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#12 外の空気



時計が現れたその扉の方を凛奈が再びじっと睨む。



 「ちょっと待て、まだ来るぞ」



すると再び足音が聞こえ始めた。



 「今度は一人か」



扉が開く。すると本当に一人の青年が立っている。


右手をこちらに向けて左手をその右腕に添えている。



「…チョーカー着けてるな」



青年の足は…ひどく震えていた。



 「大丈夫だ。腕を下せ」



蘭の声は今までで一番優しかった。



青年の顔がぐしゃっとゆがみ、膝から崩れ落ちる。



 「めっちゃ怖かった…。どこだかわかんないし、体から変なのでてくるし、痛いし、兄ちゃんにも母ちゃんと父ちゃんにも会えないし」



そういって息継ぎもままならないくらいわんわん泣き始めた。



 「どこなんですか…ここぉ…」



ベルさんが駆けつけしゃがみ込んで伏せる様に泣く彼の背中をさする。



 「なぁ、怖いよな…」



すると俺の近くからも鼻をすする音が聞こえ始めた。



「朱里…、リブちゃんも…」



朱里やリブも泣き出してしまった。



この緊張感が張り詰める中でいきなり感情をもろに出してくる人が出てきて、みんな糸が切れたのだろう。



瑛愛さんや有綺さんも泣き出してしまったリブちゃんたちをなだめる。




BB4フロアは大混乱だ。



 「よし!一回外出てみようか。ここがどんなところかもわかるかもしれないから。黒と蘭、あと流星も、一回外でてこの子たちが出れる状況か確認してもらっていいか」



ベルさんが言った。



「分かりました」



俺と流星と蘭は通路を渡って地上に出ることにした。






レッダとスカイに言われた通り、

上につながる階段があったのを確認してさらにそこから梯子を上って小さな出口を見つけてそこを開けた。






―――――…ここは?




夕日がもうほとんど沈んでいる時間だった。


わずかな明りの中見えるのは、

まるで数年雨が降っていないかのような地面。


そして、その光景に似つかわしくない水が流れる音がする。




俺たちは音のなる方向を見た。



「暗くてよく見えないな」



蘭がポケットから何かを取り出す。



 「なんだそれ」


 「コンパス」


「なんでそんなの持ってる?」


 「今はそんなこといいだろ」



蘭がコンパスについているスイッチを押した。



…光った!



レーザーのような強い光を蘭は音のなる方向に向けた。






「何だこれ…」


 「嘘だろ…」

 「…」




そこには灰色の雲がまっすぐ壁のようにできている。


先が見えない。


音はそこから出ていた。




流星は口を覆った。




蘭がコンパスを覗いた。




 「西に、『灰の海峡』がある。ダリア西部の果てだ」



「…灰の海峡って」



 「蘭やあの二人の監視が言ってたダリアって…まさか。信じられない」




この時俺と流星は巻き込まれたことのことの大きさに言葉が出なかった。



 






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