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#24 粟田黒の提案



 「…話に乗ろう。でも最初に…君たちの意見を聞かなくちゃいけないだろ」


蘭がネイヴのみんなの方を見る。



 「さっきから、この先僕たちが生きていく方法や選択肢を考えていたけど…。

 おそらく、レッダたち新政府軍についていくしかないよね?戦うしかないんだろう?」

 「俺は蘭が向かう方についていくぞ。昨日だってそう約束しただろ。

 俺たちが“亜人”にさせられたことも、ダリアの内情も今は置いておく」



先の時代過ぎる話に混乱しながら、ベルさんと一二三さんがなんとか言葉を選んで蘭に返した。

有綺さん、瑛愛さんも続く。



 「私は…少しでもニューダイブに帰れる可能性があるなら。あなたたちをダリアまで連れていく」

 「私も。…これはしょうがない選択」



烈とフレッドは


 「俺は、みんなが行くなら守るっす!」

 「右に同じく…!」


と。

空と麻貴も。



 「ここ、こ、こ、ここに置いていかれる方がしんどいかもです…」

 「皆さんが一緒なら、せめて足手まといにならないくらいには戦うので一緒に行かせてください」



朱里とリブも続いた。


 「…僕なら大丈夫です」

 「私もなの!」



リブはそういうとケイの方を見上げた。


 「ね!」


ケイはどこまで理解しているかわからないがうんうんとうなずいている。



 「凛奈ちゃんと一緒なら何でもいいよ!」



ダンは凛奈のことを見た。



蘭が俺と流星の方を見る。



 「僕も蘭についていくよ。ただ、レッダたちの言う『ネイヴの人々の罪』はどうも納得できない。」


流星の言葉に蘭が返す。


 「…それは、わかってる。ネイヴに行くためならいくらでも策を出すが、この方法について、新政府軍を支持するつもりもない。 … …黒は?」



「俺も蘭と同じだ。ただ、一つだけ…。」



ネイヴの人たちがこれからついていこうとしているのは『新政府軍』ではなく蘭だ。


俺は蘭ではなく、レッダやスカイの方を見た。



「ここを出た後、すべての指揮を蘭にとってほしいと思う。レッダやスカイじゃなくて、蘭自身に。


 そして、ダリアにたどり着いたらなにがなんでも一度故郷に帰らせてくれ。

 俺たちのこのチョーカーがいつまで外せないのかとか、俺たちの異能を新政府軍がどう使うかとか、聞きたいことはたくさんあるけど…。とりあえずこのタイミングでそれだけ…俺たちと、ネイヴの13人と約束してほしい」



俺たちは捕虜だ。命をこいつらに握られている。

そして相手は俺たちに罪があると思ってる。この狭い空間でそれは絶対に覆らないんだ。



この先、ここにいる18人と新政府軍の2人がそれぞれの望みを見据えて、前をみて戦うために必要な約束だ。



…人が誰かに頭を下げる光景は、誰に対しても強い印象を与えるのだと蘭を見て思った。



俺は…レッダとスカイに頭を下げた。



「頼む。」




―――この数日間で蘭はここにいる全員からかなりの信頼を得た。それは偏に彼の『正義感』がみんなをそうさせた。蘭の正義がどこに向いていようと、俺たちをちゃんと導いてくれると思っている。



 「…面白い。考えはよくわかりました。


 いいでしょう。ダリアに到着したら一度皆さんを故郷にお戻できるようにボスに進言しておきます。その時どんな方法かは口出ししないでください。


 そして、河田蘭を新政府軍による西ダリア侵攻の指揮役としましょう。もちろん、新政府軍の目的に沿ってですが。」





…弱冠19歳の指揮官の誕生だ。



―――――いいか、蘭。よく聞け。俺がお前にこんなに身を預けている理由は…この二日間でお前に完全に敗北していると感じたからだ。

当たり前だろう。お前は2つも年下だけど270年も先にいる。おまけに俺たちネイヴの人間に『守るからついてきてほしい』と言うような奴だ。


わかるのはお前やシュウや凛奈がこれから向かうメトロポリタンの内側で辛い目に遭って、復讐をしようとしている事だけ。


襲われた俺たちの故郷がどうなっているのかもまだわからないし、ダリアの内部では何が起こっているかもわからない。新政府軍の全貌も見えない。


ただ、ここで約束したんだ。俺たちを一度故郷に返してくれ。

お前は買いかぶりすぎだと言うかもしれないけど、俺が思う最善の提案をしたつもりだ。

     




蘭は驚いた顔でレッダを見てからその顔のまま俺の方を向いた。








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