#20 20人
「みなさーん。起きてくださーい。朝になりましたー。」
まるで合宿所のようなアナウンスで俺たちは目を覚ました。
昨日は地上で流星と蘭の話を聞いた後、地下に戻って寝転がりながらその日起きたことをぐるぐると考えていると気づいたときには眠ってしまっていた。
アナウンスを聞いてA棟とつながるBB4に集まってきた俺たちの前にはレッダとスカイが居た。
昨日話し合いの場にはいなかった朱里とリブちゃんの姿もある。
「それぞれ結論は出たかい?…といってもその3人は大事な話の時その場に居させてくれなかったみたいだけど」
やはりこの人たちはどこかから俺たちのことを見ているのか?
「…やっぱり、大人だけで話してたんだね」
朱里が俺たちの方を見た。
朱里の言葉を受け止めたのは一二三さんだ。
「すまない朱里、…リブちゃんとケイも。複雑な話をする前に一度整理しようと思って…」
「別にいい。ね、リブちゃん」
「うん。いいの。」
朱里とリブちゃんは話をつづける。
「昨日私、気づいたら眠っちゃってたからみんなより早く起きたの。そしたら朱里も起きててね、昨日の夜のことを聞いたの。」
「僕にもう寝ようって誘ったベルさんの目に悪意はなかったし、昨日の時点でみんなの話を聞いてもわからなかったかもしれないのは事実だし。僕たちのことを足手まといだって思われても仕方ないと思う」
「そんな、足手まといだなんて…」
一二三さんが弁護をした。
「…わかってる。みんなは優しい人だから。フレッドもあの時、僕を守ってくれたし、昨日少し悲しくなっちゃったときも傍にいてくれた。だから昨日の夜、ベルさんが傍にいたらすぐに眠っちゃったんだ。安心できたから。…でも」
朱里は左手で自分の右手首を掴んだ。
そして歯を食いしばる。
…!
レッダとスカイを含めたその場の全員が息をのんだ。
朱里の右手からナイフが現れたのだ。
「ただ、こういうことはもうしなくていい。しないでほしい。僕たちは子供だけど、自分のことは自分で守れる。戦えないリブちゃんの事だって守れる。だから、ここに残るとしても、出発するにしても…みんなと一緒に居させてほしい」
リブちゃんも続けた。
「あとね、…」
リブちゃんはケイの手を掴んで、朱里の隣まで引っ張ってきた。
「ケイのことも仲間外れにしないでほしいの。ケイはまだ話せないけど私のことを守ってくれたの。それに、すごく強いの。」
まだ体の小さな二人のことを甘く見ていたのかもしれない。
一二三さんが二人の元に寄っていき、抱きしめた。
「当たり前だ。端から君たちを置いていくつもりなんてなかったよ。なぁ蘭」
「あぁ。」
蘭はレッダとスカイの方に振り返る。
「俺たちは18人でここを出る。ダリアのメトロポリタンに一緒に向かうよ。お前らの命令にただ従っただけじゃない。生きて、還るためにお前らの策を利用するだけだ」
「ずいぶん、挑戦的なことを言ってくれるじゃないか」
レッダが答えた。
「まぁ、いいけど。じゃあとりあえずそういう事で。ダリアのメトロポリタンへは俺とスカイも一緒に向かう。僕たちはここに飛ばされただけでダリアまでの道を知らない。大いに力を借りるよ。」
「…道を知らない?飛ばされたって…」
レッダは突然、来ていたシャツを肩の位置までまくった。
レッダの腕には俺たちに取り付けられたチョーカーと同じような型のものが取り付けられていた。
「『気づいたらここにいた』というのは僕も君たちと一緒。僕たちのボスは少々気が荒くてね。従順な僕たちにもこんな物騒なものを付けるんだ。計画からそれたことをすると僕たちは首の代わりに腕が飛ぶ。余計なことも言ってもだ。
ちなみに僕たちの腕が飛ぶっていうのは君たちの首も飛ぶことと同義だからね。
ほ~んとうによくできたシステムだよ。」
「つまり、僕たちが国に帰る条件が君たちをダリアのメトロポリタンに送ることになるのか」
一二三が問いかけた。
「そういうこと。だから、この先君たちがなるべくうまく戦えるように僕たちはサポートするよ。
…ダリアへは輸送機で向かう。輸送機って言っても少し機能が追加したでっかい車。
あとは上で説明するよ。ついてきて」
レッダはすたすたと地上への梯子があるA棟の通路に向かった。
俺たちは自分たちの首の爆弾に連結した爆弾を腕に持つレッダについていかない事なんてできなかった。




