#25 東へ
大陸歴2707年。秋。
新政府軍の2人と俺たち捕虜18人の20人はダリアのメトロポリタンを囲む森の入り口にたどり着いた。
新政府軍が蘭を指揮官に任命したあの後、俺と蘭とシュウと空は言われた通り輸送機にダリア侵攻のための荷物を積んだ。そして翌日、その輸送機に20人が乗り込みツインケーブを後にした。
丸一日くらい車に揺られ森の入り口まで到着すると、スカイが地面に注射器のような形をした機械を差し込んであっという間にツインケーブが作られた。
俺たちが中に入ると灰の海峡付近で囚われていた時のツインケーブと少し内装が異なっていた。
「さあ!ツインケーブ一般居住バージョンだ。」
構造は変わらず梯子を下りるとA棟が6フロア、B棟が6フロア。
AB3とBB4が通路によってつながっている。
全てのフロアが牢屋になっていたB棟は一つ一つの部屋が少し大きく、二人が住めるような構造になっていた。
B棟の最上階が広間になっていて20人全員がついても余裕のある机が真ん中に一つ。
A棟はその半分のフロアが俺たちの入れない場所になっている。AB4から最下層までのAB6はレッダとスカイのスペース。きっと新政府軍の人たちと連絡を取ったりしているのだろう。
レッダはこれまでと同じように
「君たちが侵入したら…」
と首を指して言った。
そして俺たちも入れるAB3は納屋。AB2がキッチン。そしてAB1が
「指令室…というのが的確だね。ここから外に出て森を進むとき、一人一人に通信機を付けてもらう。それをここで蘭が聞いて指示を出す。ちなみに、君たちのチョーカーこの間まではツインケーブから2キロ離れると起爆するようになってたけどその設定は解除したから。一日で進めるだけ進む。
くどくて申し訳ないけど、逃げようとかそういう事考えない事だね。」
A棟の説明をした後、レッダとスカイは
「じゃあ蘭。この先について広間で話そう。君たちはコンテナの中の荷物を確認しておいてくれ。」
といって蘭を連れB棟に向かった。
「じゃあ俺たちは一度上に上がろうか」
一二三さんの声かけで残りの17人は上に上がった。
地上の輸送機は2両になっていて後部は荷物を運ぶ専用の車両になっている。
荷物の整理をしている時、ふとシュウが口を開いた。
「軍とか言っておきながら武器は一つも積まないんだな。俺たちの異能だけでメトロポリタンを目指そうとしてる」
たしかに、荷物用の車両には通信機や食料は積んであるが銃や爆弾のようなものはなかった。
「もしかしたら、このダリア侵攻は俺たちが異能に適応するための訓練みたいな扱いなのかも…」
「なるほどな。」
話をしていると遠くの方からダンの声が聞こえてきた。
「ねぇ!こっちに小さい川があるよ!水浴びできる!」
声の方を見ると確かにちょろちょろと細い川が流れている。
シュウがあきれるようにつぶやいた。
「水浴びってガキかよ…」
「いいじゃない。どうせ長い旅になりそうだし、息抜き息抜き」
瑛愛さんがダンの元に向かうと朱里やリブ、ケイも後に続いた。
「僕も行こうかな。黒は?」
流星が俺に聞く。
「先に行ってて。この中身だけ確認する」
俺がそういうと流星は空や麻貴もつれてダンの元に行った。
「ここは俺だけでいい。フレッドと一二三さんもいるし、黒は先に休んでて」
「あぁ…。ありがとう」
シュウを残して、俺は流星たちの元に向かった。




