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#15 勝手な話



蘭は烈や一二三さん、瑛愛さんを連れて地上に上がった。


俺と流星は一度見たのと、誰かが残った方がいいということもありBB4に残った。


ダリア出身という凛奈とシュウも残っていた。




流星が小さな声で俺に話しかけてきた。



 「…にしても蘭が持ってたコンパスすごかったな。あんなちっちゃいただのコンパスからレーザーみたいな光。」



するとあまり口を開かない凛奈が話に入ってきた。



 「蘭も亡命戦士なんだろ。」



「亡命戦士?」



凛奈はポケットの中から何かを取り出した。



 「それ、蘭も持ってたやつだ」



 「ダリアの軍人はみんな持ってる。私は逃げるときほかにも武器とかもって逃げてきたけどここに連れてこられたときにこれしか残ってなかった」



「ダリアには軍隊があるんだってな。蘭に聞いた。ニューダイブにはない。」



凛奈はふっと鼻で笑ってから話をつづけた。



 「黒の話を聞いてると何となくそうなんじゃないかって思ってたよ。残念ながら、ダリアはネイヴの人たちが思ってるような国じゃない。確かに技術は発達してるかもしれないけど…いい国じゃない。


 だから私や蘭、シュウみたいな亡命戦士もいるし、ダンみたいな孤児もいる」



 「…凛奈ちゃん私の話してるでしょ!」



ダンが凛奈に駆け寄る。

地上からみんなが戻ってきたのだ。




 「本当にダーリアにいるなんてな。…考えられない。」



フレッドが言った。



 「でも…本当にどうやって来たんだろうね…」





混乱するネイヴの人たちをよそに蘭が一言、放った。




 「まず、ここにいる全員でダリアのメトロポリタンを目指すって事でいいよな?」



力強い口調だった。

全員が蘭の方を向く。




 「ここに残っても餓死するだけ。海峡も絶対に渡れない。不本意だが、俺たちには武器が与えられている。…自分自身だ。俺には新政府軍が何をしたいか、なんとなく見える」



 「…私たちの力を使って、パーソナルキーシステムの崩壊させるんだろうな。」




凛奈が続いた。




 「パーソナルキーシステムはダリアの監視システム。メトロポリタン内の人間全員に配られるカードの形をしたもので、これがないとダリアのメトロポリタンでは何もできない。逆に持ってるとその人だけじゃなくて家族まで、どこで何をしているかがすぐにわかる。助け合いができるようなシステムが構築されている」


「便利なシステムだとは思うけど…」


 「便利だと思えばそうだが、完璧なシステム過ぎて弊害が大きい。私もその被害者だし、ダンも、蘭もそうだろ」


 「まぁ…そんなところだ。」



特に凛奈と蘭は相当国に対して嫌な思いがあるように見えた。



 「パーソナルキーシステムの話はまた詳しくするとして、話を戻そう。



 ダリアの新政府軍が、どういう方法かネイヴに侵入して征服を始めているとする

 そしてダリアには灰の海峡を渡る技術がある。

 ネイヴ出身の君たちがもし故郷に帰りたいのならダリアのメトロポリタンに向かうという選択肢は悪くないはずだし、ここにいても死を待つだけ」



 「…こっちとしては随分勝手な話だけどな」



蘭の提案に流星が返す。

…たしかにネイヴの人間から見たら勝手に連れてこられて、目的地を示されて、そこに向かう選択肢が悪くないといわれているんだから…至極『勝手な話』だ。



 「戦争はいつだって勝手だ。」



ここで蘭は初めて『戦争』という言葉を使った。



 「僕はダリアの軍隊出身だが、戦争がしたいと思ってした瞬間は一度もない。ただ不思議な話で、国のためになることを選ぶと戦うことになるんだ。戦争は仕掛ける方も仕掛けられる方も、いつだって勝手だ。戦争をやりたい奴に限って戦地にはいないんだからな。」



ネイヴでも特に穏やかなニューダイブ出身の俺にとっては衝撃的な話だった。

みんな、言葉を失っている。


蘭の言葉はひどく鋭く、ネイヴでの常識を逸しているが、返す言葉が見つからない。






突然、蘭が俺たちに頭を下げた。



 「…ちょっと!そんなことしなくても…」



蘭の近くにいた有綺さんが頭を下げた蘭の肩に触れる。




 「僕は人々を守る…一軍人として、ここで17人を置いていくことが考えられない。国は違くても、同じ被害者、ましてや加害者は僕の国の組織で。なのに僕は…」



凛奈はじっと蘭のことを見ていた。



 「自分の国の尻ぬぐいは僕にやらせてほしい。…僕が君たちを死なせない。だから、一緒にメトロポリタンに向かって欲しい。…これは勝手な話だ。僕は、頭を下げる事しかできないけど…」




蘭がなにかにこんなに必死になる人だとは思わなかった。




 「…君が、頭を下げる事ではないんじゃないか?」



そう口を開いたのは一二三さんだ。



 「わかった。朱里とリブちゃんには僕が説明するよ。ここにいてもしょうがなさそうだしね。みんなはどうかな?」


 「乗るよ。俺だって一応警官だ。蘭の気持ちはわからなくはない。」




フレッドの言葉に烈や有綺さんもうなずく。


ここにいる11人のネイヴの人間に蘭を否定する者はいなかった。




 「ダリアの人間は蘭だけじゃない。一人で背負いすぎだ。ここにいる人を守るくらい私にもできる。多分、私も蘭と同じ考えをしてる。」



凛奈が蘭に言い放つ。

蘭はようやく頭を上げた。


シュウが蘭に声をかける。


 「凛奈の言う通り、蘭一人で背負う必要はないだろう。」




 「凛奈ちゃんがみんなを守るなら私も!…ちょっと凛奈ちゃんどこいくの~」

 「下で寝る」

 「私も一緒に寝る~」



そういってダンも凛奈と一緒に下に降りて行った。



蘭の表情はほんの少しだけ緊張が解けたように見えた。



2021.9.27


本日は1日 4話投稿させて頂きました。

以前より知っていただいてた方、今日知ってくださった方、ブックマーク登録してくださっていた方


本当にありがとうございます。

物語は一度、ダリア組のお話に入ります。

私にとってメッセージを詰め込んだ好きな話が続きます。

これからもご愛読いただけると嬉しいです。

明日からもしばらくは毎日の投稿されます。応援よろしくお願いします_φ(・_・


谷戸灯夜

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