#14 ここは、これから。
「子供たちを避けて話がしたかったんだ…」
蘭が神妙な面持ちで話を切り出す。
朱里とリブちゃんが去ったBB4の空気は冷たく、真剣になる。
「だますようなことしてすまない。でもこの話し合いは必要だろう。蘭に言われてそれに乗った」
一二三さんが続いた。
―――――蘭は俺たちが地上で見たものの話をするのだろう。レッダらが言ったダリアと俺たちの知る聖なる国の関係について。
リブちゃんと朱里を上に連れて行った瑛愛さんとベルが戻ってきた。
「瑛愛、ベル、ありがとう。じゃあ蘭、この場は任せるよ」
一二三さんの言葉で蘭が話始める。
「まず、僕と黒と流星が地上で先に確認したものについて。…それは『灰の海峡』だ」
全員がざわつく。
『灰の海峡』は大陸ネイヴに伝わる言い伝えの中に出てくる、いわば都市伝説的なものだ。
都市伝説とは言えど、実物は存在するしそれを見た人はそこそこいる。
ただ、それを見た人はそろってその迫力に恐れ、それを神聖で不可侵なものと信じて疑わないものだ。
これが大陸ネイヴに伝わるその言い伝えだ。
その昔、今のニューリドルやニューダイブを含む大陸は今よりもっと大きく、その時の人々の智は今以上で技術にも財にも栄えていたという。
多くの国が存在し、各々が財を使って技術を発展させ、その技術でまた財を得る。
それを繰り返していたらしい。
ただ、技術を発展させるだけならまだよかった。
しかし、ある日神の逆鱗に触れるようなことがあった。
…智のある人々はより自国の発展させようとした挙句、他の国から奪おうとしたのだ。
人々は膨らみ切ったその技術を人を傷つけるために使ってしまった。
そしてその大陸は国々の争いが絶えなくなってしまったという。
その状況に激怒した紙は大陸をかき混ぜ、家族や仲間を引き離し、人々と技術をリセットした。
そして最後に大陸を『灰の海峡』で真っ二つに割き、人々がその間を移動できないようにし、片方には「財」を片方には「智」を与えた。
人々の発展にブレーキがかかるようにしたのだ。
…というものだ。
この言い伝えはネイヴ全土に広がっているものである。
『灰の海峡』の西側にあるネイヴには財が与えられたといわれており、
東側の大陸には智が与えられたとされている。
言い伝え通り、ネイヴには多くの資源がある。燃料や食料など、自国民を賄うのに不足はない。
そして、再び「大陸のかき混ぜ」が起きてしまい家族が離れ離れになってしまうことを恐れ、人を傷つけるための技術開発は自衛以上に行わないように根付いているのだ。
現にネイヴには争いが無いわけではないが少ない。
そして、灰の海峡を渡ったことがある人は大陸歴が始まった2707年前から一人もいない。
海峡は自然の摂理を逸して四六時中激流が流れている。海峡の上部は暗い灰色の雲に覆われ、空を飛ぶ鳥でさえ一度入ると二度と抜けることはできない。
…と、ここからが本題。
「大陸のかき混ぜ」後、智を与えられたもう一つの大陸をネイヴの人たちは…
「 『ダーリア』 …と君たちは、僕の国をそう呼ぶらしいね。」
蘭は俺たちに問いかけた。
「そう…だが、‥‥もしかしてあの男たちが言ってた『ダリア』って…」
「その通りだよベル。みんなが言う智の国ダーリアと同義。…そして今、僕たちはそのダリアの西端にいる。俺たちが地上で見たのは灰の海峡。それが西側にあるってことはここがダリアだという証拠になるだろう。」
ニューリドル、ニューダイブからここに集められた面々は言葉を失う。
「…もし、いや、でもここがダリアだとして、どうやってここに俺たちは来たんだ?灰の海峡は渡れないだろ。…それはダーリア、…ダリアでも同じじゃないのか?それともなにかあの海峡を渡る技術がすでに?」
一二三の問いに凛奈が答える。
「灰の海峡が渡れないのはダリアでも同じだ。ただ、それは一般常識的なもの。国の上層部が何か極秘に開発しているのかもしれない。もしくはレッダがいう反政府軍とやらが開発したか。まぁどちらかじゃないか?」
一二三が返した。
「どちらかじゃないか…って、そんな簡単な話なのか?」
「ダリアのメトロポリタンの中は安全で便利だが、その分行動に制限がある。超監視社会なんだ。私たちみたいな一般人が行動を制限されている裏で上が何をやっているかはわからないだろ。」
ずっと頭を抱えていた烈が口を開いた。
「俺、…ダメっす。話が突飛すぎて何が何だか。…でもここもダーリアの中なんすよね?智の国とは思えないくらい荒れた地面だった気がしたっすけど…」
「そしたら一回自分の目で見るといい。さっき全員がいるときに見せるのは混乱させると思ったが、『灰の海峡』を。」
蘭は地上を指してそういった




