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#1 発現



人が10歩もあれば一周できるような狭い部屋…、監獄…。


小さなベッドとトイレしかない空間。

同じフロアの別の部屋からも痛みと絶望で苦しむ声が聞こえる。



「痛い痛い痛い…!」



どんな原理かは知らない。

俺の右手から剣みたいな、カッターナイフみたいなものが突き出している…!




肉と皮膚を突き破って俺の身体から出てきてるんだ。痛いに決まってる…



これで12回目だ…。


これ自分で押さえられないのか…。



自分の意思とは関係なく突然体を突き破って出てくる異物に俺が苦しみ始めたのは大体2週間前くらいだろうか。



大陸歴2707年9月16日。

大陸ネイヴの中でも最も安全で平和と言われている故郷のニューダイブがゲリラテロに遭った。


俺は捕虜として捕まり、この監獄に放り込まれたのだ。



それから約2日たったある日、監獄を白い煙が埋め尽くした。

最初は火事かと思ったが、目を覚ましてすぐにただの火災なんかではないことがわかった。




前腕を筋繊維をちぎるような痛みが襲い、手のひらからナイフが出てきたのだ。



その時、この現象が俺以外の監禁者にも起こっていることはすぐに分かった。

フロアから痛みと絶望に苦しむ声があふれかえったから。




血が流れ続け、俺はすぐに意識を失った。


もう死んだと思った。

いや、あの時死んでいたらうんと楽だったんだろう。



これが何度も何度も…続いた。



いまだに意思とは関係なく突き出てくるナイフに苦しんでいる。

どうにかならないものか。






12回目のナイフの発現。

どうやらいったん収まったっぽい。



12回も体からナイフを出してわかったことがいくつかある。


まず、俺から出てくるナイフはカッターのようにナイフの平面の向きに対してはすぐに折れる。

すぐに意識を失った5回目ぐらいまでの時も目が覚めたときには横に折れたナイフが落ちていた。

監獄の監視をする人は決まって俺の折れたナイフを持ち去っている。


二つ目、痛みに任せて力を入れてしまわずに筋肉を緩めた方が痛くはない。


三つ目、この現象でほかの捕虜は何人も死んでいる。

担架で運び出されていく人を何人も見た。



12回目の発現が収まったころ、一人の男が折れの牢屋の格子の外に立ち止まった。



声を出す気力もなく、俺はただその男を睨んでいた。




 「もう一度、出してみろ」






「…は?」






 「今、お前の腕から出てきたナイフのことだ」





「…なんでそんなこと。っていうかなんだよこれ。あの白い煙だろ。お前ら何者だ?何のために」





 「無駄口叩くならそれでお前の首を吹っ飛ばしてもいいんだぞ」





 俺の首にはここに放り込まれたときからチョーカー型の爆弾が巻かれている。





 「いうことを聞けば悪いようにしない。お前はここまで生き残ったんだ。ここで命を捨てるな」





明らかに敵のはずなのにそれっぽいこと言いやがって…!




「自分の意思で出したことはないからな」



 「いいからやってみろ」




首を飛ばされるくらいなら12回耐えたこれをやってやろうと、いや、あわよくば…


大きく息を吸って、吐いて。


右腕の力を全部抜いて神経を集中させた。





「……うわぁ」




すごく嫌な感じがした。間違いない、この感覚なんだ。




一気に腕を振った





何度も経験した体の内側からえぐられるような痛みが訪れる。




集中力はMaxだった。

俺は、男の首をめがけて掌からナイフをつきだした。



「…」



ナイフは男の頭の横10センチの所を通過して壁に突き刺さった。



 「なんだよ、外れかよ。」




男は一瞬口角を上げ、こういった。



「上出来だ。」



男はほかの部屋の前に立ち止まることはなく立ち去って行った。











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