって、行こうと5人で歩き出す。


歩いている途中でふとベルさんがこう言った。



 「そういえば、俺たちネイヴとダリアのメトロポリタンって言葉が一緒なんだよな。ダリアにはケイみたいな言葉が違う人たちもいるのに。」

「言われてみれば…そうですね」


 「それに車の形も運転の方法もダリアのメトロポリタンのものはネイヴのものに近い。」

 「でももともと一つの大陸だったんっすよ。別に変じゃなくないっすか?」

 「大陸が分かれてからもう2707年たってるんだぞ。」


 「新政府軍が見つけたポートで昔から人が移動してたなら、あながちない話では何だろうけどな」


話ながらケイについて歩いているとパッと開けた場所に来た。


―――――何だここ…!


まるで小さな村のような…いやもっと小さい集落のようなもの。

かなり廃れていて人は住んでいないようだった。


すると、ケイが引き寄せられるようにその集落へと足を踏み入れていった。


 「ちょっと…ケイ?」


慌てて俺たちもついていく。


「ケイの故郷か?」

 「それはないだろう。もっとメトロポリタンに近い位置でとらえられてるはずだよ。小さい時に住んでたとか通ったとかそういう事だと思うけど。戦闘民族は移動しながら暮らすって話もあるからね」



ケイが何かを伝えようとベルさんの方を見てもごもごと話し始める。


 「こ…ジュs、mkぅら」

 

 「ごめんケイ、…わからないな…何を言おうとしてるんだろう。」


 「リブ…」


 「リブ?リブがなんか関係あるのか?」


ケイは、ジェスチャーを始めた。

「ここ」と地面を指さし、小さい子を表すように掌を下にして腰のあたりに下げる。そして最後に自分のことを指さした。



「やっぱり小さい時にここにいたんじゃないか?」


 「自分がリブぐらいの時って言いたかったのかもな。ケイがリブのことを何歳だと思ってるかはわからないけど」



しばらく集落の中をうろうろしてるとケイが突然立ち止まった。

シュウも異変を感じ取る。



 「輸送機とは反対側の方からだ。…こちらシュウ、指令室いいですか?」

 「はい指令室」


すぐに蘭が応答した。


 「外で待機してるメンバーが居たらすぐに中に入ってください。こちら5人集落を見つけて探索中ですが、進行方向の先から物音。サスカッチじゃない。この集落ではないけど戦闘民族かもしれない。」

 「了解。」


蘭の声が切れるとシュウが俺と烈の背中を叩いた。


 「ここで初めての対人戦になるかもしれないぞ。」


そういってシュウがナイフを出した。

俺と列も構える。


 「ベル、一回内側にいて」


そういってベルさんを囲むように俺、烈、シュウ、ケイがナイフを構えた。



――― … … …


静かな時間が流れる。


するとごそごそっと遠くの方で音がした。



その瞬間…


 「das ei o !!」


ケイの、俺たちに何かを伝えようと思っていない言葉だった。

ケイが音の方向に両腕のナイフをものすごい勢いで伸ばした。


それは俺たちの位置から見えない位置まで届いている。



ナイフが伸びた方向からはナイフが何かに刺さる音と、二つの悲鳴が聞こえた。








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